ハル

イニシェリン島の精霊のハルのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.6
ここまでする!?って言うのが率直な感想。
でも仲がこじれるって案外こんなものなのかもしれないね。
いきなり無視をされ、嫌いだって告げられるとこからのスタート、そのインパクトや凄まじい。

ベースはシリアスな話となっていて、険悪になっていくパードリックとコルムの関係性を密に描くストーリー。
一方で台詞回しがとてもおもしろく、喜劇的な要素をエッセンスとして加えていた。
「俺って一番馬鹿だと思われてないか?本当に思われてない??一番は圧倒的にドミニクだろ!!いや、まてよ。だとしたら2番目に馬鹿だと思われてないか?」これはパードリックが妹に問いかけるシーンだけど、質問からしてスーパー馬鹿だよね…

良いやつなんだけどスーパー馬鹿で、話がクソ面白くないパードリックと理屈屋で音楽好きのコルム。
すれ違いの始まりは互いが抱く時間への概念差というべきか。
詳しくは触れないがコルムの言っていることも理解出来た。

自分自身、遠距離恋愛をしていた当時は大学、資格予備校、仕事の3足の草鞋で生活していた時期があり、この間は本当に時間がなかった。
社会人から四年制大学へ入学した影響は大きく、「○○さんと遊んだ」のような電話で2時間も取られる位なら時間を大切に使いたい…と思ってしまうことも。
心に余裕がない証拠なんだけど、こうした時間に対する各々の捉え方が本作のキーポイント。

とはいえやはり途中からの展開は行き過ぎていたし、一線を越えた時点で病的にも感じてしまった。
コルムもコルムだけどパードリックもパードリック。
あそこまで拒絶されたらもう離れて終わりで良いじゃん…執着してプラスに働く人間関係ってほとんどないと思うな。
最後までこれを突き通すのか、という重過ぎる流れ。
固執する感情の怖さと複雑さが歪に入り乱れ、メンタル的にもズシッとくる一作だった。
ハル

ハル