経年変化さんの映画レビュー・感想・評価

経年変化

経年変化

夏の庭 The Friends 4Kリマスター版(1994年製作の映画)

3.8

死を間近で見つめることで逆説的に生のあり方を学ぶ。通過儀礼として二度とやってこない貴重なひと夏の経験。坂井泉水の歌声がこれまたピッタリで

アンデッド/愛しき者の不在(2024年製作の映画)

3.8

ウォーキング·デッド前夜。北欧らしいサウンドデザイン。各々が各々の生活圏で目の前の不可思議に直面。半ば空想的な叙述から突如リアルホラーじみた様相へと舵を切る温度変化を体感。「生」を放棄しかけていた者が>>続きを読む

オオカミの家(2018年製作の映画)

4.2

え、こわっ…が観終わってすぐの感想。表現の限界値を軽く突破してしまっている。手作業に対するリスペクトを加味して。

ストップモーション(2023年製作の映画)

3.8

後半ドライブがかかり巻き返す。高橋洋が脚本書いてんのかと思った。精神衛生上よろしくないししばらく肉は食べたくない。一旦シュヴァンクマイエルの『肉片の恋』でも観て落ち着こうと思います

ザ・リッツ(1976年製作の映画)

3.2

ハチャメチャが押し寄せ続ける90分。ドリフばりの声量と運動量に胃もたれしちゃうんだけど、最後にちゃんと雨はあがるもんだからなんだか壮大なものを観た気がしてならない

サム·フリークス Vol.30

カブーン!(2010年製作の映画)

4.4

グレッグ·アラキがツイン·ピークスのようなものをやろうとすると我々はとんでもない地平へと連れ去られてしまう。この厨ニ臭さはもはやご褒美でしかない。鮮やかに表題を回収してみせるラスト。抱腹絶倒!

サム
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(2025年製作の映画)

3.8

諦観の境地に達した老齢の男。それでも尚心底に欲は潜む。モノクロームの中でのそのコントラストは控えめながらも鮮烈。「その時」は徐々にはやってこない。突然やってくる。示唆に富んだ余白に我が人生の今後を憂う

アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方(2024年製作の映画)

3.8

ジェレミー·ストロングのための映画。ロイ·コーンの凋落とともに作品の強度が落ちていくのは否めないが、もはやトランプにしか見えなくなってくる最終盤のセバスチャン·スタンの佇まいが素晴らしいのなんの。「ハ>>続きを読む

デリカテッセン 4Kレストア版(1991年製作の映画)

4.0

紛争後の荒廃した近未来、カニバリズムをこんなにも軽妙で諧謔精神たっぷりに。相変わらずヘンテコ映画だけど初期ジュネの脳みそはやっぱり貴重。『エイリアン4』の水モチーフは既にこの頃から。

花の兄弟(1961年製作の映画)

3.8

こういうのでいいんだよってなる時代劇。橋幸夫との関係性がスイッチしてしまう可笑しさ、これが徐々にあるべき姿へとおさまっていく顛末の胸がすくような爽快さ。

市川雷蔵映画祭

陸軍中野学校 4K デジタル修復版(1966年製作の映画)

3.8

刀持っててやるから刺さりに来いっていうくだりの圧力。正気の沙汰ではない。

市川雷蔵映画祭

好色一代男(1961年製作の映画)

3.6

中村玉緒がニヤッと笑うところがほんと怖い。寝られなくなるやつ。

市川雷蔵映画祭

お嬢吉三(1959年製作の映画)

3.8

女装雷蔵のすね毛!バケモノ呼ばわりされてて吹き出してしまった。サクサク進んで観やすい一本。

市川雷蔵映画祭

薄桜記 4K デジタル修復版(1959年製作の映画)

4.2

これは絶品のカツライス。「運命」という言葉が幾度も脳裏をかすめる。最終盤の各々の立ち回りに咽び泣き。片腕片脚の殺陣は初めて観たかも。伊藤大輔に感謝。

市川雷蔵映画祭

ひとり狼(1968年製作の映画)

4.0

品のある所作、雪の雷蔵が沁みる。これだから股旅映画はたまらない。

市川雷蔵映画祭

ある殺し屋(1967年製作の映画)

3.8

し、渋い…。暗殺の手際の良さにちびる。ラストも男前。

市川雷蔵映画祭

忍びの者(1962年製作の映画)

3.4

伊藤雄之助劇場。「貴様は私の妻を盗んだではないか」には思わず笑ってしまった。濃厚。

市川雷蔵映画祭

濡れ髪牡丹(1961年製作の映画)

