Rickさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

ブラインドスポッティング(2018年製作の映画)

4.8

 例えば同じ人を見ていたとしても、見る人によってその人物像は大きく異なる。例えば同じ街に住んでいても、見える景色は全く違う。無意識のうちに、自分のカテゴリーやアイデンティティによって作り出した色眼鏡を>>続きを読む

街の上で(2019年製作の映画)

5.0

 映画には完璧な時間が詰まっているものだと無意識に思っていた。状況を伝えるためのセリフ、一言たりとも間違いのない完璧な会話、心情を伝えるための風景や天気。監督を筆頭に沢山の人が関わって、世界をいちから>>続きを読む

愛がなんだ(2018年製作の映画)

4.3

 愛ってなんだ。好きってなんだ。別にそんなことを考えなくたって、上手く相手と社会的な「契約」を結んで、どこから見ても「普通」な恋愛関係を築く人もいる。けれども、他者との関係性を築いていく段階で、何かに>>続きを読む

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)

3.8

 あまりにも不器用に進化してしまい、自分はきっと生存競争には生き残れないだろう。そんな陰鬱とした思いを抱えたことは、星の数ほどある。閉じた世界の中ならば、好きだった人だってあの頃の様に、美しく、ミステ>>続きを読む

HELLO WORLD(2019年製作の映画)

3.4

「君の名は。」以降、げんなりするほど粗製濫造されてきた時間を隔てた男女の不思議でちょっと切ない恋物語的セカイ系と思ってスルーしていたが、一応脚本が野崎まどなだけあって、少しだけ他作品とは異なり凝っ>>続きを読む

エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ(2018年製作の映画)

4.1

 ミドルスクールの8年生。キラキラした高校生にあと一歩。周りは幼く馬鹿な男子たちと、高校生のフリしたおませな女子たちばかり。数年前には世界一クールになれると信じていたのに、現実は世界一無口賞をもらう始>>続きを読む

空の青さを知る人よ(2019年製作の映画)

3.5

 山に囲まれた盆地から見た空は、あまりにも綺麗な青だった。「井の中の蛙大海を知らず」。この諺の続きは、出典すらもよくわからないまゆつばなものだが、一度井戸の外に出てしまった人たちが若すぎた日々を、苦い>>続きを読む

シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

4.2

 生まれてこの方、エヴァとの向き合い方が分からなかった。好きや嫌いで表せたり、無関心でいられたならば楽だっただろう。しかし自分の育った環境ではそれが難しかった。実家には父の集めたガンプラの横に、第三使>>続きを読む

おちをつけなんせ(2019年製作の映画)

3.7

 決して天気がいいわけではない冬の若干寂しげな遠野の風景の中に赤が映える。巻いているマフラーの赤、消火栓を知らせる看板の赤、鳥居の赤。比較的、左右対称が意識された画面の中にふと差し込まれる赤の色がアク>>続きを読む

私をくいとめて(2020年製作の映画)

5.0

 世界で最も身近な他者で、他者の癖に誰よりも干渉してくるし、誰よりも自分のことをわかってくれる存在がいる。そいつのことを人は、「自意識」や「理性」なんて呼ぶ。基本的には人生の選択において最適解を導き出>>続きを読む

JUNK HEAD(2017年製作の映画)

3.9

 2時間近く、何かとんでもないものを見てしまったと言う感覚に支配される。意味がありそうで無さそうで、でも少しだけ解読できそうな未知の言語の海に溺れ、ストップモーションであることをしばしば忘れるような画>>続きを読む

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド(2018年製作の映画)

4.4

 彼らは決して色も音もない世界に生きていたのではない。少し早回し気味で、ざらついた、所々傷のあるコマ送りの世界に生きていたのではない。今となにも変わらない、色があり匂いがあり音があり、喜怒哀楽があり、>>続きを読む

ゲット・アウト(2017年製作の映画)

4.1

 アメリカ北部のポンタコ湖の辺りにある大層立派な別荘に、オバマ大統領に票を入れる様なリベラルで知的な白人夫婦が住んでいて、そこの使用人が全員黒人だったとしたら...これほど違和感のある舞台立ては、なか>>続きを読む

明日への地図を探して(2020年製作の映画)

4.4

 全く同じ1日を何度も繰り返すタイムリープ。誰が何を言うか、誰がどんなハプニングを起こすか、何回も繰り返すうちに完全に覚えてしまって、ある種の全能の神になったかの様な気がすることだろう。物語でよくある>>続きを読む

透明人間(2019年製作の映画)

4.2

 同棲パートナーからの束縛、DV、性的暴行は、被害者に重大なトラウマを残す。たとえその状況から抜け出せたとしても、怯えて暮らさざるを得なくなるほどに。けれども精神的な重みを当事者以外に共有することは難>>続きを読む

幸せへのまわり道(2019年製作の映画)

4.8

 感情に適切な言葉を与えて、それを表出することには、とてつもないエネルギーを使うし、痛みも伴う。自分と真っ向から対峙するのだから、きっとどんな状況よりも怖いに決まっている。「ありのままで」と言う言葉は>>続きを読む

子供はわかってあげない(2020年製作の映画)

3.7

 人は教わったことなら教えられる。川上から川下へ水が流れていくように、先人から渡されたものを後の世代へ受け渡す。生まれながらにして知らず知らずのうちに組み込まれたバケツリレーの中で、自分の番が回ってき>>続きを読む

mellow(2020年製作の映画)

3.7

 好きになった人に想いを伝えること、それは突き詰めてしまうとエゴでしかない。相手の事情や感情もそっちのけで、「好きです、付き合ってください」なんて。別に好意を向けられること自体が嫌でなくとも、「ありが>>続きを読む

