Sachika

小さなからだのSachikaのレビュー・感想・評価

小さなからだ(2021年製作の映画)
4.0
一度も呼吸出来ずに死んだ赤子は、永遠に辺獄を彷徨う。
洗礼を受けられないまま死産した娘の為に、母親アガタは、一瞬だけ死人を蘇らせる事の出来る、奇跡の教会を目指す。
原罪と信仰、愛情と嘆願。
美しいの一言では終われない、母の悲痛な願いと苦難の旅路。
全てを包む海のような救済。

辺獄=「原罪のうちに(すなわち洗礼の恵みを受けないまま)死んだが、永遠の地獄に定められてはいない人間が、死後に行き着く」場所らしい。

最後に見せるアガタの表情、リンチェの流した涙が美しくて、本当に観て良かったなあと思った。
海、山岳部、湖、雪。美しいイタリアの景色。
抑圧される女性が挑む旅路と同行者のある道中は、どこか『ナイチンゲール』を彷彿とさせる。

カトリックの考えについて勉強になったし、この部分はこういう事かな?って箇所もあったけど、宗教観についてはわからない事が多いから、もっと宗教に明るければ良かったなあって思った。
いつかぜひ日本でも劇場公開されて、専門知識を詳しく聞きたい。

母の物語ではあるけど、宗教と信仰について強く描かれる。
でもそういえば、アガタが暮らす村然り、これだけ信仰の深さが描かれるのに、一度もアガタが祈る姿がなかったよなあ、とも。
願いが叶うほどに善い行いをしてきたか問われた後に、髪を切られたり(髪は女の誉れという考え?)、結果的にリンチェを騙す形で旅を続けたり。
アガタ自身の罪や、不安、畏れを湖の上で感じたのかなとも思いつつ、再会の表情がとても安らかで美しかった。

「名前がないならこの世に存在しないのも同じ」
「その子の名前は?」
うろ覚えだけど、このあたりの台詞が効いてくる。
Sachika

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