mareさんの映画レビュー・感想・評価

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TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

3.5

こっくりさんのような古典的オカルトホラーをテーマにしながらも、トリップ体験に身を投じるSNS世代の少年少女の取り返しのつかないドラマを描いていて、現代的な危機感を煽ってくる。多用されてきた憑依モノの恐>>続きを読む

パパは、出張中!(1985年製作の映画)

3.5

初期作なだけあってまだ「アンダーグラウンド」ほどぶっ飛んだコメディ描写はないものの、ユーモラスな一家と子どもの目線から語られる作風で、激動の世相を反映させたクストリッツァらしさはすでに感じられる。出張>>続きを読む

SELF AND OTHERS(2000年製作の映画)

4.0

写真家・牛腸茂雄の残した痕跡を辿るドキュメンタリーというのは前提としてあるものの、何枚もの写真を通して、何人もの人間がこちらを見つめてくるひたすらに眼差しのアートフォームとして訴えかけてくる。人が一生>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

3.5

ポスト・アピチャッポンとも形容できそうなあくまでも自然に根差した都市のリアリティとの共生。生活の中で消費されていく時間や食材、期限付きで追われるものが多すぎる現代に捧げられた一種のセラピーのように感じ>>続きを読む

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.0

久々に没入感を得られ呼吸がフィットするような映画体験だった。うたた寝をしてしまったその先にある街の息遣いと節操なく動く人々の生と死。夜の永遠性を保ちながら、彼女の見つめる視線の前には常に始まりの予兆が>>続きを読む

共喰い(2013年製作の映画)

2.5

菅田将暉と光石研の狂気がぶつかり合う控えめに言って地獄と胸糞の縮図を描いた歪んだ家族映画。主演二人の演技は鬼気迫るものがあるが、ジメジメとしたストーリーで重苦しい空気が終始流れる。悪の種は親から子へと>>続きを読む

チーチ&チョン/スモーキング作戦(1978年製作の映画)

4.0

マリファナを求めるロードムービーで、警察から逃げたり、バンドをやってみたり、破茶滅茶でヘロヘロな珍道中。頭を使わなくていい爽快感があり、噛み合わない人物同士の会話やオーバーな破壊シーンが目白押しで、愛>>続きを読む

殺人捜査線(1958年製作の映画)

4.0

やはりドン・シーゲルのバキバキとしたスピード感と大胆なアクション演出は一級品。刑事側と犯人側のリアルタイムな状況を交互に描くことで刻一刻とした変化を切り取り、それらが一直線で事件の発生から結末までシン>>続きを読む

悪の力(1948年製作の映画)

3.5

正反対の立場で揺らぐ兄弟の業。両者の対比から、まさしく悪の道に染まったものはなかなかその沼から抜け出せないということを体現したフィルムノワール。サスペンスものというよりは闇社会の欲望が絡み合うような作>>続きを読む

駅馬車(1939年製作の映画)

4.0

映画のお手本として非の打ち所がない古典的名作。ユーモア溢れる人物描写、乗馬アクションのダイナミズム、ロードムービーで芽生えるメロドラマなどこれでもかと映画の旨みを凝縮していて、まさに本物の映画を観てい>>続きを読む

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)

3.5

ナン・ゴールディンというアーティストの誕生から現在に至るまで。シャッターを切り続けたかつての美しく破天荒なアーカイブには、根強い社会への怒りが常に翳りとなって存在していた。時代を跨ぎながら先鋭的でパー>>続きを読む

クラッシュ(1996年製作の映画)

3.0

交通事故によってエクスタシーを感じるど変態炸裂のクローネンバーグの怪作。無惨になった車、カーセックスでひたすらに満たし続ける異常な人々の理解し難い破滅的フェティシズム、常人には思いもつかないまさかのコ>>続きを読む

ストリート・オブ・ノー・リターン(1989年製作の映画)

4.0

声を奪われた歌手が復讐を誓うドラマで、かつての栄光と枯れてしまった人生の対比が抜群に効いたアクション映画の秀作。サミュエル・フラーのカッコ良すぎる遺作なのはもちろん、老いを感じさせない無駄のないカット>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

ノーランは純粋に映像と音響の力だけで映画体験を更新させる数少ない監督ということを理屈抜きにして思い知る。伝記物でも遺憾なく時系列シャッフルは行われ、カラーとモノクロの反復横跳びによって煩雑だったプロッ>>続きを読む

ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争(2023年製作の映画)

3.5

映画史として見たときにゴダール映画とゴダール映画ではないものという風に二分化できるほどに概念化していた彼の最後の言葉。ゴダールからスクリーンを通して何かを受け取るラストチャンス。文化と歴史を細切れにし>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.5

予告もタイトルもミスリードかと思わせるほどのザ・法廷映画で、落下の解剖ではなく家族間の解剖が行われる。この映画は真実を重要視しておらずそれをゴールとしていない。各々の主観と証拠のない発言で物語は進行し>>続きを読む

14歳の栞(2021年製作の映画)

3.0

13でも15でもなくこの14という数字が思春期のど真ん中を射抜く。ただ楽しくやりたい者、自己肯定感の所在に答えを出せない者、考えないことで自分を保とうとしている者、一つの教室の中に沈殿し混ざり合った喜>>続きを読む

終電車(1980年製作の映画)

3.5

この暗黒の時代背景の上で演じられる舞台内映画、そして男女の限られた環境下でのメロドラマもあるからか閉鎖的ではなく妙に開けた印象。ヌーヴェルヴァーグから引き継がれる軽やかさも抜かりなく披露され、愛と秘密>>続きを読む

東京暗黒街・竹の家(1955年製作の映画)

