くろいひとさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

くろいひと

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エレファント・マン(1980年製作の映画)

3.6


リンチのイメージから見世物小屋的な趣味でつくられたというのはさすがに穿ちすぎで、やはりヒューマニズムがテーマであることは間違いないだろう。

ただし、そこにあるのは奇異の目で見られるものへの共感より
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イレイザーヘッド(1976年製作の映画)

4.0


言語を超越した無意識領域へ踏み込む天才、デヴィッド・リンチの長編デビュー作。
わかりやすいメタファーの羅列によってつくられているので、シュールレアリスム的な見かけより難解ではない。

観るものをこの
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スリー・ビルボード(2017年製作の映画)

4.1


アメリカという国がはらんでいるいくつもの矛盾を、ひとつの架空の村のなかで起こる事件に凝縮してえがく傑作。

さまざまな差別、証拠なき復讐、振りかざされる正義など、ここで批評されるものは、アメリカ国内
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リーサル・ウェポン(1987年製作の映画)

3.6


刑事アクションものの名作。

『ダーティハリー』からの影響やいくつものオマージュを感じさせながら、自殺願望のある刑事というところが面白い。
アクションも設定もかなりハードなもので、見せ場はどれもいま
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プラウダ(真実)(1969年製作の映画)

2.5


いわゆる「プラハの春」のころのチェコスロバキアの政治的記録として貴重な一本。

いまでは時代を感じさせる修正主義批判のあからはまな政治的メッセージにはややうんざりするが、前作『ブリティッシュ・サウン
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ブリティッシュ・サウンズ(1969年製作の映画)

2.3


時代を考えればゴダールの真摯な訴えも説得力あるものだと思うが、なんのメタファーも効いていないあからさまな表現にいささか恥ずかしくなるくらい、わかりやすい作品。

「映画とは映像と音との闘いだ」と大上
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しとやかな獣(1962年製作の映画)

4.0


川島雄三を代表するコメディの傑作。

みずからの欲望になんの躊躇いもなく忠実に生きるものたち、すなわち獣が見せる滑稽なドラマ。
上質な舞台喜劇を観るようなセリフのリズムが心地よい。

急テンポの囃子
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雁の寺(1962年製作の映画)

3.9


やや古びて見えるサスペンスとしてのプロットの面白さよりも、構図やカメラワークの見事さ、照明の巧みさが観るものをうならせる。
音楽らしい音楽がほとんどないのも良い。

若尾文子の男をまどわせる魅力と罪
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女は二度生まれる(1961年製作の映画)

3.7


全編にながれる不思議な音楽が象徴するような、不安定な根無し草の芸者の生き様をえがいた秀作。
終着駅/始発駅でひとりになるラストシーンは、彼女の再出発への兆しを感じさせる素晴らしいもの。

若尾文子の
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幕末太陽傳(1957年製作の映画)

4.0


古典落語の「居残り佐平次」や「品川心中」などをたくみにまとめた、一流の時代劇コメディ。

フランキー堺や、左幸子、南田洋子をはじめとした(ある一部をのぞいて)芸達者な出演者が、自由にしかしあるスタイ
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洲崎パラダイス 赤信号(1956年製作の映画)

4.0


ものがたりの舞台設定、プロット、生活感ある細部のリアリティ、いすれもセンスの光る仕事が見られる傑作。

川の向こうとこちら、そしてそこにかかっている「橋」のメタファーがきわめて効果的。
なにより、脇
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続・飢える魂(1956年製作の映画)

2.4


前作同様のいかにもなストーリーが展開されるが、続編ならではの引き伸ばし感にみちあふれている。
いちばんの見どころが南田洋子のナチュラルな弱き美しさだということも、前作とおなじ。

温泉宿やホテルでの
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飢える魂(1956年製作の映画)

2.5


題材としても人物造形にしても典型の域をでず、それらの作品の原点といえばそうかもしれないが、いまとなってはいささか陳腐な印象は否めない。

そのなかにあって、ひたすら南田洋子の美しさが見もの。
その抑
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わが町(1956年製作の映画)

3.6


明治から昭和にかけて生きた破天荒な男の一代記。
芝居のていねいさよりもテンポでもっていく演劇的なリズム感が、大阪の長屋裏の空気をつくりあげている。

それにしても主人公は、よくもこれほど身近なものを
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風船(1956年製作の映画)

3.8


どこを切り取ってもお手本のような構図とカメラワークにあふれている。
随所に見られる思わせぶりでミステリアスな演出。

「享楽するすべ」を知らない日本人の空気が、みごとにえがきだされており、その先に幽
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愛のお荷物(1955年製作の映画)

3.1


時代を考えれば、いやいま見ても思いっきり振り切った風刺コメディの良作。

なんといっても、芝居とセリフのテンポがよく、脚本がよくねられている。
さんざんドタバタと笑わせておいて、子供がどんなに価値あ
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ひばりの お嬢さん社長(1953年製作の映画)

2.6


美空ひばりの歌謡映画として楽しむべきコメディ。
そういう意味では十二分に仕事がなされた一本。

ひばりの女優としての能力は賛否あるだろうが、いまから見れば、なかなかナチュラルかつリアルでよい。
また
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仁義なき戦い(1973年製作の映画)

3.1


手持ちカメラのブレ、まくしたてる広島弁など、実録ものとしてリアルなリズム感をつくりだすことに成功している。
好きなひとにはたまらなく面白いだろう。

あるジャンルのパイオニアであることに間違いないが
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昭和残侠伝 死んで貰います(1970年製作の映画)

