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イニシェリン島の精霊のanikaのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.8
孤島の美しさと閉鎖的な村にのせて魅せる喪失感の強い映画だった。

起伏が少なく、一定の雰囲気で、なのに何故か少し緊迫した空気がずっと続いたまま物語が進んでいく。
出てくる人物が凄く魅力的だからこその映画だった。
世界観の引き込み方、人物の見せ方、孤島の閉鎖的かつ陰湿さが、より一層映画を重くしてた。
個人的には凄く好きな雰囲気だった、苦手な人は凄く苦手そう。

内戦と友情間での亀裂を、対比させる関係として表してる構造。
人間の持つ二面性や価値観に思考、重要性に重きを置いてるから、人による考察が多く生まれる映画だなぁと。もっと歳とってから観たかった気もするし、今だからよく分からんってなれるのかもしれないし。

個人的な考察だけど、友情と二面性、矛盾がテーマなのかなぁと。
内戦同様、傍から見れば "そんな事で争ってるの?"って事でも、当事者からすればそれは大きな問題だし、莫大な損害を出したとしても手に入れたい物がある。
コルムにとってそれが「静寂と有意義な時間」で、指を切り落としたのはそれだけ本気の友情の終焉だったし、指の損害<静寂だったんだろうな。
芸術家が時に狂気的な事をするように、音楽が支えなコルムも狂気的な芸術家だった。
パードリックもそれに答える様に友情の終焉を受け入れたって感じだけど、どっちかが折れるしかないし、代償がロバしかないのは納得かなぁ。

精霊は、やっぱり何処と無く現れて不信な笑みを浮かべる老婆かなぁ。
1人しか死んでないけれど、精霊の予言を2人は乗り越えたとも捉えられるし、ドミニクの父親が後追いする事も、別な誰かが死を迎える事も考えられるし。本当に思考を使う映画っすわ。

考察で共感する・しないも価値観の違いだよなあ。
面白いとかではなく、考える作品だった。
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