シャチ状球体さんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

ヨーロッパ横断特急(1966年製作の映画)

3.5

ジャン=ルイ・トランティニャンの映画を少しずつ鑑賞。

タイトルバックも音楽もなくいきなり駅のシーンから始まり、カメラが登場人物を追ってどんどん動く。60年代にこれはかなり画期的だったのではないだろう
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レッド・ロケット(2021年製作の映画)

3.6

『タンジェリン』、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』のショーン・ベイカー監督最新作。
行き場を失ってテキサスの実家に帰ってきた元ポルノ俳優のマイキーが主人公で、同監督の今までの作品と違って反差別的
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ファルコン・レイク(2022年製作の映画)

4.3

思春期と死を結び付ける行為にはそこにルッキズムが介在していることが多いけれど、もちろんこの映画も例外ではない。

淡色のフィルターで山奥の湖や太陽の輝きがより一層強調され、画面に映るキャラクター達が自
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EO イーオー(2022年製作の映画)

3.4

EOから見た人間世界……の割には日常の中でも特殊なケース(殺人や暴動など)ばかり登場し、あまり社会風刺になっていない。

EOが見る夢や空想のシーンは真っ赤なフィルターがかかって平坦なリズムの音楽も流
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1秒先の彼女(2020年製作の映画)

3.5

日本でのリメイク版の前にオリジナルを観ておこうと思って視聴。

確かに、主人公が一介の労働者で特にドラマが起こりそうもないような設定なのは邦画によくあるフォーマット。
シャオチーがどんな行動でも1秒早
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ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

3.8

マリオとルイージがちゃんと街中に暮らしてるし、クッパは文字通り大軍勢を率いてるし、ピーチ姫が庇護される存在ではなく主体として描かれている。
それだけでもマリオ世界の映像化としては完璧なのに、ワープ土管
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コララインとボタンの魔女(2009年製作の映画)

3.8

家の中から別世界の自宅に行けて、両親が別人のように変わっているというのは子どもにとって最大級に近い悪夢だ。

ストップモーションアニメで描かれる世界は不気味ながらもキャッチーで、現実世界とは別のルール
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エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に(2015年製作の映画)

2.8

パッと見無理そうな映画だったけど、レビュースコアが高かったので視聴。

1980年代が舞台なので(今もだろうけど……)ホモソーシャルな内輪のノリがキツイ。
『初体験/リッジモント・ハイ』より大胆で直球
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ビッグ・ガン(1972年製作の映画)

3.3

アラン・ドロン主演の比較的テンプレートなリベンジムービー。

全然映画とは関係ないけど、70年代の映画を複数観てて思ったのは、都会でも夜になると道が暗いこと。看板のネオンと店の明かり、輝度の低い街灯、
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イノセント(1975年製作の映画)

4.0

イタリア貴族の堕落を描いている……というか、家同士の取り決めとしての結婚が意味を為さなくなっていく話。

フルチの『ザ・サイキック』が有名なジェニファー・オニールがテレザ役、そして34歳で髄膜炎のため
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遥かなる青い海(1971年製作の映画)

4.2

一応音楽がエンニオ・モリコーネなのに日本語圏の情報が限りなく少ないマイナーなイタリア映画。

文明社会から隔絶されたポリネシアに住むタナイが漂着したアラスカから脱走するところから映画は始まり、モリコー
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レット・ゼム・オール・トーク(2020年製作の映画)

3.2

修行が足りなくて(?)非常に退屈だと思ってしまい、同時に何かを読み取らなければならないという強迫観念に襲われながら観た映画。

日常会話以外のドラマが文字通り何もなくて、掴みどころのなさにまず戸惑う。
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バレリーナ(2023年製作の映画)

3.1

親友・ミニの復讐のためにチョン・ジョンソ演じるミステリアスな主人公のオクジュが敵組織の居城に潜入する……という没個性的なストーリー。
スタイリッシュなアクションは普通に見れるけど、00年代の邦画みたい
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Saltburn(2023年製作の映画)

3.8

大学は基本的にクラス制じゃないから、誰とも話さなくても誰にも気にされない。だけド他の人達は全員友達が出来てるようで、残ったヤバい人だけが話しかけてくれる。この生々しい導入から始まる時点でこの映画はただ>>続きを読む

私をくいとめて(2020年製作の映画)

2.8

綿矢りさ原作、のん主演のヒューマンドラマ。

主人公、黒田みつ子の脳内で行われる会話の相手にAという役名が付いている。これは一人に慣れすぎてコミュニケーションを自己完結できるようになったみつ子の悲哀を
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恋愛の抜けたロマンス(2021年製作の映画)

3.4

一風変わった邦題が内容を的確に言い表している映画。

30歳を前にそれぞれ恋愛関係を解消した2人がたまたま出会って……みたいなよくある話ではあるけど、その前に運命の人を見つけるチャレンジを色々して挫折
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よだかの片想い(2022年製作の映画)

3.6

『わたし達はおとな』、『そばかす』と同じく、メ~テレ制作の (not) HEROINE moviesプロジェクト の1作。
『あのこは貴族』とか『マイ・ブロークン・マリコ』も従来のステレオタイプな女性
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わたし達はおとな(2022年製作の映画)

3.8

『ほつれる』の加藤拓也監督作品。

この監督は等身大のリアルな日常を切り取るのが巧いというか、目的のない会話で時間を進めることに長けている。映画ってどうしても一つ一つの台詞に意味を持たせたりしがちだけ
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グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル(2016年製作の映画)

