せいけ

イニシェリン島の精霊のせいけのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.5
孤島にて親友から唐突にそっぽを向かれ、子供のような喧嘩に発展する中年男性の話
こんなにこじんまりとして導入からあらゆる示唆に富んで、小さな話と大きな世界を同列に描くマーティン・マクドナー脚本が上手すぎる
どこに向かうかわからないストーリーテリングと象徴的なモチーフの挿入、複雑な心情を体現した役者の演技などなど映画としてのレベルが高い
もっと真意を掴めたんじゃないかと悔しさすら感じてくる
しっかり咀嚼してからもう一度観た方がいいかもしれない
しかし、あのような心変わりというか関係性の変化は多かれ少なかれ誰にでも経験があると思う、寓話的でありながら普遍的な世界観のバランスが絶妙で派手な見せ場がなくてもずっと見入ってしまう
窓越しに対象の人物を見るシーンが多いのも印象に残った
フィルター越しで見てきた人物の変化は唐突に感じるかもしれないけれど、その変化を言葉で説明するには余りに複雑すぎる
謝ったら解決するような話ではないから本当に質が悪い
それゆえなのかその複雑さを一瞬で破壊するような鏡のシーンには痺れるものがあった
長い時間かけて面白さが理解できるタイプの作品
とはいえ意外と普通に笑えるので肩肘張らなくてもいいのかもしれない