経年変化さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

フリーク・オルランド(1981年製作の映画)

3.8

混沌に順応した先に悦楽が待っている。悲劇は悲劇たりえてこそ不変の愛は顕現する。永遠の聖性すらも。シュリンゲンズィーフに薫陶を与えたと勝手に思い込んでます。おんどりなかなか飛んでいかないのジワる笑

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

4.4

ルーカス・ドンは今作においても被写体の身体性が作品そのものを底上げするということを信じてやまない。彼等の運動を一貫した距離で活写しつつ、移ろう表情と感情を掬い漏らさない。多くは明示しない。レオは最後に>>続きを読む

サントメール ある被告(2022年製作の映画)

3.8

男性の入り込む余地があまりにも少ないので進行と共に居場所を失ってしまいそうになった。とは言えソリッドな演出がところどころ刺さる瞬間もある。パゾリーニ『王女メディア』と主題を共有せんばかりに画面を往来す>>続きを読む

ノクターン(1980年製作の映画)

3.8

ここから1本の長編が撮れるんじゃないかってくらいの世界観。以降の作品への兆しともとれる色調操作も大歓迎

ボス・オブ・イット・オール(2006年製作の映画)

4.0

役者という職業にフォーカスして着地しつつちゃんと不快で笑えるのさすがなんですけど

遠いところ(2022年製作の映画)

3.4

社会の表層から一歩深いところへと切り込んではいるものの上品なカメラ捌きはあまりにも不釣り合い。もっと猥雑な画面を期待してた。紋切り型の悪循環を散りばめて憐憫の情を催させる姿勢にも鼻白む。主演女性の吸引>>続きを読む

小説家の映画(2022年製作の映画)

3.2

映画内映画のエンクレ出た瞬間に帰ってった人がいて「わかる笑」ってなった。さらばの花田優一イントロドンが好きなので是非ホン・サンスver.を

ヴィレッジ(2023年製作の映画)

3.2

韓国映画でもリメイクしたんかってぐらいの既視感がずっと付きまとってたもんで早い段階で興を削がれた形。山の上に静かに鎮座する処理施設のエロさはなかなかでしたけど

ちひろさん(2023年製作の映画)

3.6

当然宙吊りとなる街の人々。おそらくは次の街でも。主人公の轍がこれからも私を肯定してくれる。どんなにクズな人生でもいいから弁当を綺麗にたいらげられる人間でありたい

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.4

おいおいおいおいおいおいおいおいおいこんなに贅沢な前編がありますかって話ですよ…

スーツ(2003年製作の映画)

3.4

表題となっている高級スーツが思いのほか物語に貢献してこないところを見てひたすらに世知辛さを痛感。それでも決して心を凍らせないのがフドイナザーロフのマジック。ただもう少し編集にキレがあれば…なんて思いな>>続きを読む

世界が引き裂かれる時/クロンダイク(2022年製作の映画)

4.4

ウクライナ版『みかんの丘』の様相。被写体の横移動やカメラのパンが空間の広がりを強調させる一方で、肥沃な大地で繰り返される不毛な殺生への声なき叫びが終始反響。希望の象徴となるべきラストシーンが受難の始ま>>続きを読む

マリとユリ(1977年製作の映画)

4.0

まだまだ苦難アリな道程が予想されるけど決してそれを無かった事にはしない誠実さに射抜かれる。賢者タイム入った旦那の脇で虚ろに横たわり続ける姿にもびっくりするけどやっぱり料理中の卵ぶん投げるくだりは予告編>>続きを読む

逃げきれた夢(2023年製作の映画)

4.0

ATMとして稼働しながら取り繕うことで自我を保ってきた男の気づきの連続。対話の温度差とカメラの切り返しが残酷なほどに呼応する。自身が周囲にかけてきた類いの言葉を旧友から大いなる温もりと共にかけられ、元>>続きを読む

脱獄者の秘密(1951年製作の映画)

