8637さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

窓辺にて(2022年製作の映画)

4.0

映画館にて、なかなか良い時の流れを体験させてもらった。事実しか映ってない。だけど思惑が見える。
もはや役目を失いつつある夫婦の愛と、一時の弾みで生まれてしまった恋。"愛などない"に、愛はあった。
一度
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すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

4.3

今年随一のエンタメ映画でありながら、人間という無知な"ミミズ"が巻き起こす絶望の深淵を描き切ったと思う。鬱気味になりながら啜り泣いたし、それは私たちが知る由もない出来事の上で成り立つ普遍的な挨拶への感>>続きを読む

宮松と山下(2022年製作の映画)

3.9

狂気を越えた果ての哀愁なのか。
映画のセオリーに似た展開ながら見せ方が新しく、どの香川照之が現実なのか判別できなくなる。静かな画面から感じる厳かさとシュルレアリスムと機微に怯えながら、それが映画に対す
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桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)

4.1

自分自身、この映画を観るのは4回目になる。小学生の時から観てる。2年半前、コロナ禍と重なった中学時代に再見してそのリアルさに痛烈したはずが、高校生になって見返す今、それはさらに"痛み"となって自分にの>>続きを読む

サイレント・ナイト(2021年製作の映画)

3.5

世界の終わりに馴れ合うな。違う、終末とは思えない夜だからこそ馴れ合うのだ。
安静で親密な死を求める人共が談笑し、現実を忘れていくあの空間の恐さ。死ぬ時は一瞬。分かっているが自分も飲み込めない。彼らは天
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線は、僕を描く(2022年製作の映画)

3.9

僕はかなり喰らった。王道ストーリーの中に水墨画の生み出す"静"の魅力や迫力、壮観な映像美が混ざり合い、そこに"神聖"を感じた。水墨画が若者の間でここまで流行る、という考え難い前提を飲み込めば面白い。>>続きを読む

トレインスポッティング(1996年製作の映画)

3.8

きっとこの映画、自分が感じる以上に面白いのかもしれない。90'sカルチャーを総称する名作でありながら、90'sとは思えないセンスを見せつけられる迷作。

クスリに頼っちゃうダメな大人。レントンは根は真
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ファイブ・デビルズ(2021年製作の映画)

3.5

特異的なタイムリープは新鮮で強烈で哀しい。ただ本質は愚かな人間の愛であり、その行方が広大な映像美と共に描かれる。
全編にスリラーを漂わせながら、クィアの浮き彫りの仕方が上手い。だからこそそれに意味を見
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あちらにいる鬼(2022年製作の映画)

3.3

戦争と革命の裏で文化人である彼らの好き勝手。今となっては普通に許されない価値観が観客の心を震わせに来る。出家しても収まらないほどの愚かなエゴと欲望。でも正直、我々の器量では図れない愛を感じる。
脇役ま
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四畳半タイムマシンブルース(2022年製作の映画)

4.0

両作の予習を5時間前に済ませたけど、それでも同じストーリーに飽きなかった。
「サマータイムマシン・ブルース」の意思を「四畳半神話体系」が継いでいて、その上どちらとも個性を消さない悪魔的融合。前者の優美
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サマータイムマシン・ブルース(2005年製作の映画)

4.1

「四畳半タイムマシンブルース」予習かつ3年ぶり3回目の鑑賞。
観れば観るほどいっそう「四畳半」のフォーマットでどう描かれるかが分からなくなってくる。なぜなら、そこには大人しさとは無縁の暑苦しさがあり、
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ミューズは溺れない(2021年製作の映画)

3.6

高校生。恋の話ばかり。それさえなければこの蟠りを越えられるのに。木崎は学校、家族、どこにも従事しない人物であってほしかった。彼女を見て、西原が初めに出した色が紫だったという事。人は弱点があっても"特別>>続きを読む

沈黙のパレード(2022年製作の映画)

3.7

予習がほぼできてないからかもしれないけど、上手くハマれなかった。事件を科学的観点から浮かび上がらせる驚きはいつまでも続いていたが、その分誰もが指摘しているドラマパートの過多が激しい。

東野圭吾はいく
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B/B(2020年製作の映画)

4.3

先に言っておくが、私のオールタイムベストは「ウィーアーリトルゾンビーズ」である。

...そんな私が田辺・弁慶映画祭のオンライン無料上映を見逃した1年前から観たくて仕方がなかった映画。フォロワーさんも
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容疑者Xの献身(2008年製作の映画)

3.6

ガリレオ初見。
観客に事件の概要を明らかにしたままの状態から始まって、こんなに騙されるとは思わなかった。終盤の取り調べシーンで急に表層が浮かび上がり、ギアが上がる。最後には堤真一と松雪泰子の演技に引き
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百花(2022年製作の映画)

4.1

とんでもない映画を観た。静の画面の中で躍動し、仕掛けに次ぐ仕掛け、とにかく新時代なものばかりに圧倒された。
こんな作品が日本から、そして東宝から生まれるとは。いや、東宝だからできたのか。名優達の競演と
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ブレット・トレイン(2022年製作の映画)

3.9

R15+指定だからと屈さず観て良かった!B級に成り下がった日本を舞台に繰り広げられる、いかにもアメリカンな笑い。不謹慎なグロさに身構えるが、最後には爽快感が勝る。"楽しい"で終わる映画の感想なんて長々>>続きを読む

さかなのこ(2022年製作の映画)

4.0

よくこの題材見つけたよな、という亜種の映画化ながら、沖田修一節の効いた人情ドラマで笑うし泣ける。魚を狂うほど愛して、食すという過程含めてしっかりと好きになった。その人生を我々が咎めちゃいけないよな。>>続きを読む

