この映画の中で「小説」という店名の居酒屋が出てきて、そこでホン・サンスのアバターの様な映画監督がヒロインにこう言われる、あなたの映画はまるで短編小説ようだ、と。
磨かれた言葉で行間を豊潤に読ますのが良い短編小説であるのなら、この映画はまさにそれ。
ヒロインが自分の顔の前に美しい天国を感じた体験があり、ある理由でそれを通底に生きようとしている事が映画の唯一のテーマでそれを芯に物語が立ち上がっていて、それを圧倒的なセンスでシンプルに組み上げているから薄味なのに深い旨味が残る感じ。それは、あなた(観客)の顔の前にある日常にも感じられる天国がある事を示す様な。