4.0

銃を持たない男たち×銃を持つ女たちというシンプルな構図に始まって、各々の機微を炙り出しながら徐々にそれが変容していく過程に息を呑む。ラストの墓の数に思わず唸ってしまった。エセル・バリモア最強説

セクシー・ビースト(2000年製作の映画)

4.0

レイ・ウィンストンの精神摩耗っぷりがドンマイとしか言いようがない。トム・サイズモアでも良い画になりそう。これでもかってくらい人と人の映画。ミニマルな90年代っぽい空気が好み

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.6

提示される断片のみから推し量らねばならないうえでその情報量がなんたって絶妙。両者のこれからの人生のコントラストが強烈すぎて観てるこっちが咽び泣きたくなってくる。あの日湖の上で交わされた何気ない言葉が、>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.0

だいぶ期待値を上げて臨んだにもかかわらずそれを越えてくれた。ちゃんと抉ってくるし、ちゃんと包んでくれる。人物造形とレトリックの相互作用による映画的興奮。坂本龍一の援護射撃がとても、とても、優しかった

雨にぬれた舗道(1969年製作の映画)

4.6

ジャンヌ・ディエルマンと対置される饒舌さに起因した妄執が最初から最後までホラーじみてて多分1回もまばたきしないで観てた。実質ずっとセックス映画。演者に絶妙なラインを右往左往させるアルトマンの変態性炸裂

海を待ちながら(2012年製作の映画)

3.6

世界が急速に歴史を刻み続けるなかで土着的かつ寓話然とした叙述は、フドイナザーロフはやっぱり最後までフドイナザーロフであったと再認識させてくれる

ニル・バイ・マウス(1997年製作の映画)

4.2

カサヴェテスへの目配せが過ぎるがゆえに没個性的な印象も受けたけど目撃してきた人間にしか撮れない日常がそこにあったのも事実なわけで自分としてはそちらに重きを置きたい。『アウト・オブ・ブルー』に出てきても>>続きを読む

波紋(2023年製作の映画)

4.0

他者への献身によって僥倖を得ていく姿がとりわけ辛辣でよかった。光石研のクズっぷりが先行しがちな描写だけども、自分からすれば登場人物ほぼ全員クズ。チャカの出てこないアウトレイジみたいなもんだと思いながら>>続きを読む

ナイン・マンス(1976年製作の映画)

4.0

父権主義を具現化した様なヤン・ノヴィツキのパフォーマンスがなかなか振り切っててすごい。『砂時計』でも思ったけどやっぱりロイ・シャイダーに似てる笑。観る者を終始鼓吹するリリ・モノリの「恥じていないだけ」>>続きを読む

ふたりの女、ひとつの宿命(1980年製作の映画)

3.8

ダイアリー形式で省略を恐れずに紡いでみせる野心に慄く。インサートされるアーカイブ映像とカラスの群れがおおよその終着点を想像させ続け不穏極まりない。絶望を宣告する赤ん坊の産声

アダプション/ある母と娘の記録(1975年製作の映画)

4.0

まるで『不良少女モニカ』の前日譚のような。初対面で家に上がり込んでみたり不倫相手を家族に紹介してみたりといったパーソナルスペースの侵食っぷり。50年を経て結婚や子供を持つ事への価値基準を揺さぶってきつ>>続きを読む

ワイルド・スピード/ファイヤーブースト(2023年製作の映画)

4.0

冒頭の回想ブライアンで爆泣。終盤のサプライズ登場2連発で思わず変な声出してしまった。まさにお祭り騒ぎ。残すは1作か、2作かが気になって夜しか眠れない

人間狩り(1962年製作の映画)

3.8

みんな顔面の圧がすごい。ラストのホームで各々が「自分が一番良い顔してるだろ?」みたいな演技の応酬たまんない。その直後に小沢栄太郎のしたり顔!

南極物語(1983年製作の映画)

2.0

ラストシーンが先行して美談みたいなってるけど個人的にはなかなかの鬱映画。免罪符を得ようとするかの様な贖罪行脚もキツい。2匹を剥製にするところまでやったらよかったのに