Taku

ウーマン・トーキング 私たちの選択のTakuのレビュー・感想・評価

4.0
1800年代くらいが舞台かと勝手に思い込んでいたら、途中で現代(2010年)の出来事だと気付き混乱したが、大変良かった。女性達が主体性を取り戻していくなか、その受け手に回るベン・ウィショーの素晴らしい演技。保守的なコミュニティの中で、彼もまた主体性を抑えつけられていたのではないか。

他のユーザーの感想・評価

このレビューはネタバレを含みます

サラポーリーの物語る私たちが好きだったので見たやつ。
なんとなくの冒頭あらすじだけ知ってる状態で見た。

設定はさくっと説明されて、あとはタイトル通り女たちの対話が続く。中盤に実は現代の話でしたと明かされるギミックはあるがあとはまじで対話。演劇っぽさもある。
表面的にはかなり静かな話なので、寝ちゃっていびきかいてるお客さんがいたくらい。ただ内容はすごいエキサイティング。特殊な環境下で起きた特殊なケースについて描いてんじゃないんだよ、普遍的な話をしているんだと言ってるんだろうなと解釈して見ていた。ちゃんと理解できたのかはわかんないけど。

女性蔑視と宗教的制約で完全に終わってる状況なんだけど、主人公たちが地獄の中にいつつも宗教的制約である暴力は禁止って教えを守ることがなんか矛盾してなさを感じてよかった。見てる側からするとあいつら全員みなごろしじゃいと軽率に思ってしまった。

出てくる人たちもすごいよくて、フランシスマクドーマンドがかなりきつい役してたんだけどエンドロールで製作やってるの見てなんか納得。あと国勢調査でデイドリームビリーバー流すのはアメリカの良さって感じ。本当かどうかは知らないけどあの曲インパクトすご。そりゃセブンも使う。あそこでプランBのブラピが出てくるのもすごいが。

このレビューはネタバレを含みます

監督・脚本は女優としても実力派のサラ・ポーリー、

南米ボリビアのキリスト教福音派から生まれた信徒たちのコミュニティ(共同体)で起きた実話で、
信徒たち2,000人のうち、数百人の女性が性的暴行の被害に遭った、
男達の手口は、牛用の麻酔スプレーを撒いて眠らせ、女性や少女に性的暴行をしていたという、


一般に共同体主義は、伝統を重んじ、市場原理を否定する。そして彼らの共同体は、社会から距離を取り、自給自足で、電気、自動車、電話もない素朴な生活スタイルであり長老が一切の権限をもっている、

しかし、共同体に変化が生まれる、それは女たちから‼️
共同体内で被害に遭った女性たちが男性のいない隙に集まり、未来を懸けた話し合いを行なうという展開に、

その議論は活発に行われ、2日間で目覚ましく進化を遂げ、葛藤しつつ探り当てた可能性を深く掘り下げていく

始めは3つの選択肢、赦す、闘う、出ていく、を投票ではかるが、
その後、いろんな意見が飛び交う、

「できることはやり、出来ないことは忘れる」
「女たちは村の成り立ちの犠牲者」
「なにもしないのは論外」
「とどまればどんな長所があり欠点があるか?」
「出ていくに欠点はない」
「男達にどんな選択肢が?」
「出ていくことで、男達との新しい愛の関係が?」
「赦しは善!」

オーガスト(ベン・ウィショー)の母親は権力に歯向かって追放された、大学出のオーガストは、子供達の教育をするために戻ってきた、

オナ(ルーニー・マーラ)は、無学(文字が読めない)だけれど、知的で進歩的な考えを生み出す、
さらに議論は深まる、

「暴力なしに前に進む方法は?」
「善とは平和主義」
「何のために闘うのか?破壊でない方法で」
「新しい共同体をつくる」
「新宗教は、共同体の意見に女たちも参加する」

「私たちには3つの権利があると、〈子供の安全を守る〉・〈信念を貫く〉・〈考える権利〉がある」



映画の最初にナレーションがあった、「あなたが生まれる前の話」「昔はこうだった」とお腹の赤ちゃんに語り、最後のナレーションが、
生まれたばかりの赤ちゃんに「あなたたちの物語は、私たちのものとは違う」と、、、語りかけていた、