3.7

グザヴィエ・ドラン監督を追ったドキュメンタリー。

今年映画監督を引退したドラン、この頃にはもう既に撮りたいものは撮り尽くしていた感じもする。
『マイ・マザー』や『私はロランス』にあった痛いほど等身大
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パリは霧にぬれて(1971年製作の映画)

3.0

フィリップの過去に関する陰謀劇とジルの記憶障害が繋がりそうで繋がらない。

監督が意図しているのかは微妙だけど、子どもたちが誘拐されて以降のジルが警察から記憶障害を理由に疑われるのは社会的な信用度がジ
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Ribbon(2021年製作の映画)

3.5

のんが自ら主演も務めた初監督作品。

コロナ渦での美大生の日常、という短編向きのテーマが(結構強引に)人間関係のすれ違いを主にした長編ドラマとして最適化されており、絵への興味、就活といったシビアな悩み
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ザ・ドライバー(1978年製作の映画)

3.5

『ドライヴ』の基になった映画。

強盗等の逃がし屋をしているドライバーの恋愛と犯罪。
レフンのリメイク版は電子音楽やスピーディーな演出である程度誤魔化されていたけど、こちらはステレオタイプな男性性を美
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ほつれる(2023年製作の映画)

5.0

不倫の話なのに全く生々しさがない『花様年華』……の日本版みたいで全然違う映画。

主演である門脇麦(綿子)の不倫相手、染谷翔太(木村)が事故死するところから映画は始まり、誰にも言えない関係が崩れてしま
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SFコンクエスト/魔界の制圧(1984年製作の映画)

2.5

新宿ビデオマーケットで海外版Blu-rayを購入。

一応ハイファンタジーアクションのはずなんだけど、いかんせん監督がキャリア後期のルチオ・フルチなので霧のかかったようなフィルターが全シーンにかかり、
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禁じられた遊び(2023年製作の映画)

2.0

まず、シゲと子役がきょうだいにしか見えない。「男の子なんだから、ママ守らなくちゃ」という家父長制&ジェンダーロールバリバリの台詞もあり、出演者以外は90年代のJホラーからセンスを抜いたような出来なので>>続きを読む

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

5.0

『VORTEX ヴォルテックス』

非常に効果的なスプリットスクリーンの使い方、家以外に逃げ場のない老夫婦の死を淡々と映しながら唐突に訪れるエンディング、全て強烈。前半はコメディ的なのでその落差も。
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ヘルレイザー4(1996年製作の映画)

2.2

古に3まで視聴済みのヘル・レイザーシリーズをもう一度観直そうかと思ったけど、そうすると後半が辛そうなのでスター・ウォーズ方式として(?)4から視聴。

舞台は何故か100年後の近未来で、しかも宇宙……
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戦慄怪奇ワールド コワすぎ!(2023年製作の映画)

3.8

何年も続編の音沙汰がなかったコワすぎ!シリーズの最新作。

白石監督は作品を重ねるごとにリアリティを追求する路線からバトル漫画的なホラーアクション路線に徐々に舵を切ってきており、良い意味で『ノロイ』と
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ファミリー・スイッチ(2023年製作の映画)

2.3

家にいながら外気温を感じられる一発ギャグが大量に堪能できる映画。

家族それぞれの体が入れ替わる……のはいいけど、失敗できない大事な日を全員が大事な台無しにしてしまうシーンが連続するのは見てられない。
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PIGGY ピギー(2022年製作の映画)

3.7

まず、クラスメイトの輪に入っていけないサラを取り巻く環境が生々しい。両親も人付き合いをせずに子どもの自由を著しく制限しており、田舎町なので悪質ないじめをしてくるクラスメイト達くらいしか同年代の人がいな>>続きを読む

ドラキュラ/デメテル号最期の航海(2023年製作の映画)

3.6

原作がクラシック小説だからなのか、映画自体も色々な意味でクラシック。

誰も乗っていないデメテル号が漂着するシーンから映画が始まるので生存者がいないことが開始1分で分かってしまい、結末を知った状態で観
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タンジェリン(2015年製作の映画)

4.6

これ好き。

全編スマートフォンを用いて撮影された映画で、太陽の黄色が強調されて他のカメラでは見れない夕暮れの雰囲気を味わうことが出来る。

セックスワーカーである2人のトランス女性の日常を追っている
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普通の人々(1980年製作の映画)

4.0

パッヘルベルのカノンから始まる優しい映画……では全くない。

ドナルド・サザーランドは画面に映っているだけで作品世界の不安定さを表してくれる(『赤い影』の役もハマっていた)俳優で、今回も後戻りができな
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アレックス STRAIGHT CUT(2020年製作の映画)

2.9

監督のインタビューを読んだら2つのバージョンのどちらから観ても大丈夫そうだったので、時系列順に再編集されたSTRAIGHT CUTから視聴。

ギャスパー・ノエは『CLIMAX クライマックス』以降と
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アメリカの影(1959年製作の映画)

4.2

アメリカに存在する何重にも入り組んだ差別構造を散文詩的な構成で描く映画。

バイナリ規範はもちろんのこと男性と女性の生活する領域が完全に区切られていて、今よりも遥かに規範と規範に順応する社会的な意識が
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レオ(2023年製作の映画)

2.7

高齢のトカゲとカメの視点から小学生達と人間社会を俯瞰して見るような映画で、気まずくなるタイプのジョークが動物の種類ほど沢山出てくる。

レオが出会う子どもたちとのドラマはとてもクラシック。過保護よりも
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