ナントのロワ・アルベール通りでのストライキ。赤いガウンを羽織るダリューは通り沿いのアパートからその様子を見下ろしている。愛を知らないくせにと娘に罵られるもその視線は優しい。労働者の服は青。ピコリ一人の>>続きを読む
トー横キッズに重なる物語。ふんわりピレネーの田舎からパリへ上京。芝居が好きでもないのにふんわり演劇学校に行って何も理解できずにドロップアウト。親子ほど年の離れた看護師エレーヌ・ヴァンサンと肉体関係。病>>続きを読む
ピアラによる『大人は判ってくれない』オマージュ。新しい里親先で悪童仲間に押されて転倒、怪我したまま傷口を押さえ採石場の斜面を駆け降りるドリーがある。
いきなり里親に切られてしまう絶望。突発的な素行不良>>続きを読む
物で溢れて水道・電気が完備されると諍いが起こる字幕なしサイレントの極北。扇風機や掃除機の騒音がアパートの住民をノイローゼにする。各々部屋で家電を愛でるシーンはリンチみたいに不可解。停電によって一瞬目が>>続きを読む
原題は『地獄の中にある安全』。つまり死刑執行人という絶対的権力に魂を売らずに死を選ぶ、自らの死を賭して恋人を守るも、それ自体は伏せられるロン・チェイニー的な自己犠牲メロドラマ。もう一つのテーマは「退屈>>続きを読む
フォーディズムの到来によって多忙な毎日を送る女社長チャタートン。その疲れを癒すため社員をナンパしては『上海リル』のレコード流し翌日甘えてくる男に落胆している。その連続によって彼女の心はどんどん冷めてい>>続きを読む
フォード常連マクドナルドがベネットの父として姉バーンズの結婚式で第四の壁を破って話しかけてくる結婚披露宴の打ち上げシーンが2回もある。半身不随のウォールソールが瞬きで送るモールス信号。姉バーンズと弟ウ>>続きを読む
フランス亡命期のシオドマク。かつて栄華を誇ったデザイナーであるシュトロハイムが『キング・オブ・コント』よろしく自分のデザインしたドレスについて無人の椅子に向かって饒舌になる。そして自ら放火!リメイクさ>>続きを読む
ウォーケンの語るブッチの曾祖父の金時計はアメリカの戦争の歴史を経験してきた象徴でもある。第一次大戦、第二次大戦、ベトナム戦争を経て、父は尻の穴に入れて保管する。そんな形見をわざわざギャング達の見張る自>>続きを読む
ピグマリオン的な愛し方しかできない男たちにブチ切れて自分を象った彫刻をハンマーで粉々にするディートリヒに否が応でもアガる!凛色家の叔母とか嫉妬深いシュワルツェネッガーと名乗る女執事などキャラのクセがす>>続きを読む
甘んじて現状追認し続ける人々。どれだけ私的な感情よりも公的な規律が重要なのか無理やり口に出しても納得できずメンタルが死んでいく。家族にここぞという場面で絶縁される。ファスビンダーは誰にだって期待しては>>続きを読む
アリアドネ(ペイジ)を狂言回しにして、コブ(ディカプリオ)の内面に巣食うモル(コティヤール)の虚像に虐まれる様をまざまざと見せつけられる。モルが心を金庫に閉じ込める過程は一切描かれないくせに、「この世>>続きを読む
内田良平と成田空港建設予定地(スナックの建設予定地でもある)にて枝で描いた土俵を中心に相撲をとるシーンで泣けた。何だかんだで父親を愛していた豊。市原悦子はやり過ぎだけど『不意打ち』のデ・ハヴィランドの>>続きを読む
犯罪組織と刑務所の癒着がどこまで行き渡っているか不明瞭のままシステムとして逃走劇を拵える底の見えない恐ろしさ。裏切り者だと扇動されて冤罪のまま移送される。慕われていた人間の没落していく様が哀れである。>>続きを読む
カサヴェテス『アメリカの影』の長兄ヒュー・ハードが大島渚作品に内面の描かれない捕虜として出演している。その経緯を知りたい。弔いなき土葬のために村人総出で土を撒く手の描写がとにかく長い。すべての諍いを黒>>続きを読む
不具のヴェロニク・シルヴェールが誘う物語。その恋に生存できるか否か。公衆の面前で平手打ちするドパルデューに目も当てられないが、それ以上にアルダンの恋の病がもたらす2度目の発作は致命的。手首の傷によって>>続きを読む
ギアは様々な人と交流し街を徘徊するけれど、ひとり床に就く。その孤独なベッドの壁はどこまでも薄い。壁紙の柄にズームインする場面で、元恋人が住んでいたアパート玄関の扉を思い出してグッときた。誠意はないけど>>続きを読む
中絶を巡るアメリカの歴史を辿るオムニバス映画。pro-life的法制定が戻りつつある2020年代においても見返されるべき作品。ムーアに施術する50年代の違法中絶人が恐ろしい。医療器具の冷たい触感。『夜>>続きを読む
