このレビューはネタバレを含みます
記号的な悪には断罪しない、恐ろしい愚かしさと反面に、極めて人間的な野心とタフネスを備えた父性の晩年を描き切る。一方で残された青二才たちの狼狽。愛とエゴの狭間で二転三転する、やはり人間らしい軽薄な信頼と>>続きを読む
人間とは政治的存在である──アリストテレス
すべてはゲームに過ぎないこの世の虚無主義に抗うべく物語、エディプスコンプレックス。父の寵愛を巡り、ひたすらにむきだしの自己愛が交錯する。
「バラのつぼみ」
モデルとされるルパード・マードック及びFOX社への風刺的側面を色濃くするシーズン2。マフィアとも同義語の“ファミリー”の存亡をかけた闘い。
「ビジネスこそセックスである」
富と地位と名誉と、そのパワーゲームの快楽すらを欲しいままにする大資本家一族の骨肉の争い、あるいは没落をゴシップに見つめる庶民、最上の娯楽。
アンドロイドを介し、むしろ自由意志を持たないはずのアンドロイドにこそ感情移入して、“ヒューマン・ビーイング”を探求するスペキュレイティブ・フィクション。人類(カルト)vs.アンドロイド(無神論)の皮肉>>続きを読む
生きることに絶望した男が最後の希望を少女に託す、そんな紋切り型のロードムービーがポストアポカリプスのまさしく世界の終わりの風景と重なり、ゲーム原作とは思えないほど深遠でそして多様な人間模様を紡ぎ出す。>>続きを読む
ありがとう、ごめん、いいねがもうしつこくて、必要以上の優しさが野暮で、でもそこから始めなくちゃいけないくらいに脆く、壊れてしまった現代を生き抜く戦士たちのしばしの休息。こんなことがあったらいいな、こう>>続きを読む
“で”いいじゃなくて“が”いい。うまそうより、うめぇ!と言える人生への当事者性を示すべく、小ネタや再現にハスることなく、その愛やリスペクトを情熱に伝播する一球入魂。ファンムービーかくあるべし。
ウィリアム・キブスンの原作より、ヴィンチェンゾ・ナタリ×クロエ・グレース・モレッツのSFドラマシリーズ。テクニカルターム連発で難解げなハードSFの大風呂敷を広げるだけ広げてシーズンをまたぐアマゾンスタ>>続きを読む
セックスとバイオレンスと裏切りに次ぐ裏切りの超展開でドラマツルギーの定石を逆手に取る奇策の繰り返しになく、“血筋”の物語を色濃くする重厚な群像劇がお世辞にも大団円とは言い難かった前シリーズ終盤の消化不>>続きを読む
富める者たちのユートピア、とはつまりその他大勢の人々に訪れる近未来ディストピア。保守派が革命を企てるねじれは、現代の世相ともすでに重なるアメリカドラマのリアリズム。
人に出会い、人に傷つき、誰もが通りすがりの日々を独り生きていかねばならない恐怖と不安。永遠の孤独を知っていくばかりの旅路にあって、それでも「生まれてきてよかった」と。心からそう思えるような幸せなときが>>続きを読む
失ったものを見つめて生きるにはこれからの人生、長すぎるよ。
悲しみに打ちひしがれ、呆然と立ち尽くし、しかし失った過去と残された未来との圧倒的な非対称性に、たとえゾンビのようでも生きながらえてしまう私>>続きを読む
崇高なる目的のためならば倫理を犯しうる科学者のエゴ。または、その他すべての世界を犠牲にしてまでも守られるべきただ一つの愛。
いつか訪れる、別れの朝に。「ごめんなさい」と、それ以上の「ありがとう」を伝えられるように。悲しくとも、虚しくとも、意味などないこの世界の今と向き合い生きていくのみ。
シーズンを通し、一つ、また一つと提示される妄想科学と陰謀論の親和性。「もう一つの世界」を描くサイエンスフィクションの壮大なる序章。
JJ印のレンズフレアが光る。
人間のフリをして生きる“怪物”の孤独、愛への渇望と密かな共鳴を、マイアミは陽光、ネオンの輝くラティーノカルチャーの喧騒の中に描く。あるシリアルキラーの独白。
このレビューはネタバレを含みます
「長き夜」の歴史的映像体験。
そして、かくも純粋な正義の危うさを突きつける、これも『ゲーム・オブ・スローンズ』のクライマックスに相応しいだろう、悲愴なる玉座の行方。
英雄なき戦場、勝者なき戦争の凄惨>>続きを読む
