2MOさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

パリに見出されたピアニスト(2018年製作の映画)

2.8

もろ“Lust For Life”なフレンチロックのビートがラフマニノフ、ピアノ協奏曲第2番のクライマックスへと転ずる。トレスポオマージュの逃走劇にはじまる不良少年の街角ピアノ。

好きなことを見つけ
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オンネリとアンネリとひみつのさくせん(2017年製作の映画)

3.0

「世界は素晴らしい」

大人が子どもたちに示すべきたった一つのメッセージ。

オンネリとアンネリのふゆ(2015年製作の映画)

2.9

“小さき者の運命が世界の未来を決める”

北欧の雪景色に映えるパステルカラー、ドリーミーなSEが断続的に鳴る浮遊感。舌ったらずなフィンランド語が可愛らしいオンネリとアンネリのおとぎ話は続く。でも、ちょ
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女と男のいる舗道(1962年製作の映画)

3.8

娼婦に聖女を、ミューズとしての女優を重ねるロジカルな女性史観が、アンナ・カリーナの息遣いにダンス、さらには大粒の涙を流す肉体より魂を見つめるカメラのクローズアップに結実する。あるいはゴダールのおのろけ>>続きを読む

君はひとりじゃない(2015年製作の映画)

3.8

人生は悲劇である。との、諦観に宿るコメディの強かさ。その限りにおいては、霊と交信するなどと馬鹿げたスピリチュアルも、一種の救済として機能するアクロバティック。

夜明けと共に希望の光が差し込むラストシ
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5時から7時までのクレオ(1961年製作の映画)

3.8

“恐怖は美なり美は恐怖なり”

厭世的に故郷を彷徨う『鬼火』のそれとはまるで対照的に、夏至は太陽の沈まないパリの街を散歩でもするように、死への恐怖とは生への欲望を、新たな出逢いに希望を見出す逞しさ、美
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いぬ(1963年製作の映画)

3.1

すべてはクライマックスの “種あかし”に集束する、仁義。

ソフトハットにトレンチコートを纏ったベルモンドの出で立ちが、『サムライ』でのアラン・ドロンと酷似する。が、個人的には断然、後者推し。フレンチ
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ファーザー(2020年製作の映画)

3.6

「すべての葉を失っていくようだ」

自分が自分でなくなる感覚。娘の顔すらわからなくなる悲しみ。そんな悲しみさえ忘却の彼方へ消えていく無情──死よりも先に無が訪れる病のどうしようもなさ。
時間とはつまり
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ジュラシック・ワールド/新たなる支配者(2021年製作の映画)

2.8

恐竜をまるでペット扱いし、家畜化し、あるいは逆にモンスター化し、畏怖の念を捨て去ったシリーズの末路。

スリルも浪漫も失われ。とってつけた“共存”のメッセージも深掘りされることはなく。脈絡なく乱発され
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ガザの美容室(2015年製作の映画)

2.9

壁と海に囲まれた“天井なき監獄”、ガザを一軒の閉ざされた美容室に見立て、サイレンや銃撃戦の轟音が鳴り響く、日常が戦時下である彼女たちのリアル、そのカオスと閉塞感を伝える群像劇。

今作から8年後の現在
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ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ(2021年製作の映画)

3.6

愛に破れたハートブレイクマンの七転八倒をスラップスティックに描く。喪失より怒りを経て、受容に至るまでの自問自答、自己陶酔的な葛藤を別人格に表出させ、痛々しいラブストーリーに訴える。ロマンスは死せず。『>>続きを読む

ジャケット(2005年製作の映画)

3.7

目を閉じれば暗闇の中、静寂を切り裂き、サブリミナルに明滅する悪夢のフラッシュバック。逃れるように甘美なる明晰夢に堕ち、ヒロイックな誇大妄想を浮かべる──タイムリープをくりかえし、命を賭して少女を救う。>>続きを読む

戦慄怪奇ファイル コワすぎ!最終章(2015年製作の映画)