パリに亡命したキューバの詩人であり作家、文芸評論家であるセヴェロ・サルデゥイの作品『Barroco(邦題:歪んだ真珠 バロックのコスモロジー)』(1974年)から映画のタイトルを取ったらしい。監督はル>>続きを読む
エクストリーム女優ウィザースプーン、アレクサンダー・ペイン監督『Election』ではエクストリーム優等生、こちらは非行少女!連続殺人鬼に追われるも両親も学校も刑務所、もれなく社会がクソなので自分で解>>続きを読む
大島渚という監督が唯一無二の監督だと改めて実感。政治的な瞬間ばかりなのに、説明ではなくショットそのものの力(主題性)によって強引に脳内に流れ込む映像。
冒頭は手持ちカメラによるドキュメンタリー風だが>>続きを読む
ケントにあるハーン・ベイの桟橋は1978年に解体されて半分の長さになったそうです。マグナム所属の写真家デイヴィッド・ハーンの奥さんになったアリタ・ノートンは今作のみで歴史に名を残す。プロデューサーのケ>>続きを読む
DVジゴロなボワイエ演じるリリオム。冗長なメロドラマが続くかと思いきや、『M』の風船売りと重なる刃物行商の守護天使の不穏な通過から一点、凄まじい速度で自分の胸を一突きして絶命するリリオム。そこからスキ>>続きを読む
特別な感情はあっという間に過ぎ去り老いを実感するまで儚い夢。恋人を妹にあてがう姉。ピューリタンな妹による幼い同性愛的ペッティングと自慰の告白に驚く。嘔吐→眩暈→後頭部打撲→姉の駆け寄りはゴダール的繋ぎ>>続きを読む
ここに来てVシネ時代の悪意を伝播させるキレキレの映画を連発する黒沢清恐るべし。何かが少しずつ狂っていく。その不快なズレを存分に楽しめます。整合性のない強烈なシーンのあとに何事もなかったように回帰する日>>続きを読む
【原題:Un pincement au cœur=胸が締めつけられるような苦しみ】その原因、リンダが他者を拒絶に至る過程は語られない。
バートンとギールグッドをミッキー・ルーニーに演技を習ったと嘯くリズが繋ぐ世界線が素晴らしい。マーロンは散々こき下ろされていたが、数年後には『禁じられた情事の森』で共演。動機ときっかけ、その解釈の一致さ>>続きを読む
上京物語の始まりは上野駅の京成聚楽から。ひとり上野公園で決意を固めた早智子のいる画面に侵入してくる柳谷寛。最初から不穏。白金にある女給文化を鮮明に映し出す。今のコンカフェと地続き。秋子と富士子の百合ダ>>続きを読む
日本版マッドメンとかいうと大袈裟だけど、エリザベス・モス=司葉子。アートディレクターはまさかの浜村純。この物語を牽引する裏切り。
御茶ノ水駅付近、一夜を共にした宝田明と淡路坂の頂で別れる。彼女の背後>>続きを読む
カリフォルニア州モントレー湾はかつてCannery Rowと呼ばれアメリカ有数の缶詰工場地帯だった。メインストリートにはSan Xaxier Fish Packing Companyの文字。50年代に>>続きを読む
誰かが発話している最中、画面に映る聞いている人物が棒立ちでプルプル震えている。その持て余した間に耐えられない。ヒモ男のtypicalなクズ演技と掴みかかる同僚にドン引きする磯村勇斗の顔。とにかくセリフ>>続きを読む
現代の寓話。彼岸と此岸を繋ぐ糸みたいな象徴が散りばめられたとしても、あからさまなメタファーに落とし込むこと自体に辟易していては何ともざっくりしたレビューしか残せない。枯渇した感受性を潤すためには、鑑賞>>続きを読む
鏡の中の虚像にピントが合い、手前の実像はボヤけ影が落ちる。その深い皺が白塗りの虚像と二つに分かれる。それを捉えるカメラとの緊張関係。花をばら撒き拾う挙動。去っていく背中は後景を背負って舞う大野の象徴。
夜釣りの夫婦の連携。夫が銛を突き、妻が櫂を漕ぐ。符牒によって無駄なく魚を捕らえる。その反復・同期した動きに感動。砂連尾理さんの指摘する「脱力した身体」。
ヒューストン監督は自分で自分を埋葬する。パーティー後の寂寥感。テナーの歌声が画面の外から漏れ出て、初恋の人を忘れられぬアンジェリカ・ヒューストンと上辺だけのドナルド・マッキャン交わらぬ視線。
予想は上回らないけど信者を生み出したことは確かなのだろう。アンニュイなマーロンは及第点。怒るる若者というよりシラケ世代。もちろん旧世代によるリンチの方が怖いんだけど。海賊みたいな格好のリー・マーヴィン>>続きを読む