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022年製作の映画)

4.1

予告を観てから、今年最大級の期待をかけてきた映画の試写。どうせハマって映画館でも観に行くんだろうな...と思っていたら、予想外の展開に悪い意味で裏切られてしまった。
こんな事を冒頭に言ってはいけないな
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人質 韓国トップスター誘拐事件(2021年製作の映画)

3.6

初ファン・ジョンミン。実在のファン・ジョンミンが主人公である事以上に、ファン・ジョンミンを知らない人でもファン・ジョンミンである事の特別さを感じられる作品で感動した。感想すら埋め尽くす程のファン・ジョ>>続きを読む

あの娘は知らない(2022年製作の映画)

3.3

何もかも説明されつくした映画かと思いきや、二人の会話からここにいない人のことを観客それぞれが想像することになるし、タイトルと照らし合わせて考えると不可解な余韻が残る。そんな見せ方もする...?という一>>続きを読む

もっと超越した所へ。(2022年製作の映画)

4.0

演劇発の恋愛群像劇から始まって、映画でしかできない"超越"を見届ける。
男と女、カップルだけとは言えない多様な関係性の中で生まれる共依存が崩れフラストレーションが溜まる最中のジリジリ感たるや...
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NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

4.3

初ジョーダン・ピール。最高!訳分からんのに面白いって何!?
そんな事を考えてたら分かった。これ欧米版「来る」だ!両作のネタバレを踏みながら酷似してる点を挙げてみると、正当化して語られる空想科学、各章で
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今夜、世界からこの恋が消えても(2022年製作の映画)

3.9

原型を保てない記憶も変わらず無慈悲な記録も儚すぎる。突きつけられた現実を観客は忘れきれないまま、涙を流す。完全に消える記憶なんてない。透明になった記憶を掬う。
コロナ禍で高校生を迎えた身からすると、花
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川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)

4.0

いつも私達の生活の範囲内に着目してくれる荻上直子監督の作品。意味を持たない日々に現れた人々と囲む食卓。目の前の川っぺりも飲み込まれれば三途の川。信じられない悲しみは、時と白ご飯が忘れさせてくれると信じ>>続きを読む

コンビニエンス・ストーリー(2022年製作の映画)

3.3

今年暫定ワースト。もう三木聡監督はだめなのかもしれない。異世界不倫モノと幻想を詰め込んだストーリーなのに、テンポが単調で盛り上がらなすぎてる。予告編作った人の方がよっぽど上手く撮れたんじゃないかとすら>>続きを読む

彼女のいない部屋(2021年製作の映画)

3.4

記憶を手繰り寄せるかのような彼女の原始的な姿から始まり、手にするポラロイド全てに意味を持たせて映画を終える。捉えどころのなさに心掴まれる。遮断されたような二つの物語が波の如く混ざって離れる。想像すら彼>>続きを読む

キングダム2 遥かなる大地へ(2022年製作の映画)

3.9

プロット完璧で、衣装もコスプレ感なくて、盛り上がれて、最高な良い映画だね!(他人事)という感想を持ってしまった。だけどだいぶ好き。
莫大な資本で作られたからこそ、エンドロールの先まで興奮が冷めやらない
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この子は邪悪(2022年製作の映画)

3.9

あまり見たことないタイプの"恐怖"を感じた。特報を見ると分かるあの禍々しさが、本編にも継がれている。終始ゾッとして、加えてラストで更に怖がり、タイトルの真意に慄いた。

私たちが人を信用する/しないの
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ストーリー・オブ・マイ・ワイフ(2021年製作の映画)

3.2

顔しか真実が分からない女と、出逢ってすぐに永遠を誓ってしまい起こる乱れ。169分の大長編。

"健康に良い"から妻を作る?アフタートークでの名越先生の言葉を借りると「野生的」な男をこんな映画の主人公に
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GHOSTBOOK おばけずかん(2022年製作の映画)

3.8

幼稚すぎるセリフ・出演俳優の過去作を無理やり匂わせるようなディテール・小学生が言うとは思えない真理などが詰め込まれた台本、それ以外は良かった。
撮影から公開まで下手したら1年かかる"映画"に、その時の
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わたしは最悪。(2021年製作の映画)

3.9

多くのテーマを詰め込んだ作品。それこそが人生。映画でなら人生を誇張して表現できる。
誰もが自分の存在を主観的に"最悪"だと思ってしまう事、分かる。別れだとか新たな探究だとかは、自分を"最悪"だと思って
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ライトハウス(2019年製作の映画)

3.7

理解とかいう話じゃなくなって来てる。途中で寝落ちてしまって後から見返したのだが、それでも唐突な奇行である事には変わりなかった。ウィレム・デフォーもロバート・パティンソンも人間とは思えない表情を見せてく>>続きを読む

サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)

3.7

麦わらも、駄菓子屋も、二人乗りも、ボロい一軒家も、すべて今にないもの、そして自分の人生になかったものだった。
物凄く純粋な眼差しで、イルカは居るか?と問いかける。誰も認識してないがこれだって青春だった
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PLAN 75(2022年製作の映画)

3.9

参議院選挙で改憲派が選ばれる事もそうだが、望んでいない未来というのはやはり起こるものだ。変えられないものだ。僕は鑑賞前、この映画にも絶望していた。どんな地獄を見せられるのかと。しかし(映画自体は)怖く>>続きを読む

ビリーバーズ(2022年製作の映画)

3.8

城定秀夫監督の映画はやっぱり面白い。男がなぜ脚に浪漫を抱いてしまうのか。ポルノ的映画が未経験だったので、それの極端さにちょっと驚かされた。カルトが性と死を超え、もはや日常。悪気とかを超越した人間の醜さ>>続きを読む