2.9

POV作品としては稀有なほどのキャストのカリスマでもって牽引するシリーズにあって、工藤、市川の不在を補うべく、カメラマン田代が奮闘を見せるも力及ばずといったところ。宇野と白石の虚実をうつろう迷コンビも>>続きを読む

青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)

3.1

琵琶の旋律に虫の声、鳥のさえずりが響き合う静謐で流麗な映像美に反し、戦闘機の轟音やよもや怪談のそれのような不穏で不可解な劇伴との不協和音は、対位法による重層的なテクスチャ、あるいは『ミツバチのささやき>>続きを読む

アーカイヴ(2020年製作の映画)

4.1

夢ならば覚める。悪夢とて終わる。それが過去に起因する記憶の“アーカイヴ”に過ぎないとしたら。現在、未来へと絶え間なく押し寄せる時間の波に埋もれ、その喜びや悲しみさえもやがては薄らいでいく人間の無常。片>>続きを読む

エイドリアン 亡き妻が世界に遺したもの(2021年製作の映画)

3.8

『アンビリーバブル・トゥルース』、『トラスト・ミー』と、初期ハル・ハートリー作品のミューズ。さらには昨今のムーブメントにも繋がる、フェミニズム映画作家の先駆けでもあったエイドリアン・シェリーの半生を称>>続きを読む

ブータン 山の教室(2019年製作の映画)

3.9

『ミツバチのささやき』のアナ・トレントを彷彿とする、純真無垢なダイヤの原石。きっと誰もが目を奪われる、ヒマラヤ山脈の秘境に暮らす9歳の少女、ペム・ザムとの出会いが本作の成功を約束する。

“世界で一番
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アメリカン・レポーター(2016年製作の映画)

3.1

米軍撤退によるタリバン復権以降、2023年現在、アフガニスタンの女性たちが強いられる抑圧状況を鑑みるに、(たとえ2016年の作品だとしても)今作における、いかにも“アメリカ白人女性”的な自己実現の葛藤>>続きを読む

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)

3.6

搾取構造を温存し、貧富の差を拡大させておきながら、人々を不用意に近づけすぎたグローバリズムの歪みが局所に噴出する。

立ち並ぶ高層ビル群を傍目に、ゴミだらけの岸辺へゴムボートで乗りつける若者たちが向か
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めぐり逢わせのお弁当(2013年製作の映画)

3.1

間違った列車に乗っても正しい場所にはたどり着くか──。

著しい経済発展を遂げるインドは大都市ムンバイの今を、名目上では計れない市井の生活に寄り添った繊細なまなざしによって切り取る、非ボリウッド製の人
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クジラの島の少女(2002年製作の映画)

3.6

切れたロープを結び直す少女。
“運命”に逆らい、滅びゆくマオリの伝統を受け継ぐ少女とクジラ伝説の神秘。

島を愛し、家族を愛し、凛々しくたくましく生きるヒロインのまっすぐな眼差し。その純粋な瞳から零れ
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RUN/ラン(2020年製作の映画)

3.8

RUNを「走れ」ではなく「逃げろ」と翻訳すべく時代のジャンル映画。近年のフェミニズムホラーにも通底する抑圧的な世界観──強権的な支配からの“自立”を勝ち取るべく戦いはなにも、有害な男性性からの解放を謳>>続きを読む

シャドウ・イン・クラウド(2020年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

狭い爆撃機の銃座に閉じ込められたクロエ・グレース・モレッツの一人芝居、ゲス男どものハラスメントをひたすらに耐え凌ぐ前半部を経て、怒りのヒットガール降臨。そんなまさか、荒唐無稽な痛快アクションの連続に、>>続きを読む

恐竜が教えてくれたこと(2019年製作の映画)

3.6

悪い夢でも見たのか、急に世界に独りぼっちな気がして、両親の腕の中で泣いた夜のこと。ふと死の概念を理解してしまい、大好きなあの人もこの人ともいずれお別れしなければならない運命を知った、幼すぎた愛の“記憶>>続きを読む

