キューでつつかれた玉どうしがぶつかるみたいに抱き合える夜気のなかで、きっと鳥のさえずりを恐れていた
たまたまそこに居合わせただけの、物語になり切らないロマンスの切れはしにだったら、溶けちゃいそうなほど>>続きを読む
急な流れの歴史をよそに、息を止めているかのように穏やかな時間の流れだけがある
路面電車が横切る間、飛行機が動き出す前、家の中レコードに針を落とすのと同じ空気がただよう
みんな待っているけれど、映画は意>>続きを読む
色々な人がいて、みんな好き好きに色々なことを言うよ
だけど気後れや早合点が雑にコラージュされた妄想を急かすから、誰もありふれた幸せにありつけない
過不足のないやさしさは難しいけど、線路が拓けた先に永遠>>続きを読む
阿漕な信号が点いては消え、消えては点いてを繰り返している
人生の意味が分かったその日から、灯りを求めてさまよう人たちのスペクトラムを、ただじっと見続けている
ずっとじっとしていられない彼方をよそに、見>>続きを読む
まぶたがあついよ、ありがとさん
めずらしい血を採取するためだけの車や、本当は手の届かなかったコートが、ふたりのリズムを揺らしている
いつかすべて土に還る、と言い聞かせていたのに、ずぶ濡れになりながら守ったレンガで造った家が、荷車を引>>続きを読む
今以上を望む当たり前があるから、自転車は走るし、よくわかんない葉っぱだって育てられる
けれど望んだからと言って必ずかなう訳でもなく、そもそも望むにも資格がいる
届くか届かないかのはざまにあるどす黒い嘘>>続きを読む
人生は信じるに足るのかを、訝しむ目で、ぎこちない微笑みで、問いかける
ご褒美をもらっても、食べたら無くなってしまう
そのうちご褒美ももらえなくなる
わかり合えない、混ざり合えないの先にある孤独は、食べ>>続きを読む
自分の影を見失わないように荒野を走り続けていれば、それが道になっていくことをいつしか体が覚えていた
誰も変えることができないのに、誰もが変えようとするから、本当の自由に気付けない
ダンボールはリフトやトラックの背中に乗せられて呆気なく容易くどこにでも行けるのに、猫たちは
守りたいと守られたいがせめぎ合うけど、むかし見限った道を初めて会うような顔して歩けるほどしたたかじゃないし
穴のあいた部屋のなかにあったきれぎれのフィルムをつなぎ合わせたら、月に追われてるような気がしてた夜が応えてくれる
誰かの悲しい報せは私にとってどれくらい悲しかっただろうか、同じ痛みや傷がなければ分からないままなんだろうか、と綺麗なドレスに不釣り合いな靴を横目に
おためごかしの繰り返しに気づかないままじゃ、思い出せ>>続きを読む
雨降りが憂鬱になったのはいつからだったかな、もっと青くもっと青く
いとをかし、でも、かわいい、でもなく、すてき!
逆立ちしちゃうほどのすてき!の連続
何度も転んでその度起き上がる愚かなマトリョーシカは、けれどもなぜか少しずつ顔つきが勇ましくなっていく
思い出して恥ずかしくなるほどの歴史も、笑い話に変わるような大切な痛みになるまで消さない
海のように集まったレニングラードの人々は互いの腕を組み、その後に右手を挙げてピースを作った
兵士となることを誓ったヴィリニュスの人々みたいに
波打ち際に追いやってしまった悲しい歴史は、誰かにとっては悲しくもなんともなかった
手や足や、言葉や声さえも戦車になって違う命を踏みつぶしていくのに、溺れるほどの血が流れても、誰かにとっては沈むほどでは>>続きを読む
今の今まで心や体を縛りつけようとしていたのはなぜだったのか、何に対して、誰に対しての恐れだったのかを、膝を抱えたままでは知ることはできない
ブラインドが開いた窓は、水面が返した光の漣を部屋に連れてくる>>続きを読む
ハイウェイのへりも、休憩所の芝生も、がらんどうの廃ビルも、中古の家具置き場も、歩道橋の階段の隅っこも、遊び場になるはずのない場所だった
ツェテンなんてどこにもないことを、誰もが知っているはずなのに、誰>>続きを読む
測量器と双眼鏡のレンズを覗き込めば、じゃれあったあの日や、知らないはずの乗り物が見えてくる
ここはいつで、あなたはどこ
ミネラルウォーターのボトルが巨大だったのは、体が小さかったから
落ちて弾けたそれ>>続きを読む
あなたに私はどう見えているの、とカメラに問いかける
返事をする代わりに映画がある
調子のいい歌ばかり歌える自分と、空想に伴わない体を従える自分とを見比べる、その溝の深さに、悲しみと少しの悦びを詰め込む>>続きを読む
積もった雪がノックの音を吸い込み、暖かい場所でタイヤはパンクする
さっき歌った鼻唄がふいにリンクして、ニセモノをあぶり出す
物語はつくられるのではなく、最初からそこにあるのだと言うように
鏡の中の神様>>続きを読む
誰かの白が誰かの黒であるだけなら、まだ良かったかもしれない
本当は灰色ばかりだった
そもそも何のために、誰のために白黒つけたかった?
私が望んでしまっていただけだった?
傷つかないために傷つけることに>>続きを読む
窓拭きやおもちゃのトラックに行く当てがないのなら、小説の方が勝つだろう
すべてわかることができるうちに終わらせたかったのは、疑うことも疑うような気配に疲れたから
欲しいものがまだあるのにと他人は言うけれど、スキットルのウイスキーより、グラスのボルドーを名残り惜しく舐める方>>続きを読む
触れ合いを食べて栄養にして、孤独の力を大きくする
デフォルメとパターンの間にある、孤独の力を
わかったふりをしたこと、確かなモノが実は不確かなモノだったこと、が一度手にした光を失ったことでかえってべつの光にさらされる
風にあおられたレジ袋みたいに、飛ばされて、汚れて、最後は汚す
代わりが効かない名前も、最初からなかったかのように空しく響いてる
諦めたことで決着はつくかもしれないけど、それは解決したことにはならない
だから、諦めたくない理由を泥の中から探す
泥から抜け出した先にあった音のない世界では、張りつめた空気の気配だけがこだまし、色を忘>>続きを読む
わけわかんない涙のあとに、なぜか優しい光に包まれる、あの感じを忘れない
開いた記憶を閉じるまで、前だけ向いていこう
だって大事な仕事は、他人には言わないほうがいいから
ミミズはとぐろを巻くのをやめない>>続きを読む
誰も死なせない覚悟を持つことは結構だけど、それはあなたが犠牲になることを許す理由にはならない
体はいつも光が溢れる場所にあるのに、心はずっと地下室のなかにいるみたいで、カーテンを閉めきった暮らしにも慣れちゃったけど、実は値段のないやさしさに飢えていて
無邪気な風に吹かれて葉は飛ばされてしまうけ>>続きを読む
ヘッドライトの明かりに照らされて踊る姿を撮る目は、遠くのものばかり見てしまう男の目と同じ
一生かけても見れない夢を一瞬のなかに望んでしまった者は、同じ血を持つ者に心を引き裂かれてしまう
だから、真ん中>>続きを読む