1303さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

1303

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老人Z(1991年製作の映画)

4.0

SFは常に現実世界の写し鏡になっていると言われますがこの作品も例に漏れず現実を予見し揶揄する鋭い皮肉に溢れているように感じます。シンギュラリティを題材にすると感傷的な作品になるのは人間側のエゴが起因し>>続きを読む

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲(2001年製作の映画)

3.8

悲壮で辛辣、救いようのないストーリー展開に起因する絶望的なトーンに反してギャグやユーモアが切れまくっています。
あくまで原作の持つトーンやマナーを踏襲しながら彼が持つ彼なりの本質論に琴線がタコ殴りにさ
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TENET テネット(2020年製作の映画)

3.9

基本的には特殊部隊と謎の組織による(世界を滅しかねない要因を構成する一要素である)プルトニウムの奪い合い!という擦り尽くされた古典的プロットを追うだけで充分楽しめる内容ですが、時系列の逆行と順行が並存>>続きを読む

mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

4.0

薄明りから覗く暗澹たる将来、蔓延する問題だらけの現状に打ちのめされる中その重力の楔から自由になれる唯一の手段として彼らが楽しそうにボードを駆る姿に胸が熱くなります。

大切な事は何でもない下らない取る
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プロメア(2019年製作の映画)

3.3

超過剰特盛演出の外連味に打ちのめされるこれぞTriggerな作品です。
昨今の社会情勢を横目で見つつそれをエンターテイメントに昇華する気合やアニメーション特有の矜恃みたいなものを強く感じる反面、その着
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ダージリン急行(2007年製作の映画)

3.6

兄弟という不思議な運命に導かれお互いを想い嫌悪する姿が愛おしく滑稽でコメディとして非常に秀逸です。どうしようもなく阿呆で可愛い彼らに待ち望んだ小さな救いがやってくる頃流れる「Les Champs-El>>続きを読む

ライフ・アクアティック(2004年製作の映画)

3.5

傷付け傷付きながらそれでも他者を求めてしまう人間の愛おしさや可笑しさが浮かび上がるような設定の妙が際立った面白い作品です。
大人とは大きな子供の事でありどれだけ成長しても拙さや綻びだらけだという気付き
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ムーンライズ・キングダム(2012年製作の映画)

3.4

偏狂的に整った画面レイアウトとカラーパレットに彩られたジュブナイルロマンスという発明とも言える作家性に魅了されっぱなしの94分間。成人した一大人として今だからこそ暖かくほろ苦い余韻を噛みしめながら楽し>>続きを読む

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

4.4

年齢や性別、環境、人種、宗教に翻弄され負う傷の痛ましさに加え未成熟なソーシャルメディアによる透明な暴力に晒される凄惨さ .. 目を覆いたくなりました。
やがて破壊し尽くされた彼らから溢れ返っていた言葉
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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年製作の映画)

4.2

自由である事を願いながら幸福に形を求め経済的自立を望みながらも憧憬に焦がれる、4つの時代精神の象徴とも言える登場人物たちが衝突しながらも寄り添い暮らす姿に胸が熱くなります。

全体的な見せ方も非常に巧
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デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)

3.5

オフビートな展開や空間的な音響設計、レイヤーの異なる視点配置などなど本来の作家性を活かしながらゾンビというマクガフィンを中心に据えた限定空間での心情や関係、決断と行動にフォーカスしていくこのジャンルム>>続きを読む

愛がなんだ(2018年製作の映画)

3.5

ハリウッド大作の見過ぎで麻痺した恋愛感を叩き壊すようなリアルな描写に胸が抉れる思いでした。
痛々しさを超えて悲壮感すら漂う登場人物達に訪れる淡く優しい光の予感の中ふっと降りる終幕になんとも言えない余韻
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暗くなるまで待って(1967年製作の映画)

4.0

丁寧な脚本と設定設計、巧みな会話劇の中に潜ませたヒント、マクガフィンへの導線とそれを巡るストーリー .. 全てが秀逸です。深淵とその底からの視点を何度も逆転させながら文字通りサスペンデッドに展開するス>>続きを読む

ナイト・オン・ザ・プラネット(1991年製作の映画)

3.6

刹那的でありながら他者でもいられない、時間と空間が溶け合う夜のタクシーという不可思議な舞台装置にフォーカスした面白い作品です。
さらにそれを文化的な差異を超えスイッチングするオムニバスとして描く事で特
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キル・ビル Vol.2(2004年製作の映画)

3.5

(最大限の愛を以って)揶揄を重ねるオマージュの嵐の隙間から顔を覗かせる、人が生きる上での尊厳とは?大切なものを失って失って最後に残るものは?という究極的な問いが今作からよりその色を深めます。
懐古主義
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キル・ビル Vol.1(2003年製作の映画)

3.5

最大限のリスペクトを込めた外連と誇張で溢れ出る映画愛を鮮やかに昇華するという手法的オリジナリティを確立させた映画史上でも重要な、記念碑とも言えそうな作品です。vol.2ではその外殻を残したまま優しく誠>>続きを読む

気狂いピエロ(1965年製作の映画)

3.5

連なるポエトリーの暗喩に導かれながら破滅に向かうストーリーラインは美しく魅力的です。舞台をくるくる変える中で変わらない男女の駆け引きがその馬鹿馬鹿しさと尊さを浮かび上がらせる構図に時代を超えて共感させ>>続きを読む

パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)

