「我が家」がいつか「故郷」とその名を変えるとき。
ある者は自分の人生を取り戻すため。ある者は正しくあるため、信念を貫くために。愛がために離ればなれの道を行く友であり、兄弟であり、同志たちの別れの季節>>続きを読む
手を差し伸べることで不安や恐怖を癒やすことはできても、彼らの人生を繋ぎ止めておくことはできない。
“我が家”と呼べる居場所を持ちえず、“家族”と呼べる思いを失い。心の穴を暗い灰色の陰が覆う者たちの夕>>続きを読む
神の如く御業がたとえ命を救ったとしても、その人生を救うことの意味は別にある。人生を苦難から再び立ち直らせるために必要なもの、それは本人の強い意志の力をおいて他にない。
尊敬する師が、親愛なる友がいく>>続きを読む
インターン、レジデント、スタッフドクターと。経験を積み、責任を負うごとに複雑化する組織のリアリティー。現代医学の限界と無力さに打ちのめされながら、不条理とも言える社会システムの残酷さに義憤を募らせなが>>続きを読む
言わずもがな、医療ドラマの最高峰。
Emergency Room(救急救命室)を舞台に繰り広げられる命のドラマ──などと感傷に浸っている暇などないほどに、目まぐるしく壮絶な、まるで戦場に飛び込むカメラ>>続きを読む
夫婦を超えてゆけ
二人を超えてゆけ
一人を超えてゆけ
それは(おうち時間を「“うち”で踊ろう」と言い換えたように)あらゆる多様な個人を内包する恋のうた。
私たちを縛るすべての──当たり前、常識、普通>>続きを読む
脳をデジタル化すれば記憶の保存は可能である。それを新しい肉体にダウンロードすれば、人間の主体が記憶に基づきアイデンティファイされる限りにおいて、永遠の命は実現し得る。
なんてことが、2045年までに!>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
10話にわたり「テセウスの船」という哲学的問いを託されていたはずの主人公が、まさか一人称ごと入れ替わり、その眼差しと矛盾の対象とを反転させてしまうクライマックスに鳥肌を立てる。
それはタイムスリップ>>続きを読む
たとえそれが苦痛と不安と後悔の日々であったとしても、過去を奪われることは未来をも奪われることに等しい。
記憶の空白はいつまでも人生に暗い影を落とし続ける。悲劇なき人生は、つまりワイドスクリーンにあり>>続きを読む
ダークファンタジーに寓意を託す様式美。露わなエロスやグロテスクの表現は『ゲーム・オブ・スローンズ』が押し広げたコードに倣う。
スーパーヒーローものかくあるべし、現代アメリカの政治状況を下敷きに絶対的正義を疑う。そのリアリズム志向が行き着く先のグロテスク。
いかにしてヒーローはヒーローたりえるかという性善説的な問いは覆され、>>続きを読む
フラット化を要請する社会では、対となって先鋭化する思想が緊張を高め合う。
あらゆる二項対立は原理主義化。行き過ぎた正義が正義でなくなるように、極端な右も左も同じであるように、いつしか対立と勝利こそが目>>続きを読む
古き神は廃れ、人々は新たな神を生み出したか、あるいは自らが成り代わろうとする──新旧の神々と人間との三つ巴にあるニューエラ。
アメリカ史から全人類史を射程に戯画化しようとする豪快な筆致はさすがの映>>続きを読む
映画版のシアーシャ・ローナンと比較しても遜色ないばかりか、無垢に潜んだ動物的な凶暴性を有しては、オリジナルより新たなヒロイン像を演じてみせる──今作のハンナは、瓜二つ、サマンサ・モートンの実娘だそうだ>>続きを読む
主演は、私的偏愛映画『スパン』のミーナ・スヴァーリ。悪魔に取り憑かれた悪魔祓いの一人二役は“傑作”だった。
わずか全8話1シーズンでの打ち切りも納得の駄作と言わざるを得ない出来ではあるが、ひたすらシュ>>続きを読む
途方も無いカオスに打ちひしがれるも、再び立ち上がった救世主の目を眩ませる終末のヴィジョンとは、例によってまたしても「プログラム」と「自由意志」の戦いであった。
アルマゲドンへの欲望。
博士の異常な愛情。または私は如何にして心配するのを止めて“怪物”を愛するようになったか──。
サイエンス・フィクションの拡張はやがてスペキュレイティブ・フィクションとしての、>>続きを読む
