幽斎

シークレット・マツシタ/怨霊屋敷の幽斎のレビュー・感想・評価

3.6
シークレット・マツシタ/怨霊屋敷は劇場公開のタイトルで、逆に為ってるのは何でかね?。でもね、日本人なら興味をソソられる邦題。私の家はソニー派なのでマツシタと聞けば昔のライバル「松下電器産業」。当時の松下がユニバーサルの親会社だから、USJは大阪に来た。そのままならパナソニックは今の様なジリ貧には為らなかった。経営者の先見の明の無さはソニーとは対照的。京都のミニシアター、みなみ館で鑑賞。

2014年の作品がCOVIDで新作が枯渇してるとは言え、何で今頃と思ったら配給が「TOCANA」だもんね(笑)。映画に詳しい方なら、この時点で触手を伸ばさないのは賢明な判断、何ならレビューしないでTOCANAを考察した方が面白いんじゃ?と言う謎会社。世界中から珍作を集め、配信に回すのではなく全国ロードショーを敢行、見事な採算度外視。みなみ館の様な地方劇場には有り難い存在だが、松下姓の人は無料で見れるキャンペーンなど、何処までも興味が尽きない。

「実際に起きた撮影隊の失踪事件、6カ月後に発見されたビデオデータ。記録されていたのは衝撃の真実」お人好しなら信じるかもしれないが、少しの事実と大袈裟な嘘は都市伝説のお約束、ペルー最恐の事故物件と言われるマツシタ邸が有るのは本当。でも撮影隊が失踪したのは映画の話。「2013年9月ペルーのリマで起きた撮影隊の失踪事件」ペルーの新聞記事を調べたが、出て来なかったけど(笑)。

マツシタ邸の由来は、一家の心中事件が発端と為り東洋の神秘=日本と言う謎の解釈で、ペルーでは最大の都市伝説。ほら、現地の人も都市伝説って認めてるし(笑)。ペルー全土の150館で公開、興行成績初登場1位を記録する大ヒット。私の記憶が確かならペルーのホラーって結構珍味な気もするが、ホラーに詳しくないので悪しからず。ペルーと言えば大多数の国民はキリスト教徒、無理心中が別な意味で新鮮だったかも。

マツシタ邸に為る前は植民地時代に建造された邸宅、其処にパルバネ・デルバスパと言うペルシャ系の若い女性が一人で暮らしてた。スペイン領なので中東系の人が居ても違和感ないが、住民は彼女をスピリチュアルなヒーラーと呼び、魔女では無いかと噂が広まり、終いにはオカルト儀式だと審問に掛けられ火炙りの刑に。彼女は最期に「私の死後、あの家に足を踏み入れたものは呪われるであろう」口にして果てた。これがデルバスパの呪いの始まり。ホントかね?(笑)。

私は北米は詳しいが南米はサッパリなので、ペルーと言われてもマチュピチュとかインカコーラ程度しか思い浮かばない。先輩の話では日系の大統領も居たらしいが、日本と縁が深い国なのはエンドロールの音楽でも分る。事件の元を辿れば旦那が浮気がバレて錯乱して妻と子供を殺害して本人も自殺した、だけ。因みにアメリカでは一家心中は在り得ない。有るとしたら近所のスーパーで銃を乱射。日本人とキリスト教徒の死生観の乖離が怖さの源泉だが、額の「死」が何かのマンガで笑える、日本に対するイメージも可笑しい。

監督はインタビューで本物のマツシタ邸で撮影したと言うが、実際は外観のほんの一部。現地はペルーの首都リマの一等地で京都で例えると四条通、常に交通は絶えないので騒音も酷い。都会だから邸内に入っても南米らしくクラクションの音とか普通にする。アメリカ映画でよく有る湖畔の別荘「非日常の中の非日常」では無い点が、逆にリアルで京都でも一本路地を入ると喧騒が嘘の様な異空間を味わうが、異界と現実の対比がスリラー的な都会の不条理を描いてる様にも見える。

奇天烈な日本描写を覗けば、正攻法なPOVで目新しいポイントも少ない。オカルト現象は下手なアメリカ映画よりも派手め、ヤラレる側のリアクションも南米テイストなのかテンション高め。切腹シーンもインパクトに欠けるし、日本の梅雨の様なジメジメ感な怖さも無い。もう何度見たか分らない「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」劣化版。スペイン語なので、アメリカのオーディエンスもとても低い。これをヒューマントラストシネマ渋谷で公開したTOCANA、アンタ凄いよ(笑)。

お化け屋敷よりも廃墟探検の方が正しい。まったり肝試しが好きなら良い物件かも。
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