1303さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

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イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語(2017年製作の映画)

3.2

そのルサンチマンを美しい詩とメロディに昇華してゆく未来が透けて見えてはいるものの、鬱屈した精神に飲み込まれそうになる姿は見ていて只々苦しいです。
希望を圧し折られた彼の世界が少し開かれる、ラストシーン
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ハードエイト(1996年製作の映画)

3.6

重厚且つ思想性高めな近作群と比べて軽くノワールなタッチが新鮮です。もう少しだけ丁寧な設定や流麗な展開、説明演出があってもいいと思いますが画角や質感など既に只者ではない風格が漂っています。

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)

1.5

凄惨な展開と演出、暴力的な極論の応酬でなかなか酷いと思いました。

具体的に挙げると、まずトレイラーを作る件。誰にも批判される事なくそのまま大作の監督を任されるという流れですが、この時点で視聴者は登場
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の・ようなもの(1981年製作の映画)

3.8

ふと訪れる孤独や未来への不安に押し潰れそうになってもなんとか生きていく事の尊さに胸がきゅっとなります。友情のようなもの、愛情のようなもの、幸せのようなもので溢れた世界の愛おしさに気付かされる作品です。

(ハル)(1996年製作の映画)

4.0

鋭利な画面設計、最小限の色彩配置による美しい導入とどことなく居心地が悪そうな登場人物たち。
ほろ苦い現実に傷付いた彼らが互いに理解し癒されてゆく様をありふれた風景と簡素なテキストで淡々と積み上げる構成
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革命前夜(1964年製作の映画)

3.5

抵抗を放棄し思考停止する事に絶望しながら嫌悪し軽蔑していたそのものにいつの間にか成り代わっていくグロテスクさと、凝り固まったイデオロギーに傾倒する事でしか生きる意味を見出せない若さが痛々しくただ辛いで>>続きを読む

パリ13区(2021年製作の映画)

3.9

理由のない寂寥に抗う手段として放蕩し酩酊する日常の隙間。そこで見つけた微かな繋がりに少しだけ救われる瞬間、堪らない気持ちになります。
劇中描かれる刺激物や悦楽行為が正解/不正解、幸福/不幸の議論以前に
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アマデウス(1984年製作の映画)

3.8

羨望、嫉妬、尊敬、憎悪 .. 混沌と入混じる感情の遷移を追うとそれは恋に近いものだと気付きます。
そのトーンは時間を重ねる毎に深みを増し、排他的な2人の関係が高みに至るEDは愛の成就にも似た悲哀と恍惚
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カッコーの巣の上で(1975年製作の映画)

2.8

自由とは責任の対価として得られる選択肢の事だと思いますが、児童買春と労働放棄の末に酒、煙草、女性、破壊行為を求める行為は自由や尊厳とは無関係の、単なる衝動的な欲求充足に見えます。
主題が横暴な行為の正
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カモン カモン(2021年製作の映画)

4.2

子供を未熟な存在ではなく性別同様一つの属性として描く点が非常にマイクミルズ的だと感じました。

その奔放な振る舞いを経験量や先天的な優劣とは別の、独自の言語体系による表現と捉えると彼から溢れる言葉の本
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インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)

3.9

探偵ものノワールの渋くいなたい雰囲気と万華鏡のように多様な依頼、カラフルなキャラクター設計の対比が程良い相互作用を齎していると感じます。
薬物の幻影か甘美な現実か。混濁する映像と展開で生まれる心地よい
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ザ・マスター(2012年製作の映画)

3.8

最大の愚行である戦争がその反面、齎す大義名分と信仰。そこに生かされていた帰還兵である彼が失った信仰を取り戻し、その後再び解放されるセラピーのような美しいストーリーラインに見惚れました。
開かれた未来に
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ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)

4.0

誰の身にも起こりうる制御不能な不条理の隠喩としてニトラムという人格を描いた作品であると感じました。
周囲がその奔放な暴力性に翻弄される中、マーティン自身も彼と戦っていると吐露するシーンは堪らない気持ち
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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007年製作の映画)

4.2

贋の信仰に陵辱され張りぼての家族も見失い他人を騙し欺き人としての品格や尊厳まで失って尚、求め続けるものの価値とその先に生きる事の意味とは何か。根源的な問いに帰着してゆくプロセスが興味深いです。

その
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現金に体を張れ(1956年製作の映画)

4.0

時系列を前後する事で立体的に浮かび上がる状況や、初見では把握し切れない複雑な相関関係、盛大なイベントに浮かれる民衆とその陰で秘密裏に蠢く思惑 .. などなどその瀟洒な画や演出から後に生まれる傑作達の参>>続きを読む

THE BATMAN-ザ・バットマンー(2022年製作の映画)

3.9

摩天楼の影に溶け込むスーツや滴る雨を疾駆するモービルなど署名のような要素はそのまま、既存作に比べ若く不安定な彼が本当の意味でダークナイトとなる成長譚として新たな魅力に溢れています。

特に、伝播し増殖
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マグノリア(1999年製作の映画)

4.0

細い糸で繋がった相関関係をなぞった中心に横たわる大きな不在。運命でも必然でもないただ"それ"に翻弄されるキャラクターたちが絶望に立ち尽くす構図はこれ以降のPTA作品に踏襲されてゆく重要な要素と言えます>>続きを読む