4.0

サミュエル・フラーが東京を舞台に、それもお国柄を無視したフィルムノワールをやってのけるというかなり異質な活劇で妙な魅力が溢れていた。外人以上に日本人がカタコトだったり、室内なのに下駄を履いていたり、ツ>>続きを読む

愛のまなざしを(2020年製作の映画)

4.0

違和感、不信感だらけで正しくない感情の揺れ動きに絡め取られた男女の転落劇。日本映画でファムファタールが強調された映画というのも自分としては新鮮。映るものや動機の一つ一つが妖しく、保身とエゴに正直であり>>続きを読む

イヌミチ(2013年製作の映画)

3.5

一見して束縛に見えることが、当人にとっては思考や義務感からの解放として機能する逆説的なアプローチ。仕事も結婚も誰かと会話を交わすことも何もかもを放棄したくなるときが生きていれば必ず訪れる。首輪を嵌めれ>>続きを読む

長浜(2016年製作の映画)

2.5

「八月八日」より躍動的に魅せる石橋静河。こういうパーソナルなショートフィルムを2本撮ってることから監督と女優の信頼が窺える。海辺に立ちゆらゆらと踊るだけの映像が綺麗で、カメラと役者の運動の記録として見>>続きを読む

ワイルドツアー(2018年製作の映画)

3.5

地域に根差したドキュメンタリーが始まるのかと思いきや、限られたコミュニティ内での淡い感情のサインが交差する懐かしい感覚の青春映画であった。中学生の男の子2人と大学生の女の子との何気ない会話と接触。年齢>>続きを読む

密使と番人(2017年製作の映画)

3.5

三宅唱の引き算の美学が集約された物静かで風景が第二の主役ともいえる時代劇。追って追われてのシンプルな構図に二層で配置された一面の雪景色が美しい。すすきの光の移ろいといい自然の奇跡的な切り取りの下で繰り>>続きを読む

THE COCKPIT(2014年製作の映画)

4.0

親近感しか湧かないモチベーションぶち上げ系のドキュメンタリーだった。というのも自分もたまに友人たちとトラックメイクをすることがあって、停滞と加速を行き来するこの行程に終始共感しか覚えなかった。使ってる>>続きを読む

ストレート・トゥ・ヘル(1987年製作の映画)

3.5

この映画から感じ取れるのは、友人を集めて良さげなロケーションを見つけて撮ったであろうラフなハンドメイド感。拳銃はファッションアイテムと化して、ひたすら銃声によってストーリーが加速していく即物性。そして>>続きを読む

バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト(1992年製作の映画)

3.5

ダメ男の映画は基本面白いと思っているが、それに拍車をかけるようなハーヴェイ・カイテルの凶暴さが合わされば生々しく実録モノのような鋭利さが宿る。刑事の肩書きはギャップというよりも設定の一つに過ぎず、一人>>続きを読む

サムシング・ワイルド(1986年製作の映画)

4.0

ジョナサン・デミの破茶滅茶なスタイルが遺憾なく発揮されており、ロードムービーとコメディの横断によって展開に次ぐ展開が生み出されずっと面白い。エリートな主人公、全てが唐突で取り返しのつかない行動ばかり引>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.0

人間誰しもが何かしらを抱えている現代にひたすらに救い救われの思いやりを描いたことは、非常に意義のある映像化でありセラピーでもある。この映画、本当にバランス感覚が優れている。精神障害というシリアスな題材>>続きを読む

ストップ・メイキング・センス 4Kレストア(1984年製作の映画)

5.0

もうこの映画は何回観たかわからないけど、これを超えるライブ映画というものは存在しないのではないか。相変わらずデヴィッド・バーンのカッティングの切れ味の良さに脳汁が止まらなくなる。与えられたマルチな役割>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.0

エリセの最新作を目の当たりにできてしまうという奇跡体験に感謝するとともに、これは彼が積み上げてきた偉大なる映画史・個人史の上に聳え立つ記念碑でもあった。映画を信じその力をもって救済を果たしていくという>>続きを読む

ナイトクローラー(2014年製作の映画)

4.0

能動的に殺人を犯すサイコパス映画は数あれど、直接手を下すことはないものの凄惨な状況をネタにして目先の欲に忠実なサイコパス映画という切り口は先鋭的。開始数分でわかる血の気の通わないジェイク・ギレンホール>>続きを読む

ミッドナイト・イン・パリ(2011年製作の映画)

3.5

パリの夜の街並みというだけで文句なしの洒脱なロケーションであるが、主人公がなかなか捻くれていて変人、そのアンバランスさが見たことのあるユーモアとなって妙に安心する。懐古主義からしてみれば夢みたいなおと>>続きを読む

少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録(1999年製作の映画)

4.0

王子様、決闘、薔薇の花嫁、世界の果て、メタファーに埋め尽くされ謎が次第に深まっていく作風を少女向けアニメのテイストで還元したシュールレアリスム。この難解さは制作側の無邪気さや趣味が、劇中のさまざまな物>>続きを読む

彼方のうた(2023年製作の映画)

3.5

散文的に見え隠れするそれぞれの人物の過去、ある程度は想像で補うしかないのだが、思いがけず交差した三人の息遣いが伝ってきて、それらが思いやりへと結実することで神秘的な温もりが持続する。人知れずに、あるい>>続きを読む

ハム・オン・ライ(2019年製作の映画)

2.5

ティーンエイジャーが集結する場には何かが起こるという映画マジックを期待していると華麗に避けられ、中盤以降では徐々にツイン・ピークスのような画面が構成されていく。始まりと終わりでテンションがえらく違う作>>続きを読む

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