2MOさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

フリー・ガイ(2021年製作の映画)

3.7

毎日、毎日、同じことの繰り返し。意味のないルーティンをこなし、誰かの人生の背景におさまって与えられた役割を演じ続ける私は一体、誰だ。

恋のときめきが、あるいは抑えきれない愛への衝動が、きっとそんな予
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アムステルダム(2022年製作の映画)

3.7

「美しいもののために生きましょうよ、少しくらい貧しくても」

“ほぼ実話”のアメリカ史をなぞる衝撃の陰謀劇よりも、愛と芸術に生きる一人の女性の、そんな平凡な人生訓こそ胸に響く。

あの『はなればなれに
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ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)

3.2

人の心を慰め、赦しもする嘘の魔力について。映画という嘘の作り話に“騙されたがる”我々観客の目の前で、語り手自身がそのペテンを暴露し、因果応報にふれるメタ構造。豪華キャスト、絢爛な美術セットが彩るデルト>>続きを読む

ナイト・ハウス(2020年製作の映画)

4.0

何もない。誰もいない部屋の、暗闇にただよう愛の残り香をたどる。

“無”へ引き寄せられる病者の見た幻。言ってしまえばトリアーの『メランコリア』とも同根の心象風景を映画という鏡像に重ね合わせる。つまり文
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シンクロニック(2019年製作の映画)

3.5

永遠の幻想に囚われのゴーストがさまよう。死ぬより、嫌なことがある。
悲しい運命より立ち上がり、彼だけが持ちえた特殊能力に自己犠牲を働く、ある種のヒーロー譚にも読める。マーベルドラマ抜擢への布石がここに
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フレッシュ(2022年製作の映画)

3.7

父権的なクソ社会に痛快なカウンターを食らわせるシスターフッド。例によってフェミニズムホラーであるが、一見、普通のラブストーリーがカニバリズムへと倒錯する寓意にこめられた絶望は深い。

The Wave(原題)(2019年製作の映画)

3.9

酒もタバコもやらないし、違法薬物は許されない、その代替物として映画の過剰摂取をやめられない。夢うつつへのトリップ。本質的に幻覚的である、まばゆい閃光の明滅と音楽の快楽性が、おしなべて少なからずドラッグ>>続きを読む

バーバリアン(2022年製作の映画)

3.8

流行りのフェミニズムホラーを起点に、二転三転、先の展開がまるで読めない巧みな語り口。不吉な不協和音が神経を逆なで、気の休まることのない緊張感を持続する。不穏が恐怖へとそのおぞましい正体を露わにするとき>>続きを読む

パーキングエリア(2022年製作の映画)

3.8

吹雪に閉ざされた山小屋の惨事といえば『ヘイトフル・エイト 』を思い浮かべもするが、あのようなリッチな映画体験でなくとも、自宅で、配信ムービーで、あるいはもしかしたらタブレットでも同等のスリルと興奮を味>>続きを読む

エスケープ・ルーム2:決勝戦(2021年製作の映画)

3.2

真の勝利はゲームを勝ち抜くことではなく、この理不尽なゲームから降りる、または破壊することにある。二作を通して顕在化するYA的世界観に、全米ローカルヒットの文脈を読む。

通常版とエクステンデッド版でエ
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エスケープ・ルーム(2019年製作の映画)

3.2

ソウ×キューブ的なデスゲームからゴアを廃した、よい子に優しいリアル脱出ゲーム。ストーリーを語るわけでもなく、謎解きの快感に全振りするライド型エンターテインメントの一種。佐藤健とノブのコンビで見たいやつ>>続きを読む

キラー・ジーンズ(2020年製作の映画)

3.4

ジーンズが人を襲うなんてZ級のワンアイデアにもかかわらず、ルックは安っぽくないし、怖いシーンはしっかり怖くて感心する。もちろん笑える、あるいは失笑のホラーコメディである。スプラッターにはユーモアが溢れ>>続きを読む

プレデター:ザ・プレイ(2022年製作の映画)