デス・バレット(2017年製作の映画)

3.4

髑髏、炎、銃口、そして顔、顔、顔への極端なクローズアップ。傾いたカメラに、やたらにカットを刻む“スタイリッシュ”な画作りは、全編キメキメのショットが連続する実験映画的オナニズム。フレンチウエスタンを下>>続きを読む

心と体と(2017年製作の映画)

4.2

障害の字をひらがなにしたり、特性と言い換えたりしたところで、彼らを包摂した社会の実現には程遠く。普通という名の同調圧力に阻害され、押し潰される心の痛みは計り知れず。わかったつもりにもなれないほどのディ>>続きを読む

5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生(2017年製作の映画)

4.0

視覚メディアに追体験される“見えない”ということへの恐怖と閉塞感。そのリアリティに対し、誰もが“障害”に手を差し伸べ、夢見ることを諦めさせない優しい世界のファンタジー。虚構に希望を託す、それも映画の良>>続きを読む

スコーピオン・キング(2002年製作の映画)

2.8

さながらWWEのリアリティライン。ハムナプトラ2の設定どこ行った、まるでヒールから善玉レスラーへと転向し、正義の大立ち回りを演じるスコーピオン・キングこと、ロック様こと、ドウェイン・ジョンソンの映画本>>続きを読む

ハムナプトラ2 黄金のピラミッド(2001年製作の映画)

4.2

彼らにとってのインディー・ジョーンズが、僕らにとってのハムナプトラシリーズ。我らがブレンダン・フレイザー。レイチェル・ワイズのキャットファイト。そして大人になって見返すことには、イムホテップの悲しき愛>>続きを読む

ホモ・サピエンスの涙(2019年製作の映画)

4.1

Studio24の住人たちにまた会えたよろこび。

すべてがあまりに早く過ぎ去ってしまう現代の日々に、時間を遅らせるアートの営み。しばしの休息に孤独を癒し、隣人愛をとりもどす。誰もが問題を抱えて生きて
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THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.8

このレビューはネタバレを含みます

わかりきった結末をなぞる、スローモーションの無の境地。そのカタルシスはまさにゾーンの追体験。身体性を伴う感情の揺らめきにこそ人は動かされる。

さりげなくも、やはり。「あきらめたらそこで試合終了」とい
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あの頃をもう一度(2021年製作の映画)

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音楽が鳴り出せば、ステップを踏むだけ。ビートに合わせてグルーヴに揺れ、そして分かち合う。恋人たちは雨に唄う。簡単なことだ。鼓動を感じて、時を止めないで。愛を捨てないで。“あの頃”を駆け抜けて、それぞれ>>続きを読む

紙ひこうき(2012年製作の映画)

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まるで『ラ・ジュテ』のようなモノクロの逆光に、振り返る彼女のおぼろげな横顔。一期一会の恋が交差する大都会、東京の想い出をかさねる。

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.1

川のせせらぎも、鳥のさえずりも、ギターの音色も彼女の耳には届かない。だけど、川面はゆらめく、鳥たちは羽ばたく、踊り出すステップに音楽は聴こえる。風をきって走る。ミット打ちのリズム、スパーリングの息遣い>>続きを読む

ペーパー・タウン(2015年製作の映画)

4.1

人生最高の夜が、たとえ君にはそうでなくとも、そうではなかったからこそ切なく美しい恋の思い出を抱いて、僕はどこまでだって生きてゆける。悪友たちとの青春は終わり、そして始まる新たな旅立ちを物語る。それぞれ>>続きを読む

ノット・オッケー!(2022年製作の映画)

3.8

さしたる苦労もなく、なに不自由なく生きてこられたがゆえの、普通で平凡な人生へのコンプレックス。

何でもあるというのは何もないことにも等しい、何をやっても実感に乏しい。物資的な豊かさと引き換えに、もは
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