TaichiShiraishi

ゴヤの名画と優しい泥棒のTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

ゴヤの名画と優しい泥棒(2020年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

実に軽妙でサラッとしていて洒脱なコメディだった。「こんなことあるわけない」と思ってしまう内容でも、実話と言われたらこちらも黙るしかない。そんな題材の特性を活かし、劇中のお上も観客もシレっと裏切って見せる巧みさがたまらない。

そんな簡単に高級名画が盗めるのと思ってしまうあっさり盗難シーンも後半に大きな意味を持つし、いざ手に入れてしまって親子そろってちょっと困ったり、国側との交渉でうまくかみ合わない場面などはなんとなく「太陽を盗んだ男」を思い出してしまった。

ジム・ブロードベンドのひょうひょうとして、ウィットに富んだ不屈の男像は見事。特に裁判シーンのイギリスならではの皮肉たっぷりなユーモアはそれだけで楽しい。

そして、いくら国に対して不遜な態度をとっていようが、刑法に照らし合わせ、本人の人柄も考慮に入れて、公正に判決を下すイギリス司法とマシュー・グード演じるハッチソン弁護士の理知的な存在感も見ていて気持ちいいし、こんなご時世だからこそ「正常な民主主義国家ってこうだよな」と思えて嬉しくなってしまった。

ロジャー・ミッシェル作品のなかでは遺作にして最高傑作となったのではないだろうか。
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