3.4

夢のようなシーンのカットアップを跨ぎながら拙く愛おしく展開するラブストーリーに惹かれます。ローファイなトイチューンとクラシカルな劇伴のコントラストも歪で美しいこの作品を強く印象付けているような気がしま>>続きを読む

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)

3.9

この世界の対岸にある美しく残酷な真実を描くデヴィッドフィンチャーの作家性の基幹部分に触れる一作です。
自分の心を守る安全装置として機能するタイラーという存在の本当の意味に気付いた瞬間、身が凍るゾッとす
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天才マックスの世界(1998年製作の映画)

3.9

‪夢みたいな甘い出会いと画面越しに指差されてるようなほろ苦い物語を変態的な美的感覚で捉える作家性が既に花開いてます。
就寝前にうっかり感動しました。

レッド・ドラゴン(2002年製作の映画)

3.9

シリーズ屈指の名キャスティングと丁寧な人物描写に目も心も惹かれます。それぞれの個性と心理の先で建設的に交差する関係性は簡潔で美しくサスペンススリラーとして高純度の品質を担保しているように感じました。

ハンニバル(2001年製作の映画)

3.5

前作の設定を引き継ぎながらもキャスティングや座組みから汲み取れる製作陣の重苦しい背景を反映したように歪な設定や相関関係、演出に終始首を捻りながら観ていました。
商業的請負い人側のリドリースコットという
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羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

3.8

初期設定とキャラクターの魅力に関しては疑いようがありません。"何にも代え難いプライオリティ"という圧倒的な説得力を以って動く展開にはわくわくしない方がどうかしてます。
ただ多角的な視点からある一点に向
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アポカリプト(2006年製作の映画)

3.9

歴史的教養を深める一代スペクタクル作品!という印象から見始めたのですがその実キャラクター造形やストーリーボード設計など含めシンプルな娯楽作としてのポテンシャルが半端ではありません。
最低限の会話こそ交
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アメリカン・ギャングスター(2007年製作の映画)

3.8

ブレのない汚れた正当性を纏ったキャラクター同士がその堕落した人間性を深めながら遂に邂逅する瞬間の爆発するような快感が凄まじいです。
主演2人の匂い立つような色気も大きな魅力です。

チャイナタウン(1974年製作の映画)

4.2

脚本の巧みなミスリード、示唆的なカメラワーク、心情をトレースするような音響設計など過剰な美意識と鋭利な感覚に裏付けられた全ての要素が確かな采配によって一切の無駄なく配されていて観ている時間の多幸感がえ>>続きを読む

22ジャンプストリート(2014年製作の映画)

3.8

ブランディングのトーンやEDの演出から考えて完全に前作のおまけとして進んだ企画だとは思うのですが、続編として期待にしっかりと答え着地し自己揶揄しながらカーテンコール後に放つアンコールとして100点の作>>続きを読む

21ジャンプストリート(2012年製作の映画)

4.0

インパクトのある設定とアートワークから受ける一見大胆で大味、大雑把な印象とは裏腹に緻密で繊細な脚本と人物描写にうっかり涙腺を刺激されます。
随所に仕組まれたハッとさせられる仕掛けの楽しさやカルチャーギ
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トレーニング デイ(2001年製作の映画)

4.0

正義を相対化するのではなくその絶対性を淡々と語らせる事で視聴者の価値観を揺さぶる作りになっておりかなりぐっときます。
自分が生きる世界の規範を右から左にただ遵守するのではなくきちんと疑い考え悩み続けろ
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ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000年製作の映画)

3.5

倫理や道徳、常識の外側にある価値観を立体的に描く作家性がここから既に確立されていたんだなと感慨深いです。
演出面でもエンディングシーンのドキュメンタリー性にダイレクトに繋がるカメラワークなど細かな設計
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レディ・バード(2017年製作の映画)

4.0

自身の稚拙さに加え他者の無理解から隔絶する関係性のジレンマが見ていて痛々しく懐かしく愛おしくもあります。
取り囲む世界とどうコミュニケートしていけばいいのか判らないまま過ごす日々の絶望と何気ない対話の
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ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY(2020年製作の映画)

3.6

迫害、搾取されてきた主人公達が自分の手で未来を勝ち取る姿は爽快でした。感傷的な所が少なく87EADの多彩なアクションが際立つ作りも良かったです。
ただ彼女達の抱える問題とそれを繋ぐ理由、またそれを以て
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ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2018年製作の映画)

3.8

月並みですが 画で語る という映画としての根源的な高揚感に溢れた作品でした。
会話をパンする画面前ガラスのプリズムで顔を向合わせる2人を2重に見せ揺らぐ真偽を示唆したり、語り手の肩越しに聞き手の表情を
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ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.3

踠き抗いながら道徳や倫理を強く意識するほど畏怖が高まる構造になっていて稜線を擦るように運命を受領する事で観客にとっても彼女にとっても救いの物語として機能する点が非常に興味深いです。
凄惨なシーンやゴア
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殺人の追憶(2003年製作の映画)

4.0

単純にストーリーをなぞるだけでもサスペンスとしての面白さは超一級品なのですが真相への巧みなミスリードと残酷な結末、またさらにその後に描かれる身が凍るような静かなラストが凄まじいです。史実との誠実な距離>>続きを読む

セブンス・コンチネント(1989年製作の映画)

4.0

計算された画角にきちんと収められた画一的な日常を淡々と描きながらサブリミナルに挿入されるシーンのカットアップが印象的で全体を通して画面設計の美しさに目を奪われます。媒介に媒介を重ねた断片を示唆的に積み>>続きを読む