pepeさんの映画レビュー・感想・評価

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脱走(2024年製作の映画)

4.0

体力と知力をフル回転させてひたすらに逃げる寡黙で真面目な軍曹イ・ジェフンと、冷酷な一方で剽軽さや複雑な過去を滲ませる喰わない役柄のク・ギョハンの追いつ追われつの逃亡劇。人物描写をそぎ落として逃亡劇のス>>続きを読む

親友かよ(2023年製作の映画)

4.0

「親友」の死をきっかけに始まるひとときの青春を鮮やかに切り取った瑞々しい映画で、とても楽しく観れました。追悼する映画を作るというプロセスの中で、友情をはぐくんでいく爽やかさをベースにしながら、ほろ苦い>>続きを読む

年少日記(2023年製作の映画)

4.1

生徒の捨てられていた遺書をきっかけに、教師は過去の記憶を呼び覚ましていく。それは厳格な父から過酷な虐待にあっていた兄と、優秀な弟、深入りできずにいた母親といういびつな彼の家庭環境の有様だった。

遺書
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聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

4.0

娼婦連続殺人事件の行く末を追ったサスペンス。出来の巧拙よりも、いやな後味が残る作品で、とても苦々しい思いが後を引きました。

犯人そのものは序盤から明確にされ、その男性が普通に生活を送り家族に愛情を向
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秋が来るとき(2024年製作の映画)

4.1

ブルゴーニュの田舎で、親友マリー=クロードと日々の暮らしを楽しんでいる老女ミシェル。彼女は孫ルカの来訪を心待ちにしていたけれど、孫と娘にふるまったキノコ料理に娘ヴァレリーが食中毒を起こしたことから、娘>>続きを読む

ノスフェラトゥ(2024年製作の映画)

3.9

リメイク元の作品を知らずに、予告編や画面の美しさと吸血鬼という不変の魅力あるテーマに惹かれて鑑賞しました。隅々にまで端正に再現されたかつての時代に生きる人々が、日常を打ち壊され不穏に飲み込まれ、狂気と>>続きを読む

ガール・ウィズ・ニードル(2024年製作の映画)

4.1

一本の白くか細い針が黒い背景に描かれていた、そんなビジュアルのチラシに惹かれたのをきっかけに観た作品です。女性のみが陥りがちな苦難と悲痛のさまに、繊細な美しさのモノクロームの画面と不穏を醸し出す音楽に>>続きを読む

インサイダーズ 内部者たち(2015年製作の映画)

4.0

腐敗と策略と裏金が跋扈する、裏社会の泥沼模様を苛烈に描き切ったサスペンス。冒頭三十分で手酷くえぐい暴力におぞましい性接待が描かれ、権力を持った男たちの醜悪さをこれでもかと叩きつけられる。嫌悪感すら抱か>>続きを読む

神の一手(2014年製作の映画)

4.0

「鬼手」の前に撮られた作品ですが、自分はこちらを後に観ました。真面目な囲碁のプレイヤーは許してくれるのか心配になる、囲碁ノワールバトルアクションの一作目。キャラクタのアクも個性もよく、チョン・ウソンの>>続きを読む

鬼手(2019年製作の映画)

4.0

復讐のために囲碁となぜか体術をきわめていく孤独な男の生きざまが、骨太なアクションとトンチキめいていても本人たちはいたって真面目な対局模様を交えて描かれる物語。

あくまで本人たちは真面目なので、線路の
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赤い糸 輪廻のひみつ/月老 また会う日まで(2021年製作の映画)

4.0

王道恋愛SFをメインの筋に、ホラー演出がっつり入りの因縁話もあれば、愉快でファンタジーな冥界ワールドまで詰め込んで、けれど破綻せずにきっちりと纏め上げていた、愛らしいごった煮エンタメ映画。やりたいこと>>続きを読む

スンブ: 二人の棋士(2025年製作の映画)

