蛸

カッコーの巣の上での蛸のレビュー・感想・評価

カッコーの巣の上で(1975年製作の映画)
3.6
「権力」とそれに対する「反抗」そして「自由」と言う言葉にストレートな意味があった時代の作品。
なので、いかんせん古くさいのは確か。
随所からヒッピー的価値観が感じられる割に、ほとんどミソジニーの裏返しとしてのホモソーシャル感もあったりして、厳しいことを言うとその辺も時代遅れだと思った。
精神病院の患者がそれほど酷い目にあっているような描写もなかったので、主人公の行いが校則に反抗する不良くらいのものにしか見えなかった。
婦長がそんなに悪い人には見えないのも問題だけれど、一番問題なのは精神を病んだ人たちに対する上から目線だと思う。「おれがお前らに人間らしい生活を教えてやるぜ」的な態度が鼻についた。彼らには彼らの悩みや生活があるのだから放っておいてやってください。

色々とキツイことを書いたけれど、全体を通して客観的な目線で淡々と物語が進んでいくので、そこまで押し付けがましい印象は受けない。だからこそ見る人によって解釈が別れるようになっている。

それまでの淡々とした進行のおかげで、ラストシーンのエモさが際立つようになっている作りは上手い。
でも、まあ何にせよ「時代を超えた名作」ではないと思います。
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