ツクヨミ

ボイリング・ポイント/沸騰のツクヨミのレビュー・感想・評価

3.8
高級レストランの裏側を描く地獄の90分ワンショット。
人気レストラン経営者のアンディは家族関係に悩んでおり多忙の日々を送る。そんな折にクリスマスがやってきて店内は大忙し…
90分間マジもんのワンショット地獄レストラン。rotten tomatoesで99%の高評価を記録したワンショットレストラン映画が公開、まさに地獄のような問題づくめのお仕事ムービーに胃がキリキリしまくった。
まず今作は全編ノーカット.無編集の90分ワンショット映画になっており、縦横無尽に動き回るカメラが見えるような激流の映像体験ができる。その撮影にクリスマスの人気レストランという設定、そして人間関係の悪さや客とのいざこざ.従業員の内輪トラブルが過剰にぶち込まれ息つく暇も無い。普通の映画ならばシーンごとにカットを挟むことによってちょっとした気分転換を生じさせられるが、ワンショット撮影を使用することで緊迫感が永久に持続する地獄を見せられた。
またワンショット映画といえば最近記憶に新しいのは、擬似ワンショットであるが"1917命をかけた伝令"や"バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)"などであろうか。では今作はそれらの作品とは何が違うか、それは本物のワンショット撮影による正常な時間経過だろう。90分そのままのレストラン内の出来事なのは間違いないし、擬似ワンショット作品はけっこう上映時間を超える時間経過表現がある。
そして今作はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督"バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)"とよく似たプロットなのは否めないかと。仕事の裏側を描くという舞台設定、仕事面でもプライベート面でも悩みを抱える中年男性が主人公、ワンショットでも1人フォーカスではなく主人公以外にもたまにフォーカスしドラマを見せるカメラワークなど共通点はたくさん。しかしフォーカスする登場人物の多さは今作のほうが多いし、描かれるドラマもかなり多様。結論としては"バードマン"のほうが個人的に好きではあるがなかなか光る稀有なワンショット映画なのは間違いない。
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