4.0

視線や所作、時間経過を示すカットやわずかな台詞のみで、勝負の趨勢や対決する相手との緊張関係、優劣も読み取らせる丁寧な描写が卓越していた作品でした。囲碁のルールがわかればもっと楽しめる箇所が多いのでしょ>>続きを読む

林檎とポラロイド(2020年製作の映画)

4.1

記憶喪失がパンデミック化しつつある世界では、社会が体面を保つために事態はシステム化されていく。回復の見込みがなくても人道的な意味で回復プログラムは組まれ、用意された「ありそうな人生の記憶」をポラロイド>>続きを読む

デシベル(2022年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

このタイトルと予告編でわかる要素と、徐々にドラマでわかってくる要素の噛み合いがあまりよろしくないのでは、と感じた映画でした。双方それなりに面白いのにもったいないというか、詰めが甘いというか…。

まず
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フォールガイ(2024年製作の映画)

4.0

エンドロールがこの映画の一番の醍醐味でもあったハリウッドらしいネアカなアクション映画。裏方として影の扱いをされ続けてきたスタントマンにスポットをあてて、偉ぶるトップスターやプロデューサーたちに一泡喰ら>>続きを読む

PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ(2022年製作の映画)

4.0

日本統治下の京城、洒落たホテルを舞台に展開される「ユリョン」という名のスパイのあぶり出しと、個々人それぞれの思惑が交差するアクションノワール。序盤は控えめに、やがて段々と緊迫感とアクションを増してくる>>続きを読む

ひかり探して(2020年製作の映画)

4.0

台風の夜に身を投げて消えた少女。自殺事件として捜査を終結させるために彼女の住んでいた島を訪れた刑事が、住民の話や残したものから少女の境遇を知っていく。精神的に辛苦を抱えていた刑事は自然と彼女の心に寄り>>続きを読む

Summer of 85(2020年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

死という概念に憧れる年頃の青年が、死という現実に直面したばかりの青年と恋に落ちる。強烈に惹かれあった日々は夏の太陽のように輝かしいばかりで、自分そのものもどこか特別に格上げされたかのような酩酊感に浸さ>>続きを読む

アビゲイル(2024年製作の映画)

4.0

バレリーナ吸血鬼、というネタのような設定ながら、ひたすら彼女が無双していくスラッシャー系でなくそもそも彼女も全然無敵でもなく、人間たちとの色んな対決やそのほかもあり、なかなか楽しんで観れたホラー映画で>>続きを読む

終わりの鳥(2024年製作の映画)

4.0

余命わずかにして自身の生命の終わりを悟っている少女の前に、奇怪な鳥が死を運んできた。彼女はそれを拒むけれど、ただ単にそれは、母が心配だっただけ。自分との別離の準備ができていない母のために、少女=チュー>>続きを読む

ファストフード店の住人たち(2019年製作の映画)

4.0

さまざまな事情を抱える人々が夜を過ごす24時間営業のバーガーショップでのヒューマンドラマ。元金融マンのアーロン・クォック哀愁ある佇まいとぶっきらぼうに人の世話を焼く姿が街を照らすネオンのやさしい光に映>>続きを読む

ミッキー17(2024年製作の映画)

3.8

生死を繰り返し使い捨てされる「エクスペンタブル」というブラックな職に就いたミッキー。不幸続きの人生でトラウマに縛られて劣等感で一杯だった彼が、自分の重複存在たる「18」との競争や、恋人との信頼関係、そ>>続きを読む

啓示(2025年製作の映画)

4.0

信仰は本来とても尊いものだけれど、寄りかかりすぎると自己責任であるべきものまでを信仰=他所に託して、自分のせいではないなどと嘯くようになってしまう。

牧師が見た啓示は信仰が見せた神の御姿ではなく、彼
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レイジング・ファイア(2021年製作の映画)

4.0

役に立たない警察組織で孤軍奮闘するドニー・イェンと、警察組織に恨み辛みを派手にぶつけてくるニコラス・ツェーのアクションを堪能するための映画。王道ストーリーはアクションを楽しむ補佐に過ぎずシンプルに追え>>続きを読む