4.1

生きるために殺す。人が生き抜くための業に迫られた殺生ゆえに、血を流す全ての生き物たちへの畏怖が、ソリッドなアクションに、痛みを感じさせる必然的な残酷表現に描かれる。美しく。ネイティブ・アメリカンのヒロ>>続きを読む

ミスター・ガラス(2019年製作の映画)

3.9

“秩序”ある社会の名の下に、日陰に追いやられる者たちが縋る「物語」への信仰。たとえ妄想と罵られようとも、虚構に見出す真実にこそ自らの存在理由を託す。

『スプリット』に次ぐまさかの続編に『アンブレイカ
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ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

3.9

イルミネーションマナーがその対象年齢の子供たちを存分に笑顔にする傍らで、大人の観客こそノスタルジーに歓喜、むせび泣く最高のファミリームービー。誰もが一度はプレイしたことのあるマリオワールドが眼前に広が>>続きを読む

ヒッチャー ニューマスター版(1986年製作の映画)

3.3

『ブレードランナー』を思い起こす雨と光のレイヤーに、ルトガー・ハウアーのカリスマが浮かび上がる。凶悪かつ純粋な狂気に引きずり込まれる恐怖のデス・ロード。無人のハイウェイに砂漠の荒野を想起すれば、マッド>>続きを読む

エスケイプ・フロム・トゥモロー(2013年製作の映画)

3.3

ディズニー非公認のゲリラ撮影という触れ込みをもってして、カルトムービーになり損ねた本作もまたB級映画の有象無象。リンチやノーランやダーレン・アロノフスキーのようにはなり得なかった男の、卑俗な妄想に付き>>続きを読む

ザ・メニュー(2022年製作の映画)

3.8

キャスティングの妙。ありきたりなジャンル映画のB級プログラムを、レイフ・ファインズの品格とアニャ・テイラー=ジョイの眼差しがウェルメイドな一流コースメニューへと仕立てあげる。古典ミステリーのような深い>>続きを読む

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019年製作の映画)

3.6

大義に人生を捧げるか、否か。先人たちの葛藤を軽やかに止揚し、そのどちらでもない選択肢を生きようとする新世代ヒーローのあっぱれ。自己犠牲なる病から完全に解放されたかに見える明朗快活な青年と、愉快な仲間た>>続きを読む

ロスト・アイズ(2010年製作の映画)

3.3

『ロスト・ボディ』からの『ロスト・アイズ』。主演女優つながりで、共にスパニッシュ・スリラーの良作。

盲目のヒロインというある種の定型に加え、進行性の病に侵されていく不安感、閉塞感を画面の視野狭窄に表
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アベンジャーズ/エンドゲーム(2019年製作の映画)

4.0

大義をかけた戦いに終止符が打たれることはなく、やはり正義が悪を真に打ち負かすことなどあり得ない。敵を滅ぼすことでしか勝利できないゲームのもとでは、闇に光を当て、光は影を落とす、その繰り返しでしかない。>>続きを読む

元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件(2020年製作の映画)

3.2

高所、閉所恐怖症的な圧迫感と何かしらのトラウマ的残像が呼び起こされる悪夢のワンシチュエーション。動悸、息切れ、この胸の高鳴りは吊り橋効果どころの騒ぎじゃ済まない、ヒコーキ墜落5秒前……。

おもしろ邦
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ホラーマニアvs5人のシリアルキラー(2020年製作の映画)

2.9

一夜の巻き込まれ型サスペンス、っていうか自ら巻き込まれていくスタイル。ゴアとロマンを詰め込んだ、映画オタクの悪夢的妄想。80sジャーロへの郷愁だとすれば、ギラギラ照明や音楽の意匠に限らず、恐怖がコメデ>>続きを読む

キャプテン・マーベル(2019年製作の映画)

3.7

出しゃばるな。感情的になるな──。など、差別的なつもりでなくとも社会規範の如く内面化してしまってきた抑圧、女はかくあるべしという刷り込みをことごとく覆していくグランジガール。怪訝なまなざしを向ける群衆>>続きを読む

