まっつん

四畳半タイムマシンブルースのまっつんのレビュー・感想・評価

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森見登美彦氏の小説、それをもとにしたアニメーションともに私の人格形成に少なからず影響を与えた『四畳半神話大系』と、中学生の頃に妹ときゃいきゃい喜びながら鑑賞した、愚にもつかない内容ながらきわめて洗練されたSF作品『サマー・タイムマシン・ブルース』が禁断の融合を果たしたとのことで、これまた大学時代に足繁く通った我が主戦場ユナイテッドシネマ熊本(旧シネプレックス熊本)にて公開初日に鑑賞。
故障したクーラーのリモコンを巡るタイムパラドクス・サスペンスということで、最重要物の卑近さとは裏腹に世界の存亡を賭けた辻褄合わせに挑む、というのが『サマー・タイムマシン・ブルース』の肝要なところであるのだが、なるほど、愚にもつかない大学生がうだうだしているのが基本スタンスの『四畳半神話大系』と相性が良いということに着目したのは慧眼と言わざるを得ない。が、本作は基本的に下鴨幽水荘からシチュエーションを変えないというのが難となり、ただでさえ卑近な話がさらに矮小化してしまっているという弱点を抱えている。
尤も、「私」をはじめとする『四畳半神話大系』の魅力的なキャラクターたちが画面を所狭しと闊歩することで、その弱点は幾分カバーは出来ているし、嗚呼、再び「私」と小津の愛憎に塗れた掛け合いを目にすることができたのは望外の喜びであった。ケレン溢れる湯浅演出では本作はどのような様相を呈したのかは気になったところ。
エンディングに関しては今年のベストに入るかもしれない。宵闇に佇む登場人物たちを愛おしそうに写すフレームには、サマータイムの終わりを感じさせる、ツンとした感覚がアニメーションながら再現されており、終わりを告げつつある私の青春にも確かにこんな一コマがあったものだと、じんわり思い出させてくれた。
少々しょっぱい出来ではあるが、学生時代の思い出補正込みで愛さずにはいられない作品。
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