映画は、
とても、中身の濃い知的で素晴らしいものでした♥️アーチャとオーチャも可愛かった。
ルースとシェリルの例え話も納得できた💕

そして、ルーニー・マーラの個別的美貌(?)、が、すごく美しかった💗
(コベツテキ美貌ッテナンダ❕)
実際の事件に着想を得た話ということは頭に入っていたけど、途中でこれが2010年の設定だと気付いて愕然とする。こんなにも悲惨な出来事がこの現代に起こるなんて。

でも、そこで立ち止まってはいられない。とにかく時間がない。女性たちは限られた時間で対話を重ねる。文字が読めず抑圧された状況でも、彼女たちは考えることを諦めていたわけではない。それぞれの主張が違っていても、話し合いで、非暴力で、ここまでできるのだ。

女性たちの話し合いにただ一人、書記として参加した男性のオーガスト役、ウィショーさんが素晴らしかった。中立的な立ち位置であることの振る舞い。最後に手放したあるもの。彼もまた抑圧された世界にいたひとりとして、女性たちの苦しみを理解したのだろうと思う。そして悪しき構造の変化のために少年期の教育の重要性を説く。彼ならきっとやってくれるという、大きな希望を感じた。
強姦行為が横行しているとある村に住んでいる女性たちが、自分たちの未来について議論する話。
今世紀初頭に南米ボリビアで実際にあった事件を元に執筆された小説が原作ということで、予想外に最近の話でびっくり。正直、途中まで18世紀くらいの話かと思ってたが、国勢調査員のアナウンスによれば2010年の話らしい。
内容は基本的に納屋で議論しているだけであり、登場人物の入れ替わりもほとんどない。そういう点では『十二人の怒れる男』なんかを想起したりもするが、今作においては盛り上がるポイントがほぼなく淡々と進むきらいがある。ただ退屈でありながら、性被害者に対する居た堪れなさもあって軽々につまらないと言うのも躊躇われる、色んな意味でツラい映画に感じた。テーマとしての奥深さみたいなものはわからないでもないのだけど、映画向きかと言われると甚だ疑問。
はぐれ

はぐれの感想・評価

3.1
12人(?)の怒れる女たちが村を出て行くか残って男達と闘うかを議論する基本ワンシチュエーションの会話劇。今作のリー・J・コップ役を果たすキャラクターも大変に癖が強くて、まあ大人数のディベートものだとこういう場をかき乱す役が必要だよなってどこか俯瞰で見てしまった。

文盲や未学の民をコントロールするのに宗教って非常に強力なツールなんだよなって改めて思ってしまってゾッとした。彼女達が考えることこそが我々に与えられた権利なんだと力強く宣言をするシーンがあるが、その思考を奪われることが現代においては何よりの恐怖なのかも。アニメやアイドルに代表される推し文化も言わば現代的な宗教。ましてや特定の宗教を持たない日本というガラパゴス的な島国おいてはこれも民を思考停止に追い込む強力な麻酔薬。物言わぬ家畜のよう民衆を飼い慣らすのに支配者層には都合のいいブームなんだろうなって映画のストーリーとは全くかけ離れたことを考えてしまった(笑)

この映画は実話をベースにしているということらしいんだけど、2010年代のアメリカが舞台というのはどうしても無理があるw。アメリカが舞台の英語劇にしないと白人のスターも出演出来ないし集客も見込めないというのは百も承知なんどけど、それでもやっぱり事件が起こったボリビアを舞台にして映画を制作してほしかった。

ヒドゥル・グドナドッティルの音楽は掛け値なしに素晴らしかった。
su

suの感想・評価

5.0
実話をもとにしたフェミニズム映画かな?
と思って観てみたら、

フェミニズムの枠に収まらない、もっと大きな道徳や哲学に繋がる映画だった。

目先の利益や損得ではなく遠い未来も見据えた議論や選択って本当に大事なんだって感動してしまった。

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』の時も思ったけど、この映画がアカデミー作品賞獲れば良かったのに。
EDDIE

EDDIEの感想・評価

4.0
21世紀、実際の事件が題材になっている驚き。彼女たちはタイトルの通り終始話し合う。
“赦す”ことがメノナイトの教え。結局、言葉を男たちは都合の良いように置き換えているだけ。宗教の教えを逆利用した男性性へ憤りすら感じた。

