ひこくろさんの映画レビュー・感想・評価

ひこくろ

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福田村事件(2023年製作の映画)

4.6

狂気によってごく普通の人までもが人間性を失っていく様子を描いた、とても怖い映画だった。

朝鮮人差別だけでなく、さまざまな問題について、映画は冒頭から強いメッセージを放ってくる。
戦争批判、貧富の差、
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名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊(2023年製作の映画)

4.5

このシリーズの最大の特長は、奇をてらったり茶化したりすることなく、王道のオーソドックスな物語を、丁寧かつ堂々と撮りあげてるところにあると思っている。
前作も前々作も、本当にストレートに話を紡いでいくの
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アリスとテレスのまぼろし工場(2023年製作の映画)

4.3

絶賛したい気持ちとうーんと思う気持ちが混在してしまう、なんとも言いづらい映画だった。

出だしからしてかなり微妙。
というか、いろいろな説明がされないまま進むので、これは作り手だけがわかってる映画なの
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マリグナント 狂暴な悪夢(2021年製作の映画)

4.5

よくこんなこと思いつくなあ、ということがてんこ盛りの抜群に面白いホラー映画だった。

ガブリエルという得体の知れない怪物が起こす連続殺人事件に、マディソンは巻き込まれていく。
なぜか、彼女は殺人の現場
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ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

4.6

これは驚いた。
パッケージやあらすじを見る限りでは、生きづらさを感じる男女が二人して「生きる道」を探すロードムービー。
みたいな感じなのだが、内容は完全に「人喰い」たちの物語。

現実にはあり得ないよ
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半狂乱(2021年製作の映画)

4.4

想いと勢いとテクニックを駆使して、やりたいことをやりきった映画なんだろうなあ、と思った。

基本的には冒頭から最後まで、めちゃくちゃなスプラッタで彩られている。
が、畳みかけるようなテンポ感と、緊張感
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リテイク(2023年製作の映画)

4.3

ものすごく自主制作映画っぽいことと、ものすごく一般映画っぽいことを、両立させている、とても面白い映画だった。

基本の話は高校生たちが夏休みに映画を撮ろうとするもので、ここに関してはオーソドックスな題
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ちょっと吐くね(2023年製作の映画)

3.4

題材はかなりシリアス。
食べたものを吐いてしまうというのは、相当に苦しいものだろう、と観ていても伝わってくる。
誰かと一緒に食べたものも吐く。
差し入れしてくれたものも食べたら吐く。
摂食障害には後ろ
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PLAN 75(2022年製作の映画)

4.6

ものすごいところを抉ってきたなあ、というのが第一印象だった。

75歳以上の人間が安楽死を選べる「PLAN75」のある世界は、悪意のある言い方をすれば「老人は死ね」と社会が望む世界だ。
もちろん、架空
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凱里ブルース(2015年製作の映画)

3.4

好みによって好き嫌いがはっきりと分かれそうな映画だなあと思った。

前半は特に何か説明されることもなく、延々と日常シーンが描かれる。
主人公のチェンが医師で、老女医とともに村の診療所で働いていること。
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ブラック校則(2019年製作の映画)

4.1

とにかく脚本が上手いのひと言に尽きる。

観る前までは、厳しい学校側に対して主人公をはじめ生徒たちが立ち向かう話か、理不尽な校則をコミカルに描いて見せる諷刺のような話だろう、と思っていた。
が、脚本は
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.3

静かで繊細なのに、芯はとても熱い、ラブストーリーかつ創作の物語だと思った。

中盤まではミステリー的な要素が非常に面白い。
孤島で暮らす姿を現わさない貴族の娘。
彼女の肖像画の顔の部分を塗りつぶしてし
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春に散る(2023年製作の映画)

4.5

とんでもなく熱いボクシング映画。でも、それだけじゃない。
人の生きざまをこれでもかってぐらいに見せつけてくる作品だった。

世界チャンピオンにもなれたかもしれない元ボクサーの広岡は、アメリカで事業に成
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ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

4.8

ものすごく挑戦的な形で、考えることの意味や厳しさを突きつけてくる映画だと感じた。

舞台は閉鎖的で宗教色の強いある田舎の村。
そこでは、女性たちが子どもの頃から毎晩のように薬で気絶されられレイプされて
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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

3.8

それぞれの人物ではなく、人物同士の関係性が全体の雰囲気を生み出している、といった印象の群像劇だった。

財閥令嬢でわがままでワンマンな社長のモーリー。
誰からも好かれて信頼されているチチ。
チチの恋人
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ゴロン・バタン・キュ ー(2015年製作の映画)

4.3

明るさっていうのは、生きる力強さなんだよなあ、としみじみと思う。

ホームレスのあたるくんも佐々木さんも、世の中から見ればはみ出し者のダメ人間だ。
人生の落伍者と見る人だっているだろう。
でも、二人は
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巨人の惑星(2021年製作の映画)

4.1

ずいぶんと薄気味悪い映画だなあ、と感じた。

ホンダという男がとにかく気味悪い。
人から借りたマンガを読まずに返しもせず捨てる。
部屋のなかでもコートを着て、外にはほとんど出ない。
ユニットバスをシェ
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タイム・クライム(2013年製作の映画)

4.2

エグいなどという言葉では足りないほどの、あまりに残酷な伏線回収の数々に思わず唸ってしまった。

24時間後の同じ場所にしかいけないタイム・トラベル。
しかも、未来に滞在できるのは15分のみ。
という悪
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共犯(2013年製作の映画)