Brother ブラザー 富都(プドゥ)のふたり/アバンとアディ(2023年製作の映画)

4.0

市場で堅実に働く聾唖の兄と、怪しい仕事ばかり繰り返す弟。身分証を持てずにスラム街で隠れるように生きてきた彼らは、対称的な性格ながら互いの存在を必要として日々を生きている。そんな彼らの生活が淡々と連ねて>>続きを読む

プアン/友だちと呼ばせて(2021年製作の映画)

3.8

画面のお洒落さや演出の巧さに加えて、難病を抱えた人物のドラマという感情を揺さぶられやすい導線を仕込まれているので、観ててしんみりと美しいドラマだ…と浸りかけたのですが、いやただの突撃元カノ巡りじゃない>>続きを読む

教皇選挙(2024年製作の映画)

4.1

キリスト教のトップである次期教皇を選出する「教皇選挙」の行く末を、荘厳なセットと衣装、重厚な音楽と緻密で巧みな台詞の応酬で厳粛にかつスリリングに描いた緊張感に満ちた作品。

神を崇めることを生業とした
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エリザベート 1878(2022年製作の映画)

3.9

皇后という外面と自分自身のゆるぎない個性という内面。だいぶ反りの合わないその両面を、どうしても自分の内で沿わせることができなかった女性が辿った半生を、彼女のそばに寄り添うように丁寧に描いた物語でした。>>続きを読む

Flow(2024年製作の映画)

4.1

一匹の黒猫の道行きを追ううちに、水没が進んだ人の消えた世界へ深くいざなわれていく物語。猫の視線で届けられるこの世界にはいきいきと自然が繁茂し、人の手がけた建物は退廃的な美しさを湛えている。けれど静かな>>続きを読む

ビーキーパー(2024年製作の映画)

4.0

何も考える間もなく敵がどんどん散っていきます。早い早い。
何の心配もなく(むしろ敵の心配をしつつ)暴れ回るさまを楽しめる映画です。陰険なフィッシング詐欺を拳でぶちのめすのはマドンソク氏のようでとても爽
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ウィキッド ふたりの魔女(2024年製作の映画)

4.0

まったく粗筋を知らずに観ましたが、最後までどっぷりと楽しめました。歌の素晴らしさと作り込まれた壮大なセットや美しい衣装で目と耳を潤わせつつ、悪意ある排斥や他意の無い差別も描き込み、ただのふんわりしたフ>>続きを読む

ピザ!(2014年製作の映画)

4.0

スラム街の兄弟が、ピザ1枚を買うためだけに右往左往する物語。彼らの目的のためにまっすぐにあるいはちょっと悪賢くお金を稼いでいく様子を素直に楽しく観られる仕立てにされていますが、貧富の格差がもたらす、日>>続きを読む

オオカミ狩り(2022年製作の映画)

3.9

血や暴力の描写に耐性があるなら、ごはん時を避けて軽めに観られるアクションスリラーといった感触でした。血の量は凄いですが、登場人物を深堀するタイプのドラマはないので、凄いなー…とカウチポテト気分になれて>>続きを読む

サントメール ある被告(2022年製作の映画)

3.8

「なぜ生後15か月の娘を殺したのか」投げかけられる問いへの答えはなく、被告の置かれた境遇や社会問題に終始する法廷ドラマそのものは繊細で緊迫感のあるものでした。

けれどその問いが浮かんだままだったので
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アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

4.0

ステレオタイプの黒人とは、白人にとって都合の良い記号で彩られた存在に過ぎない。けれど、白人がほぼ優位に立ちがちな世の中では、それはルールとなりもする。その馬鹿々々しさがまかり通る世の中の愚かしさと小賢>>続きを読む

復讐の記憶(2022年製作の映画)

4.0

イ・ソンミンの巧みな演技に惹きつけられて見入った物語。タイトル通りに復讐をテーマにした、日本統治下の時代の因縁を軸にした話なため、日本人としては気まずさを常に抱えて見ざるを得ません。

物語はスリリン
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