ここまで言葉を選ばせられる作品もそうはありません。
自分は堂々とこの男たちを糾弾することができるのか。
女性たちの苦しみを理解できるのか。

作品に抑揚がなく退屈に感じる人もいるでしょう。
ただ彼女たちの苦しみを想像し理解しようとすることが大事なのではないかと感じました。
なぜこの作品が作られたのかを考えたい。

とりあえずこの作品を観て面白かった、面白くなかった、とか、退屈だったとか短絡的な話で風化させないことが大事だなと。
そこで終わってしまったら何も解決しないし、発展もありません。

あとは、女性と男性でこの映画の見方は変わるだろうと感じました。
いや、もしくは性被害に遭ったことのある人とない人で変わると言った方が正確かもしれません。

正直劇中は当事者意識で観ることができず、ずっと居心地が悪かったんです。
でも観終わった後に考えを巡らせば巡らせるほどこの映画が作られた意義を感じざるを得ません。

配信開始されたらもう一度観るかもしれないです。それぐらい一度では何とも語り尽くせない深さを感じました。

〈キャスト〉
オーナ・フリーセン(ルーニー・マーラー
サロメ・フリーセン クレア・フォイ
マリチェ・ローウェン ジェシー・バックリー
アガタ ジュディス・アイビ
グレタ シーラ・マッカーシー
メジャル ミシェル・マクラウド
オウチャ ケイト・ハレット
ナイチャ リブ・マクニール
メルヴィン オーガスト・ウィンター
オーガスト・エップ ベン・ウィショー
スカーフェイス・ヤンツ フランシス・マクドーマンド

※2023年新作映画75本目
しの

しのの感想・評価

3.4
言葉や文字を奪われ、都合の良いルールに支配されていた女性たちが行う「議論」という行為自体がドラマとして力強いし臨場感があった。投票を行って民主的に対話を重ね、思考し、自分たちの行く末を自分たちで決定することがいかに主体的な行為か、改めて思い知る。

直接の加害者であり支配者である男たちは画面から排除されていて、被害に遭った際のカットも全て最低限の事後描写になっている。劣悪な支配そのものより、女性たちの議論による主体性の回復の方を強調することで、むしろいかに彼女たちが客体として扱われてきたかが際立つ作り。

最近でも、議論や対話の様子を映し続けて「赦し」に至るか否かのプロセスを体感させる映画として『対峙』があった。それぞれ扱うテーマは違うけど、分断の時代を経て、何かを自分の言葉で考え、思考し、議論するという行為の重要性が増していっているフェーズなのだろう。その観点で見ると、本作はよりプリミティブなものを提示していると言える。言葉を発し、文字で記録して残し、そして語り部によって次世代へと伝えられる。舞台はずっと納屋のなかで、彩度も低く、見方によっては単調だが、非常にドラマチックで重要なことが起こっているのだ。

この議論のなかでも特に凄いと思ったのは、「赦す」という行為を疑うに至るまでのプロセスだ。彼女たちにとって「赦す」ことは信仰と結びついていて、もはや自分たちのアイデンティティなわけで、その前提について改めて思考していくあたりは悲痛ながら非常に知的だなと思う。結論はシンプルだし、あの農夫に任せる内容については「それ本当にできるか?」とも思うのだが、しかしあの状況と世界認識からその結論に至ること自体凄すぎるし、言葉も文字も持っているはずの我々でさえここまでの議論ができるのかというと……改めて身が引き締まる思いだ。

このレビューはネタバレを含みます

映画は男性からの身体的・精神的な暴力により虐げられてきた女性達が子供達や自身を守るため、平等に話し合いを行い、大きな決断をする物語だったが、「世間で常識とされている事に疑問を持ち、自分の頭で考え、自身で決断する。/争う・闘うのではなく、自由と尊厳のため、その場を去る(逃げるのではない)」は、女性問題だけではない、どの問題にも共通する重要な考え方だと感じる。
実際の事件について何も調べずに鑑賞。
女性たちの闘いが想像してたものと違った。

本来は救いとしてあるはずの宗教が選択肢を狭めるものだな~と感じる。そんな中で教えをどう捉えてより良い選択をするか、信仰者なら考えさせられる内容なんだろうなと思った。
女に知恵を与えず制御しようとした男たちが、知恵の実を禁じた神の構図と通ずるのかなと無知ながら思う。何も知らず従うことは楽だが、知識のもと疑問を持つことが人間(らしさ)としての第一歩であるのだと。

皆同じような服装で血縁関係が分かりづらかった。
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