裏切りと復讐の魑魅魍魎にも終局は訪れ、やはり正義と悪に二分される勢力図には予定調和を感じつつも、しかし血と炎と灰と咆哮のスペクタクルに感嘆せざるを得ない。大風呂敷を畳んでいく難しさ、物語が閉じていく物>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
好きだから一緒にいたいうぶな純情と、好きだからこそ離れなければならない、自立しなければ生きていけない現実との狭間に、二人の永遠は引き裂かれる。
それはきっと誰もが遠き日に思い描いた「夢」の終わり。誰>>続きを読む
「何もできなかった」という無力感と、幾ばくかの疎外感。だから「誰かの役に立ちたい」と願うばかりの“きれいごと”をそれでも生きる他ない若者たち。自分の幸せを生きられない、そんな贖罪の人生を救うドラマとし>>続きを読む
『アンダー・ザ・シルバーレイク』(2018)と共通するような、オタクカルチャーとオカルトの甘美な結びつきに無邪気でいられたのも今は昔。
図らずも、陰謀論と疫病が蔓延する現実が、まるでそのままの虚構を>>続きを読む
産休・育休制度について、選択的夫婦別姓について、ジェンダー論、LGBTについて、ハラスメントについて、無痛分娩について、これら日本社会が抱える課題について──
こうも一から十まで説明的でなければ伝わら>>続きを読む
「でももし、ひきこもりの人がいなかったら誰が思いやりや優しさよりも効率ばかり求める社会にNOと言えるのかな…」(松山ケンイチ)
優しさだけでは人を愛せない、優しさだけでは生きられない世界で。
不自>>続きを読む
我らがボンクラコンビ、サイモン・ペッグ&ニック・フロストのやってみたシリーズ最新作。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』でゾンビ映画を、『ホット・ファズ』でポリスアクション、『ワールズ・エンド』でインベー>>続きを読む
度を越したグロテスクがシーズン2ではなおも露悪的に、さらに躁病的にカリカチュアライズされて描かれる現代アメリカの肖像。
アメリカン・マチズモの病も、もはや末期症状だ。
肥大した自我の葛藤と並行して>>続きを読む
物語は終わる。それでも続く人生を共に、それぞれの場所で歩み続けよう。
数えきれないほどの忘れえぬ思い出を抱きしめて──。
S1 ep.19 "Love's Labor Lost"
S2 ep.7 ">>続きを読む
父性の不在は長らく、母性なる愛の庇護も得られないまま戦い続ける“ブラザー”たちの絆。そのナイーブな繋がりを守りぬくために重ね合う思い、募らせる愛と感謝の言葉。そして大粒の涙。
いつわりの正義、まやか>>続きを読む
「公助」の不備が社会不安を醸成する。あらゆる対立の根っこにある不安からの恐れ、そして偏見、憎悪の悪循環。
慈悲の心、それだけではもう“止血”しきれないほどに疵だらけのこの世界で、荒廃する人心。
当>>続きを読む
無常。すべては虚ろ──。
地獄の果てのさらなる地獄で、友が一人また一人と去っていく。
"The Show Must Go On"
僕らが僕らであるために。
変わり続ける者だけが変わらずにいられるように。
回り道でも、傷つきながらも進み続けるしかない人生のY字路。
「さよなら」は、ま>>続きを読む
構造的な人種差別や労働問題など、長らく放置されてきた今日的課題をついに是正させるべく声を上げる新世代。若者たちの反乱。しかし皮肉にも、その拙速な変革に招かれる効率化の波は人道主義をなおざりにする。崇高>>続きを読む
父性の不在に弱体化する“家族”と、その絆。
世代交代と共にかたちを変えて受け継がれる“家族”の、その思い。
バラバラの子どもたちを襲うさらなる苦痛と失意と悲しみは、しかし彼らの新たなる友情を固く結>>続きを読む
でも、走り続ける──。
暗黒の夜空を見上げながら。
降りしきる雨にうたれながら。
愛ゆえに憎しみ、傷つき合いながらも、愛ゆえに救うべきすべての命を救うために。
純真なままでは務まらない彼らの矜持>>続きを読む
「ありがとう」そして「愛してる」、その二言に生かされ死んでいく人の一生。
“家族”という繋がりの確かさゆえの苦しみ、愛おしいほどに切ない運命の糸を手繰らせるように。