のすけ

BLUE GIANTののすけのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.3
ある人に批評もできないくせにと言われてしまいましたが意に介せず書こうと思います


原作も何も前情報も知らずに挑んだ

この映画を見て感じたのはこの映画の主人公は大ではなく、雪祈と玉田だということ
なんなら、特定の主人公を置かない群像劇として捉えた方が分かりやすいくらい

ある人曰くこの映画には葛藤がないらしい
たしかに、主人公の大については葛藤は見られない(正確には自分には感じ取れなかった)
大はある程度完成した状態で物語が始まる
高校時の努力、才能によってテナーサックスにおいて圧倒的なオリジナリティと実力を兼ね備えていて、精神性もかなり成熟している様子が物語を通して見て取れる
ひたむきに夢に向かって今この瞬間瞬間でできることをやり続け、野心的でありながら目の前の一つ一つに集中して全力で取り組んでいる
2、3人の観客しかいない舞台でも燃えていたほど

となると、やはり物語の核になるのは雪祈と玉田

玉田は大の高校の時の同級生?で高校時代はサッカーに打ち込んでいて、いい成績を残すほど全力で部活に励んでいたが、大学に入ってサークルの空気感に嫌気を感じていて、大学でエネルギーを持て余していた。そこで大と出会い、ジャズに出会い、ドラムを始める。この大学に入ってやるせなさを感じるのは多くの大学生のあるあるなんじゃ無いかなと思う。玉田には物語を通してずっと凡人としての葛藤がつきまとう。実力十分な大と雪祈に挟まれてドラムをすることへの劣等感、焦燥感。玉田は指がボロボロになったり、ドラムスティックを何本もボロボロにするまでドラムを練習するけど、もちろんジャズ、現実は甘くなく、本番では数十回ミスをするし、お客に注目されることはあまりない。
でも、ずっと2人の足手纏いにならないようにひたすら練習をする。部活とかに入ってた人なら一度は経験したことがあるんじゃ無いかと思う。自分がどれだけ練習しても、小学生からこのスポーツをやってましたみたいな奴には追いつけない。足手纏いになる。でも、やるしかない。みたいな状況。
この玉田の葛藤は大と雪祈との衝突のシーンでちゃんと吐き出される。大が雪祈の問題について冷淡に対応したとき、玉田がそれまで抱えていた劣等感をあらわにする。
でも、報われる瞬間がしっかり描かれている。玉田の頑張りを、初心者ながらに全力で打ち込んでいることを理解してくれている観客がいて、その想いがちゃんと玉田に伝わる。加えて、so blueのマネージャー?も玉田のドラムを認めていた。

雪祈は小さい頃からピアノをやっていて、実力十分。音楽に関する知識、技能も抜群。作曲もできる。
しかし、野心的で人に対して少し傲慢なところがある。部屋は質素で真面目にピアノに打ち込んでいる姿勢も見られることから完全には憎めないけど。
文句のつけどころのないと思われていた雪祈にも挫折が訪れる。so blue のマネージャーにボロカス言われる。雪祈が音楽、人に対して傲慢で礼儀に欠けること。知識に偏った面白みのないピアノを弾いていること。しかも辛いのが、そのマネージャーは大と玉田についてはある程度評価していたこと。これはつまり、雪祈が大と玉田の足を引っ張ったことになる。雪祈にとってはおもっても見なかった事件だったと思う。大ならまだしも、自分があからさまに下に見ていた玉田の足すら引っ張ってしまったこと。かなりショックだったと思う。これをきっかけに音楽について、人に対する接し方について、自分について深く見つめ直すことを始める。そして、so
blueに与えられたチャンスを利用して、新たな自分を見出す。正確には本来の自分、ピアノのスタイルを見つける。
上手くいっているかと思ったところで衝撃の事故。事故のシーンはしっかりとその事故の瞬間が唐突に画面に映るからまさしく衝撃だった。良い時ほど、こういう理不尽な悪いことは起きるし、運命の残酷さを突きつけてくる。

見る前に、ジャズの映画と聞いていて、メロウな雰囲気な映画をイメージしていた。でも、ジャズの演奏シーンは超スペクタル。
実際に流れている音楽はもちろん。映画だからできる超派手な演出によって、このジャズの迫力を視覚的に捉えられるし、何より見てて楽しい。

途中でホロっと泣いたりしてしまう素晴らしい映画でした。
のすけ

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