スペース・オペラとしてのサイエンス・フィクションの王道。その序章にサンプリングされるは、中折れ帽のハードボイルド。
まるで新鮮味のないガジェットには苦笑いすら浮かべるものの、現実にある地上のディスト>>続きを読む
自由という名の牢獄が人間を自由意志の不能に直面させる。
生存本能と欲望の狭間に、驚くほど単純なコードで埋め込まれた性格と「物語」とその役割の中で、与えられた選択肢もまた創られた幻想に過ぎないとすれば。>>続きを読む
謎が謎を呼ぶ無秩序なイメージの連続。リンチ的ギミックの散りばめられた幻想は、夢の中に生きる夢見人の無意識に深く通じ合う。
解かれることのない謎が夢を醒ませまいとすれば、永続する浮遊感に身も心も癒される>>続きを読む
贅沢とユーモアですぎさる時間。ふと思う、そんな生活の退屈や後悔もまた一興 。
誰もが山あり谷ありの冒険に満ちた人生を歩むべきだなんてことはなく、平坦な道をてくてくと歩き続ける穏やかな日々の繰り返しも悪>>続きを読む
嘘偽りのない言葉を告白し、罪を贖う者たちに勝利の女神は微笑む。
信じるは、善なる心が報われ、悪しき行いが罰される普遍の真理。それは神の介在しない人の道である。
大戦前夜。
信義の名の元に結集する力。>>続きを読む
この世の因果律が罪人に牙を剥き、終わりのないゲームは章を新たにする。
一盛一衰。そしてまた長き夜が続く。
まやかしの二者択一に、都合のいい現実を踏襲することを否定する若人たちの穢れなき信念に反し、そ>>続きを読む
闇、濃くなりし今。
偽りにも純粋な善が。
捻じ曲がった正義には邪悪が。
紐解かれていく真実が愛の疵を残して、新しい世界に生きる者と古い世界に死ぬ者を別つ。
無慈悲なまでのこの世界の道理が、その本性を露>>続きを読む
タチの悪い冗談みたいな“作り話”。感情移入を許さないフザけた人間たちが善悪のトチ狂った磁界に引き寄せられ、次々と鮮血を流して死んでいく様をただ傍観する、悪い夢でも見るかのように。
「物語」の道筋を照らすはずの灯火はまた一つ、二つと消え、夜明けは再び暗闇に飲み込まれる。時に吐露される穢れなき言葉、交わされる真心も虚しく、愛の濁った血がやはりすべてを洗い流してしまうのか。
さらに>>続きを読む
振り返れば過去に追われ、闇が延々とその身を纏う。覚めぬ悪夢に引きずりこまれる終着も自らが選んだ人生だったか。嘔気のする暗渠から届かぬ暁光を見上げる。
外宇宙にもしもの世界が広がる"SF"という装置は、愛の欲望や、罪の罰や、恐怖、ノスタルジーといった潜在意識の赴くままに、「夢」と呼ばれるあり得べき別の人生を内宇宙に存在させる。そして現実は揺らぎ、アイ>>続きを読む
神のいるところに邪悪は巣食う。
闇の支配する夜空を見上げれば浮かぶ点と点を線で結び、光の物語を視る男。
人を寄せ付けず、野暮な科白など一切受け付けない高尚な御託を並べ立てては、真実の証明に狂う病者の眠>>続きを読む
「愛」という名のエゴという、極めて人間的な原理が善も悪もない混沌の闇を一層濃くする。
しかし壁に映る影が光の僕であるならば、まだ見ぬ希望の灯火が何処かで必ずや揺らめいていることだろう。
血で血を洗う権力闘争の剥き出しの欲望と鬩ぎ合いし、信じるにたる人間の尊厳とは。
かくも無慈悲に破れたり。
然らば、「氷」のように冷たく凍りつかせた瞳。復讐の「炎」は地獄のように我が心に燃え。
いくら抵抗を企てようとも大局を覆すには至らない。大いなる運命からは逃れられない不条理にこそ、あり得たかもしれないもう一つの世界の幻想、或いは虚構より覗かれる“現実”の諸相に希望を託す。
史実を記録したり、戯画化して描き出す現在、過去。未来までも見通すそれは、あり得たかもしれない世界の可能性を映写する。
光と影に見出される真実の希望や、絶望に当てられた人生は後戻りできない。信じるにたる>>続きを読む
筋書き通りの「物語」をそれでも演じ続ける人間の性。自己疑念を抱き、人生に意味を探し求める人間にとって慰めとなる悲劇。すべては苦しみに連携する記憶の迷路を彷徨い歩くのは、この苦痛だけがこの美しい世界との>>続きを読む
信じるに足る「物語」への、信仰。
一人の男を救っては弄ぶ神々の、戦争。