柊

マイスモールランドの柊のレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
3.9
まずフライヤーが秀逸。一筋縄ではいかない日本の難民問題をこの眼差しが訴えている。背景のほの暗さも充分だ。夜明けは来るのか来ないのか?まだ遠いって感じかな。

まず日本人にとってクルド人がどこの国に住んでいるのか?そこから学ぶ必要がある。そもそも国はなかったのだ。国家を持たない世界最大の難民。それがクルド人。国とは民族とは?と考える前にその帰る場所が無い、世界のどこを探しても居場所がないと言う状態に思いを馳せてみよう。常日頃から自分は日本人で生まれ故郷が誰にも存在する我々とはその不安定さは大きく違う。もちろんいろいろな事情で生まれた国を離れて生きる人は多いだろう。それでも心の中に故郷への郷愁は決して無くなりはしないのだと思うが、それを日々意識などして生きてはいない。

しかし、クルド人は違う。その思うべき国が無い故に必要以上に国という見えないものに囚われているようにも思う。
クルド人はどこへ帰りたいのか?私にはよくわからない。
日本で育つクルド人姉弟。彼らの中にはそれぞれ生きた年数により今生きている日本への想いは違うようだが、生きている場所が安住の地。それで良いと思う。
後は日本の法律の問題。こんなにも他者を受け入れない法律が存在しているのか。ここ最近も入国管理局にて命を無くした女性がいたように、収監されていたお父さんの皮肉にもあったように環境は劣悪なようだ。どんな場合であろうと人権は尊重されなければならないし、命は等しいはず。
生きる権利は誰にでもある。今後ますます国境を越えて生きる場所を求める人々は増え続けるであろうことを考えると、現状に即した法整備は必須であると思う。

ビザの為に親子が引き裂かれるなどあってはならないし、弱い立場の人が救われる日本であるべきだと思う。今後早急に改善されることを望む。

主人公を演じた女の子の凛とした佇まいと、本当の父親らしいお父さんと妹、弟も拙いながらリアル感があってとても良かった。
池脇千鶴親子がもう少し踏み込んで助けてあげられる存在だったら日本人としての負い目が少なくなったかも。
奥平大兼まだ印象的な作品に出たね。自然体でとても良かった。キラキラしてないのも良い個性かな。
柊