アントマン&ワスプ(2018年製作の映画)

3.3

超ヘビー級のアベンジャーズ最終章を繋ぐ箸休めとして、実に小気味よくヘルシーなアクションコメディの“小品”。ミニミニ大作戦。正義を謳うがゆえの闘争もなく、親子愛を軸に誰も悪者にしない牧歌的かつ、ヒーロー>>続きを読む

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

最大多数の利益のためなら、多少の犠牲はやむを得ない。救済の名を借り大量虐殺を正当化する。それも一つの正義、あわや“一理ある”と思わせかねない合理主義的なリアリティの化身。その普遍的かつ極めて同時代的な>>続きを読む

マイティ・ソー バトルロイヤル(2017年製作の映画)

3.1

マーベル印のコメディタッチに輪をかけてオフビートなタイカ・ワイティティのギャグセンス、キャスト陣の内輪ノリに全くついていけず、ただ「移民の歌」がけたたましく鳴り響く神々の戯れを冷めた目で傍観する。
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シャークネード(2013年製作の映画)

2.6

かくも人の命は軽く、サメは空を飛ぶ。CGは安っぽく、カットが前後で繋がらない云々はまるでエド・ウッド的な荒唐無稽(ちがうか)、しかしながら映画愛という事ですべては許されるべく現実逃避に興ずる。ついに来>>続きを読む

ミッドナイト・ミート・トレイン(2008年製作の映画)

3.3

ジャパニーズケレンに溢れるスプラッターがシリアルキラーを経由し、オカルティックな怪物ホラーへと終着する珍作。

北村龍平のハリウッドデビュー作はクライヴ・バーカーの短編より。そのタイトルに偽りなき奇観
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フォーエバー・パージ(2021年製作の映画)

3.2

ネオナチはゾンビのごとく。あるいはマッドマックス的終末世界にヒャッハーするならず者たちの暴動が、あの議会襲撃事件のそれと重なる。第一作のシチュエーションホラーより飛躍的にスケールを拡大し、およそ十年と>>続きを読む

パージ:エクスペリメント(2018年製作の映画)

2.9

本来、政府へと向かうべき不満をさらなる貧者、弱者に向けては自らの安泰を死守しようとする。怒りの声さえ懐柔され、権力に飼い慣らされた奴隷たちのサーカスを上流市民はせせら笑う。その搾取構造をあらわに、ブラ>>続きを読む

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)

4.0

家族とて他人。他人同士、分かり合うことはないと割り切ろうにも、やはりどうしても諦め切れない親子、兄弟という特別な絆、あるいは呪縛。一人ぼっちよりも独りの孤独に苛まれる。聞いているようで何も聞こえていな>>続きを読む

沈黙(1962年製作の映画)

4.0

「神の沈黙三部作」の最終編として括られるが、それはベルイマン作品に通底するテーマのようにも思える。愛を巡る欲望と理性の相克。神なき世界に彷徨う人間の悲劇を、光と影、音楽と沈黙の甘美なる調和に紡ぎ上げる>>続きを読む

皆さま、ごきげんよう(2015年製作の映画)

3.1

強靭な人間愛に支えられたブラックユーモア、その聡明なる視座を持ちえない己の未熟さを認めざるをえない。脈略のない不条理劇をただただシュールと受け流すことしかできない見識の狭さ、人生経験の薄さを顧みると共>>続きを読む

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)

3.7

ジャンプ的少年漫画のメソッドに加え、正義の闘争にアメコミ的ブロマンスを匂わせる、まさにサンプリング時代の決定版ともいえるバトルアニメの劇場版。「正しい死」へ向かう物語の前日譚。愛と呪いの、否、愛という>>続きを読む

ピーターラビット2/バーナバスの誘惑(2020年製作の映画)

2.9

原作の持つ“残酷性”をバイオレンスに振り切って再解釈し、大人の観客をも熱狂と笑いの渦に巻き込んだアクションエンターテインメントの続編としては、ややハートフルに寄りすぎる。新たにワイスピばりのケイパーア>>続きを読む