3.4


高倉健&マキノ雅弘のコンビの名作。

舞台のようなみごとな様式美と無駄のない構成が、観るものをすかっとさせる。
完成されたスタイルとは恐ろしいもので、藤純子のけっして巧くはない演技もかわいく見せてし
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敦煌(1988年製作の映画)

3.5


この時代にあって、またこの時代にしかつくれなかった巨編。

随所にみられる「つくりもの」めいた欠点や、偏った史観もあるにせよ、なかなかに充実した演技もみられる。
俳優が小手先ではなく「肚」で芝居して
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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(2020年製作の映画)

1.6


モチーフやキャラクターには魅力的なものもあるのに、それを全く活かせていないテレビ版アニメシリーズの続編。

周到さにかけるつくりと雑な展開はそのまま。
各々の陳腐なバックボーンに頼る安易さも。
映画
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センチメンタル・アドベンチャー(1982年製作の映画)

3.5


イーストウッド親子の素敵な共演が観られるロードムービー。

あまりに多用される顔のアップ、ベタなストーリーにくすぐったさと違和感を感じながら、なぜかいつのまにか引き込まれてしまう良作。
素朴な主題歌
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ユージュアル・サスペクツ(1995年製作の映画)

3.8


最後になってようやくすべての輪がつながる、構成のうまさが見事なサスペンス。

巧みに隠蔽された真相そのものは、じつはなんとなく気がつかされるのだが、それでも「騙り/語り」のテクニックのあざやかさにな
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やっぱり契約破棄していいですか!?(2018年製作の映画)

3.8


ありがちだがよくできたプロットと、舞台演劇的なテンポのよい洒落たセリフの応酬が楽しめる、ライトでじつは深いコメディ。

ベテラン暗殺者を演じるトム・ウィルキンソンの演技がみごとで、とんでもな展開もす
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トランスフォーマー(2007年製作の映画)

1.9


突っ込みどころ満載の旧き良きトランスフォーマーの、待望の実写映画。

面白くないことはないが、せっかくの変形が精巧すぎてまったく原型をとどめていないほど。
その結果、彼らそれぞれの個性が希薄になり、
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RONIN(1998年製作の映画)

2.7


とにもかくにも、カーチェイスのリアリティあふれる比類なき面白さに圧倒される一本。

「マクガフィン」をめぐる争奪戦というシンプルなプロットもよい。
ただ、豪華な俳優陣を集めたわりには敵も味方もみんな
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アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)

4.0


かざらないショットのつみかさねでつくられる、シンプルに演出された映像がイーストウッドらしい。
たんなる反戦映画などではなく、リアルな人間の心理をそのままなめらかなタッチでえがき、観るものにそれをつき
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J・エドガー(2011年製作の映画)

3.5


イーストウッドはあいかわらず、えがく対象との距離感のとり方が絶妙。
過剰な共感とも糾弾ともかけはなれたタッチで、FBI長官フーヴァーの半生が、伝記的なものの語り/騙りの構造とともにえがかれる。

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ヒア アフター(2010年製作の映画)

3.9


この監督としてはめずらしいスピリチュアルな題材をあつかった作品。
しかし、それがテーマそのものになるわけではなく、あくまでもそれをめぐる人々それぞれのドラマを淡々とえがくのがイーストウッド流。

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インビクタス/負けざる者たち(2009年製作の映画)

4.0


ネルソン・マンデラ大統領の施政と、ワールドカップ優勝をはたしたラグビーチームのものがたり。

国をひとつにまとめるためには、ともに誇れるものが必要という作品の骨組みのなかで、きわめてシンプルなタッチ
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チェンジリング(2008年製作の映画)

3.6


イーストウッドお得意の実話もののひとつ。
自由を不当に侵害するおおきなちからと戦うという、監督のライフワークとも言うべきテーマを中心に据えたヘビーな作品。
二転三転する展開、公聴会と法廷の重なりなど
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ミスティック・リバー(2003年製作の映画)

3.7


それぞれに闇をかかえる三人の主人公が見せる、第一級の心理クライムサスペンス。
無駄のない構成、シンプルな画面の美しさなどは、イーストウッド作品のなかでも屈指のもの。
 俳優陣もいずれおとらず素晴らし
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スペース カウボーイ(2000年製作の映画)

3.8


サクサクと無造作に撮られたように見え、それでいて必要十分なものを備えたイーストウッドらしい異色SF。

西部劇のヒーロー、悪と戦う刑事、そして宇宙飛行士と、いくつになっても一昔前の男の夢をかなえてい
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目撃(1997年製作の映画)

2.7


そのプロットはなかなか面白い反面、イーストウッド監督にしてはあまりに無駄が目につく。

陳腐な父娘のものがたりを強調しすぎるあまり、安易なテレビドラマの出来損ないのようだ。
ジーン・ハックマンの悪役
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アウトロー(1976年製作の映画)

3.4


南北戦争時代を背景にした復讐者のものがたり。それぞれの登場人物たちに深みがあるのがよい。

いささかテレビドラマ的ではあるが、きわめて効果的で迫力ある映像が冒頭のシーンからつづく。
先住民などのえが
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恐怖のメロディ(1971年製作の映画)

3.4


クリント・イーストウッドの監督デビュー作。

後年のおもいきりのよいシンプルさを彷彿とさせる部分と、個人的な趣味で弛緩してしまう無駄な部分とか混在しているようで面白い。
ストーカーもののサスペンスと
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