3.8

動ける大女優京マチ子の殺陣みたさに。俯瞰傘と共に剛柔自在の立ち振舞いを堪能。一生ポジティブ思考な胡散臭い雷蔵とのバランスも楽しい。流れ三つ星登場のBGMがジワる。

市川雷蔵映画祭

ブラックバード、ブラックベリー、私は私。/ブラックバード、ブラックバード、ブラックベリー(2023年製作の映画)

4.2

「死」をにおわせるところから始まり「生」をにおわせるところで終わる。あんなにも無表情だった女性が堰を切ったように感情を露わにする。まるで心象風景のように雨が叙述の一端を担う。美しい「孤独」があるという>>続きを読む

型破りな教室(2023年製作の映画)

3.6

取り巻く環境によっては爪弾きにされてしまう生徒も存在することを描く、これは教育だけでなく映画に対する誠実さと受け取る。序盤はクラス全体を対象としていたもののいつしか特定の生徒だけに重きを置く様になって>>続きを読む

レッド・サン 4Kデジタルリマスター版(1971年製作の映画)

3.8

荒野と侍の画ヅラには面食らったが反目し合っていた二人の異種共闘はさすがに高揚する。ラストがおしゃれ

ペパーミントソーダ 4K修復版(1977年製作の映画)

4.2

ただただ芳醇。まるで映像ダイアリーのように点描される日々、カプセル化されたそれらを観察しつつその先への想いを馳せずにはいられない。10代における2歳差がいかに大きかったか、その追憶に耽る

いつも明日はある/明日は必ず来る(1955年製作の映画)

4.4

ともすれば空中分解の危うさすらあった家族の転換点。皆でパパを邪険にするからこうなったんだ!という予防線を機能させる事でほんの少し憐憫を催させるギリグレーな状況作りが巧妙。嵐のように現れて嵐のように去る>>続きを読む

奇蹟(1951年製作の映画)

3.2

起伏の少ない作劇がやや眠気を誘うものの耐えた先でご褒美のような奇蹟が拝める

銀心中(1956年製作の映画)

4.0

揺蕩する乙羽信子の悩ましい姿態が出色。愛すらも引き裂かんとする戦争の不条理は『ひまわり』や『ある愛の風景』とも通底し気鬱にさせるのだけど、この破滅的ラストは格別美しい

大雷雨(1941年製作の映画)

4.2

アクションとメロドラマの塩梅が素晴らしい。空から降りしきる雨、鉄塔をよじ登るEGロビンソン、暫しの横移動、落下するロビンソン。この流れに隙は無い。やっぱりウォルシュはアクションのひとだ

虎鮫(1932年製作の映画)

3.8

『バーバリー·コースト』同様、男の悲哀を纏わせたらEGロビンソンの右に出る者は居ない

太陽と桃の歌(2022年製作の映画)

4.4

小さな共同体、職業俳優を起用せず、言葉の熱量、切り貼りされたシークエンス、いつの間にかワイズマンあたりの長尺ドキュメンタリーを観ている感覚に陥っていた。勿論歓迎の意味で。あくまでも家族の座標を示すにと>>続きを読む

ホワイトバード はじまりのワンダー(2024年製作の映画)

4.2

師から薫陶を受けたかの様に気が引き締まる。食い気味「イエス」の返答に全俺が泣いた。「人間万歳」

お坊さまと鉄砲(2023年製作の映画)

4.2

銃という物騒なモチーフに一体どの様な意味を持たせるのか、この一点で最後まで引っ張ってしまう脚本が巧み。自由と民主主義の国アメリカ人のドンマイな顛末もちゃんと設計済み。それでいてこの清涼感。今の世界には>>続きを読む

満ち足りた家族(2024年製作の映画)

3.8

不穏、不愉快、滑稽、痛快。物語の特性上、空間は常に閉塞的で不健全、徐々に赤裸々になっていく家族のある意味純粋な姿。突然の悪夢的結末には思わず「なんの因果だよ…」と。年の暮れにこんな映画観るもんじゃない>>続きを読む

ザ・コンダクター(1980年製作の映画)

3.4

音への嫉妬という観点は興味深い。半ば会話劇でもあるので翻訳で損をしている印象

夜のまにまに(2023年製作の映画)

4.0

ずっとそこに滞留していた節さえある日常系ながら、走るというアクションが駆動力となってほんの少しだけ関係性が変容するという建て付け、その反復の緩さがなかなか好み。健康的すぎる山本奈衣瑠が間違いなく映画を>>続きを読む

陪審員2番(2024年製作の映画)

3.8

複層的な語り口はイーストウッドの真骨頂だし、最初にどかんと一発提示して、それに対して各々が逡巡する姿をシンプルに煮詰めていくというアプローチに好感。うーん、手練。でもやっぱりこんな偶然あるわけ…