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

3.9

エピソードの関連性の薄さや色彩、画角を含め万華鏡のようにころころ変わる規格の脈絡なさにストレスや退屈さを感じる瞬間はありましたがそれを補って余りある程各セクションが面白くよく出来ていました。
(そもそ
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ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)

3.9

軽薄で利己的な目的だけで周囲を出し抜き、狡猾に権威・名声を簒奪する話なのかと思っていましたが(意図的なミスリードかどうかは不明ですが)トレーラーや打出しとはほぼ真逆の印象を持ちました。

画面に収まり
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ふたりのベロニカ(1991年製作の映画)

3.6

空間と時間を超えたシンクロニシティを断片的にインサートする演出は映画そのものが持つ繊細さとダイナミクスさの双方を信じた巧みな采配によるものだと感じます。

隠喩として散りばめられた要素や呼応し合うシー
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ブギーナイツ(1997年製作の映画)

3.8

大小は別として誰にも訪れる繁栄と衰退。
その分岐点での取捨選択が人生そのものと言えます。

差別的に蔑まれるポルノという領域に対する世界の責任のあり方まで言及する終盤の流れも含めラストの切れ味にPTア
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ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)

3.3

起こり得る絶望的な未来への皮肉とそうはならないよね?と逆説的に問いかけるような、揶揄と信頼が混在するアンビバレントなメッセージを受け取りました。

枠線を付けるようなキャラクターの強調や粘り気のあるジ
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東京物語(1953年製作の映画)

4.0

家族という奇妙な単位の煩わしさと愛おしさ、また、展開される会話に含まれる優しさと皮肉のコントラストが印象的でした。月並みですがおもいやりと理解が人生を豊かにする唯一の手段です。

美しいグリッドと低い
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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年製作の映画)

1.0

過去作に強く想い入れる程一緒に胸を躍らせ心を痛めたシーンを一つ一つ笑顔で蹂躙されているような気持ちになりました。
企画に奉仕するためだけにキャラクターが浪費される姿を黙って見ているには長く苦しい150
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プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

3.8

痛快な終盤の回収劇で霞みそうになりますが重くシリアスなテーマを孕んだ作品です。
問題として下がり過ぎた解像度をぐっと高める描写と粛々と制裁を進める主人公、またその自警行為そのものを疑う展開など多角的な
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Away(2019年製作の映画)

3.5

人に与えられた時間をそのまま空間と距離に置き換えたような、描かれた世界全体が人生の隠喩になっている作品だと感じました。
旅を通して出会う世界のルールに翻弄されながらも次第に適応し邁進してゆく姿に思い入
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ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

3.8

60年代ロンドンショービズの歪みや悪意が染み付いたその場所が持つ記憶に精神が侵食される一方でそれを感じる事で救われる人もいるという描写が印象的です。
能力の領域についての矛盾など気になる点もありますが
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リトル・ガール(2020年製作の映画)

4.0

願うままに生きられない人生の過酷さを想像すると常識や風習、信仰さえ取るに足らないどうでもいい事のように思えますが、彼女やそのご家族の現状を目の当たりにして自分が未だに凝り固まった価値観の偏在する社会の>>続きを読む

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

3.6

成立ちや文脈を踏まえると全方位諸手を上げた正解にはなっていない気がしますがブルータルなガジェット/メガストラクチャーや東南亜〜中東風の言語感覚・服飾が醸す独特の文化感に加え、圧倒的な質量で押し潰すよう>>続きを読む

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2019年製作の映画)

3.7

これまでのような全てを捩じ伏せる圧倒的な行動だけではなく対話で寄り添い子供をあやし新人と共闘した末メロドラマに帰着する、初めて見る007に目がしぱしぱしました。ただ改めて俯瞰で見下ろすと紆余曲折あった>>続きを読む

レインマン(1988年製作の映画)

3.6

偶発的な展開でしかあり得ない出会いが人生の全てです。これは多様性とかではなく個人では制御し切れない物事や何てことない余白にある本当の豊かさについての物語だと思いました。

あのこは貴族(2021年製作の映画)

3.9

舞台装置の隠喩や巧みな視点誘導、敷写し呼応し合う場面同士の相関関係構築など技巧の高さが際立って見えますがそれ以上にフェアで優しい今日的なテーマ性から目が離せません。
選び取った現状を正面から受け入れ
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20センチュリー・ウーマン(2016年製作の映画)

3.8

続々切り替わる美しいレイアウトと色彩設計に見惚れながら軽快に跳ね回るキラーワードの数々に痺れます。随所に配置されるトリコロールに強調されるブロック玩具のような象徴的な会話は、個人の自由な意志や強い願望>>続きを読む

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結(2021年製作の映画)

4.0

デヴィッドエアー版同名過去作に於けるスーパーヒーローの対角線にいるヴィランの寄せ集めではなく、アウトサイダーなりの行動原理と論理を以て展開される特命任務を描いた今作の姿勢は圧倒的に正しく魅力的です。>>続きを読む

クルエラ(2021年製作の映画)

3.6

エマ・ストーンのキャラクター・造形のチャームが素晴らしかったです。ミステリーとしての仕掛けとそのネタばらしが主人公の行動に整合性を与える事で派生元の作品への影響が懸念されます。

リップヴァンウィンクルの花嫁(2016年製作の映画)

3.7

人生に意味はなく偶然と瞬間的な輝きが全てだと教えられている気がしました。邦画史に残る、見た事のない爽快で痛快なEDが印象的です。