4.4

死を通じてさまざまな秘密が明かされていく、とてもやりきれないミステリーだった。

前半は、「スタンド・バイ・ミー」を彷彿とさせる。
ひとりの女の子の死の真相を探っていくことで、三人の友情がどんどん深ま
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パップス(1999年製作の映画)

4.0

まるで本当に起こった事件をリアルタイムで見ているかのような感覚になった。

銀行強盗を起こす主人公のスティービーとロッキーはまだ13歳。
警察側も手が出せず、人質になった人たちもどこか二人を侮っている
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高瀬舟(1988年製作の映画)

4.1

(原作は森鷗外の有名な作品ですが、読んだことはないのでその前提で)

なんとも不思議な感じの時代劇映画だと思った。

派手な殺陣があるわけでもなく、登場人物もほぼ四人と極端に少ない。
舞台は川を下る船
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.5

こんなにも強く「音」を意識させられるとは思っていなかったので、まずそこに驚いた。
BGMなどは一切なし、たぶんあえて整音もできるかぎりなしでやっている。
だから、映画にはノイズや雑音も含めて、日常の中
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主戦場(2018年製作の映画)

4.5

ものすごく刺激的で勉強にもなる。そして何より、いろんなことを嫌でも考えさせられるドキュメンタリー映画だった。

扱われているのは慰安婦問題で、その実態に迫っていくのはもちろんだが、映画はそこに留まらな
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ルクス・エテルナ 永遠の光(2019年製作の映画)

4.6

いったい僕は何を観たんだろう。その思いしか湧かない。

映画撮影の内幕もののように作品ははじまる。
女優のシャルロット・ゲンズブールと監督を務めるベアトリス・ダルは、撮影される火炙りについてとりとめの
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帝都大戦(1989年製作の映画)

4.0

意外と言ったらとても失礼だけど、これは面白かった。

壮大すぎる話をあまりにざっくりとまとめすぎて、結果、嶋田久作演じる加藤の印象だけが強く残ってしまった前作に対し、原作から離れて、話や登場人物をきっ
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京城学校 消えた少女たち(2015年製作の映画)

4.2

うーん、って思わず唸りたくなるぐらい、とらえどころのない映画だった。

病気の少女だけが暮らす全寮制の学校。
やけに規律に厳しい教師たち。
日本名を付けられ片言の日本語で会話する女生徒。
誰もが何かを
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ラストサマーウォーズ(2022年製作の映画)

4.1

映画製作のワクワク感に満ち溢れた、とても愛らしい映画だった。

出だしの雰囲気がわりと「地方都市主導の低予算映画」や「学校教育で流される優等生的映画」っぽかったので、正直かなり不安になったが、人集めの
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ソウルメイト/七月と安生(2016年製作の映画)

4.7

伏線や対比、物語の構図など、非常に凝った仕掛けを用いながら、圧倒的なまでに情感溢れる世界を描き切った、すごい映画だと思った。

自由奔放で何をしでかすかわからないが屈折もしている安生【アンシェン】。
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.5

(かなりの長文です。すみません、今回ばかりは許してください)

宮崎駿って人はこれまでずっと一貫して「自分のやりたいこと」をアニメでやってきたんだな、とあらためて思わされるような映画だった。

たぶん
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スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.2

アニメーションっていうのはこんなにも自由なものなんだ、ということを心から感じさせてくれる映画だった。

基本は3DCGアニメなんだけど、とてもそうは見えない。
リアルとか、セル画っぽいというのではなく
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青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない(2023年製作の映画)

4.4

(原作未読。テレビアニメと前の映画は観ている前提での感想です)

思春期症候群という名の怪現象に振り回されながらそれを乗り越えていく、というこれまでの物語のパターンとは異なり、この映画では怪現象の要素
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M3GAN/ミーガン(2023年製作の映画)

4.0

「機械の反乱」というSFでは王道のテーマを、見せ方と現代性でもって上手く料理した映画だなあと思った。

AIの造形が無表情な美少女というのがまずいい。
ミーガンが表情を変えずに、人間を殺していく様子は
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怪物(2023年製作の映画)

4.8

圧倒された、というひと言しかなかった。

とにかく徹頭徹尾、人間が恐ろしい。
シングルマザーの早織の視点で描かれる最初のパートでは、母親の苦悩が描かれる。
大切に思っているはずの息子のことがわからない
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ガール・イン・ザ・ベースメント(2021年製作の映画)

4.6

映画「ルーム」の元となったフリッツル事件を描いているのだが、これがとんでもなく胸糞悪い。
サラを監禁する父親ドンの異常さは吐気を催すほどだ。

ドンの異常さの本質は、自分を絶対的に正しいと信じていると
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フォーエバー・パージ(2021年製作の映画)

4.1

(ドラマ以外の映画はすべて観ているうえでの感想になります)

このシリーズの面白さの核は、二つあるんじゃないかと個人的には勝手に思っている。
ひとつは、パージという殺人が許される混乱の日をどう生き残れ
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10 クローバーフィールド・レーン(2016年製作の映画)

4.5

ものすごく面白い仕掛けの映画だった。

タイトルで堂々と「クローバーフィールド」と謳っているので、前作を観ている人はそういう話なんだろうと見当が付く。
が、登場人物たちはみんな現在何が起こっているのか
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