ブレッドウィナー/生きのびるために(2017年製作の映画)

4.3

2001年、タリバン政権下のアフガニスタン。女性はひとりで外出することも能わず、見つかれば責められ暴行を加えられ、学があることさえ批判の対象となる。物語を紡ぐことが何よりも好きなパヴァーナ一家の生活は>>続きを読む

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

4.7

 自分の似姿に出会って、何かが始まる予感がして、そして実際に始まって。心の形が完全にぴったりハマって、他の人とは違う、自分達だけが共有できるような好きなものがある。それぞれの花を持ち寄って、眩しく美し>>続きを読む

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~(2019年製作の映画)

4.3

 様々な音に囲まれた世界で、常に何かに依存して生きることは安心できることかも知れない。自分の力で、自分と向き合う必要はないから。でもそのぬるま湯めいた関係性も、唐突に、そして永遠に変わってしまうことが>>続きを読む

あの夜、マイアミで(2020年製作の映画)

4.8

 1964年2月、ボクサーのカシアス・クレイが「蝶のように舞い、蜂のように刺し」てチャンピオンになった日のこと。それを祝うためにマイアミのモーテルの一室に、カシアス、マルコムX、ジム・ブラウン、サム・>>続きを読む

ヴァスト・オブ・ナイト(2019年製作の映画)

4.0

 1950年代のSFテレビシリーズ『トワイライトゾーン』への愛をふんだんに散りばめた、かなり不思議で奇妙、不気味でなんとも言えない余韻を残す作品。80年代リバイバルの流れで、楽しくてスッキリするジュブ>>続きを読む

盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~(2018年製作の映画)

3.8

 自分の「芸術」のために盲目のふりをしているピアニストが、ある日殺人現場を目撃してしまい...。という「暗くなるまで待って」や「見えない目撃者」的な設定からかなりツイストを効かせている今作は、さらに二>>続きを読む

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)

4.8

 1951年、朝鮮半島が南北に分かれて争っていただけではなく、そこに米ソの思惑が侵入し資本主義VS共産主義の代理戦争となっていた真っ只中。韓国側にあったアメリカが運営する最大規模の収容所・巨済捕虜収容>>続きを読む

劇場版 ハイスクール・フリート(2019年製作の映画)

3.5

 正直なところミリオタでもないし、海戦の細かいところはほとんど理解できていないのだろうが、ストパンやらガルパンやらとある飛空士やらを作ってきた鈴木貴昭が脚本だからか、戦争映画の見せ場的なところをしっか>>続きを読む

EXIT(2019年製作の映画)

5.0

 絶体絶命の状況に於いて、我々は果たして他者のために動けるだろうか。自分だって逃げ出したいし、なんなら我先に救助されたい、そう思いながらも、目の前のより困っている人達のために、手を差し伸べられるだろう>>続きを読む

君と、徒然(2019年製作の映画)

2.8

 百合を題材にする写真家、長谷川圭佑の監督作。アイドル、シンガーソングライター、声優が主演を務める。主演6人中3人が声優なのは、少々不思議なバランス。
 取り敢えず思うのは、「物語性のある写真」と「写
>>続きを読む

ウルフウォーカー(2020年製作の映画)

5.0

 17世紀、アイルランドのキルケニー。イングランドから狼を狩るために、ハンターである父と共にやってきたロビンは、自分も狩りに行きたいと思うも、父親からは家で家事をすることを言いつけられる。「お前のため>>続きを読む

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(2020年製作の映画)

3.9

 もはや説明不要なほどの、あまりの人気かつ社会現象っぷりに、原作ファンでありながらも若干辟易していたが、ようやく重い腰を上げて鑑賞。
 無限列車編の持っている、燃え上がること必至の力強さを改めて再確認
>>続きを読む

声優夫婦の甘くない生活(2019年製作の映画)

4.2

 1990年、ソ連は崩壊寸前、中東は湾岸戦争で不穏な空気が立ち込めているそんな折に、ソ連からユダヤ人の老夫婦がイスラエルへ移住する。ソ連時代には、映画の吹き替えを生業として、仕事に誇りも持っていた2人>>続きを読む

ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒(2019年製作の映画)

4.2

 ヴィクトリア朝時代のイギリス。探検家として名を馳せるべく、UMAを探して世界を駆け巡る紳士サー・ライオネル・フロスト。彼の元に一通の手紙が届いたことで、地球を半周する大冒険が幕を開ける。人類の進化過>>続きを読む

トゥループ・ゼロ~夜空に恋したガールスカウト~(2019年製作の映画)

4.2

 無限に広がる宇宙空間を飛び続ける探査機に搭載されているゴールデンレコード。それは地球の生命や文化を、まだ見ぬ地球外生命体に伝えるためのもの。この地球に我々が存在していることを示すためのもの。そんなロ>>続きを読む

劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲(1998年製作の映画)

3.8

 オリジナルとコピー、自然と人工の尽きることを知らない相剋を、ポケモンの最初の映画のテーマとした作り手の心意気の高さよ...。
 「野生のポケモンを捕まえて仲間にして戦わせる」という構図には、人間が自
>>続きを読む

ディス/コネクト(2012年製作の映画)

4.3

 当たり前になりすぎて、パソコンやスマホに囲まれて生活していることにもはや何の感情も抱かなくなってしまった。SNSも日常の一部と化し、その正の側面以上に、SNSに絡んだ犯罪や悲しい事件ばかりが目につく>>続きを読む

奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ(2014年製作の映画)

3.7

 クラスは崩壊していて、喧嘩も絶えない、成績も悪い、落ちこぼれ学級。担任の歴史と地理、美術史教師は、ホロコーストについてのコンテストにクラスで参加することにする。歴史に向き合い、虐殺を経験した人々の声>>続きを読む