矢吹健を称える会

ラーゲリより愛を込めての矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
3.3
 終盤は涙腺スイッチを数分に一度、激押してくるので、場内たぶん全員泣いていたと思う(むろん私も)。もちろん、泣かされる物語、イコールすぐれた映画ではないとは思うのだが、「空を見上げる」というアクションの継承を描いた点は、たまらないものがあった。

 違和感を感じた点も結構ある。序盤から、北川景子関連のシーンはなんかちょっと、どうかなあ、という描写が多い。授業シーンとか。あと終盤の訃報を聞かされるシーンで、家族に「私は大丈夫」とかなんとか言ったあとすぐ、土の上に突っ伏して号泣するのも、どっちやねんと思ってしまった。

 本作一番のストロングポイント、「遺書」にまつわる描写にはもちろん泣かされた。でも、正直、これもちょっと笑っちゃうところがあって、まず四人がバラバラのタイミングで届けに来るという点に、なんでだよと。同時に来れるだろ。
 加えてこの「遺書」、届けに来た各人が読み上げるのだが、途中で二宮和也の声になってしまう。ここが実は個人的に最大の不満。これは、「代読」によってこそ、よりエモーションが高まるシーンではないのか。諳んじられるほど何度も読み返し記憶しようとしたこと、そこまでする必要があるという使命感をあの4人が共有したことの貴重さが、これでは活きないじゃないかと思ってしまった。

 シベリア抑留については、経験者である祖父からよく聞かされていたので、ハバロフスクで下車させられるくだりなんかも知っていたのだが、軍隊時代の階級がそのまま上下関係として持ち込まれたという話は初耳だった。祖父なんかどうせ下級兵だったはずだからさぞシゴかれたのだろう。そんな話も、もっと聞いておけばよかった。