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BLUE GIANTのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
3.3
映画化するには、むずいんじゃないの?
原作ファンはそう思いましたよね。やっぱ、音楽がね。
ここまで音を想像させる漫画ってないと思うのですが、だからこそ、その想像を超えるのって、理想を超えるのと同等に難しいはず。

あら、超えてきた。
上原ひろみさんすげぇ。

音楽系漫画って、意外と映像化成功してるんでしたね。
今回も、JAZZっていう耳馴染みはあるけど、批評できるほど理解できてない音楽を演奏するから、映像化しても原作ファンの想像は超えれるんだろうなと冷静になると思いました。

予告編で使われてる曲と、劇中で使われてる曲の使い方がうまい。
JAZZのテーマと言われるフレーズがリフレインされる度に、ふわふわ浮かんでいた過去の思い出がアルバムに整理されるように紡がれていく。
これが、JAZZの面白いところ。ソロでこねくり回しても、テーマに帰ってくることで、帰着し安心する。さらに次のソロを期待する。

ってことで、音楽はとても良かったです!


映像も、これは良かった。さすが!って感じではなかったのだが、最近の漫画の映像化のステレオタイプを壊していて、監督の解釈が見て取れて、映画化する意味ってこれなんだよな。

鬼滅とか呪術とか、最近興行収入が爆発しているアニメーション映画って、原作に忠実に、原作の良さをどうにか消さずにアニメーション化するっていう方向に走っている。もちろん、圧倒的な作画のクオリティと作画枚数でそれだけでも映像化する価値はあると思うが、映画ってなるとまた違うんじゃないかとも思う。
テレビで見るものと、映画館で見るものってクオリティが違うとかいうレベルではなくて、作品の発着点が違うと思ってます。
だから、原作を忠実に再現するものをお金払ってまで行こうとは思わない。思っている人が増えていることが悲しい。

一方今作は、原作の忠実再現を放棄し、原作を解釈し監督なりの映像表現で、漫画から独立した作品を作り上げていた。
この漫画、結構独特で、LIVEシーンはセリフなんてないし、文字がないページが余裕で10ページぐらい続く。それが、生演奏の緊迫感と感情の境地の表現なんだろう。
それを映像でどうするのか。監督は考えたと思う。かなり考えたと思う。結果、挑戦した。実際の演奏者のモーションキャプチャをしたCGの演出、それをトレースした作画、指や楽器の形を大きく捻じ曲げたアニメーションならではの表現。白黒の線画、カラフルな配色。いろんな表現をすることで、ジャズの自由さ、強さ、勢いを表現していた。
そこはとても好感を持てた。もちろん原作ファンだから、なんか印象違うなって思うこともあるけど、最初のパフォーマンスの時点で、「あ、これ原作から独立した作品だ!」となれたので、ほとんど気にならなかったし、むしろいろんな表現に毎回ワクワクした。ナイス!

でも、不思議と面白くない。なんかのれない。かっこいい音楽、戦った作画表現、原作の持つBLUE GIANTのパワー、NUMBER 8の脚本、色々癖あっていいとこばっかなのに、だれる。
編集ですよ。アニメーションにも編集って大事なんですね。こんなにジャジーに作り上げられているのに、編集だけがJ-POP。いや童謡。表で切るなよ。シンコペーションとか感じないのかよ。ここまで上原さんが細かいリズムを作っているのに、編集がぽん。ぽん。ぽん。って。お経かよ。ラストは、カットの数増やしてリズム作ろうとしているのかもしれないけど、ただ早いだけで、気持ち悪い。乗り切れてないのはこいつのせい。

100点の素材を使って120点を作るのが編集。
今回は100点の素材を使って、40点を叩き出した。
原作を超えなかったのは、映像の要を疎かにした結果。
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