えにしさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

3.9

ヘッドライトの明かりに照らされて踊る姿を撮る目は、遠くのものばかり見てしまう男の目と同じ
一生かけても見れない夢を一瞬のなかに望んでしまった者は、同じ血を持つ者に心を引き裂かれてしまう
だから、真ん中
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

2.0

ぐるぐる回るランドリーになった気分で、転がる岩になった気分で、できるだけdumbでsillyでstupidな、無意味なことばかりしよう

崖上のスパイ(2021年製作の映画)

3.6

目の前にいるあなたは、明かりを灯す人なのか、それとも明かりを消す人なのか、雪が隠す
夜明けを望んでいたのは、太陽が眠る隙間に身を置き続けていたからかもしれない

少年たちの時代革命(2021年製作の映画)

2.7

秤に乗せられるほどの重さもないものしか持ってないのに、気持ちは先に走っていくばかり
情報は足場を崩すから、聞こえすぎた声たちを心の鏡に照らし合わせても、独りよがりに削れていくだけ
だったら、一緒に負け
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理大囲城(2020年製作の映画)

-

幼気な体に、似合わない心を持たざるを得ない日々が続いていくことに、魂が汚れていく
青く濁った水に塗れて、涙が隠されてしまうから、カメラがそこにある
暴力の正しくなさを勝ち獲るために、暴力の正しさを知る
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土を喰らう十二ヵ月(2022年製作の映画)

3.0

慌てて食べたタケノコも、一緒に擦ったゴマで作った豆腐も、もう二度と同じ味を作れないことを分かっている
分かっているからこそ、独りでもいただきますを言う

柳川(2021年製作の映画)

4.3

選ばなかった道に叶わなかった夢を求めてしまうことも、折に触れて答え合わせの衝動に駆られてしまうのも、きっと満月が欲しくなったから
境界の川を舟で滑って、違う言葉で話し合って、曖昧な記憶を手繰り寄せるの
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コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

3.0

勘違いに気づかぬふりをしていたって、強がりがずっと続くわけでもない
今必要なのは、はりぼての言葉やビデオカメラなんかじゃなく、一緒に船に乗ってくれる冒険者だった
ヘタクソな似顔絵と、間違いだけど間違い
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タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター(2023年製作の映画)

3.9

フロイトの言葉、ピカソやモネ、カルテットの音色、そして、パリの売春婦と同じように描いたクロッキー、の中にある、今しかない鈍色の輝きを信じる
幸せな呪いをかけてくれたから、悲しみに手を振って、笛を吹けた

バルド、偽りの記録と一握りの真実(2022年製作の映画)

3.5

3匹のウーパールーパーはどこかに行ってしまったけれど、そうじゃなかったら、今ここにいることができなかった
歌うように、踊るようにキミを生きていくのだ、このはじまりの荒野から

バビロン(2021年製作の映画)

2.5

偽札のインクが雫で落ちるように、ただのメキシカンのメッキも剥がれていく
身の程知らずの憧れを抱いた日々が、ずっと夢の中みたいな熱であふれた記憶が、三原色溢れるバカデカい四角に、白く染められていった

別れる決心(2022年製作の映画)

3.0

あなたのことをわかりたいと思っていたけれど、本当にわかりたかったのは、自分のことだったのかもしれない
永遠に海に囚われてほしいから、あなたの渇きの種になる、目薬でもクリームでも潤せないほどの

コペンハーゲンに山を(2020年製作の映画)

-

独創を通そうとすることには金も時間も理解も要るみたい、この世界では
結局非常階段のコスト論争は何処へ、コンクリートぽかったけれど

夢の裏側 ドキュメンタリー・オン・シャドウプレイ(2019年製作の映画)

-

スタントみたいな撮り方するカメラマン
クランクアップの喜びでシャンパン(?)
独裁者はまず映画をはじき出す

シャドウプレイ 完全版(2018年製作の映画)

2.5

ずっと夜みたいな暗がりの中で、一等明るい光を放つのはあの店にいた君だった、はずなのに、鈍色に光る刃やのたうち回る炎が無ければ、会えなかったかもしれない、なんて

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

3.9

大はもっとアウトするイメージを持ってたけど、馬場さんの解釈もすごくいい
玉田のソロ、森山威男イズム、石若さん…
ケニーギャレット聴きたくなった

バビ・ヤール(2021年製作の映画)

-

剥ぎ取られた服が、数分前までは動いていた命を覆い隠す
群衆の狂騒が、憎しみの連鎖を覆い隠す
都合の良さが、奪うことの自覚を覆い隠す
その都合の良さも、沈黙が覆い隠してしまう


「歴史を認識することこ
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落穂拾い(2000年製作の映画)

-

情報も、映像も、じゃがいもみたいに拾えたらいい
膝を曲げ、腰をかがめ、手を汚しながら、拾えたらいい
終わったマルシェも、すり切れたハートも、針のない時計も、imageにとって栄養になる

ダゲール街の人々(1976年製作の映画)

-

ネガの街にたたずむポジの人たちの営みで、フィルムが香る
肉が切り分けられるのを待つ時間や、じかに脇に抱えたバゲットが、あるいは、夜更けまで響くミシンを操る手や、物憂げに店の外を眺める顔が、裏通りを繋げ
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5時から7時までのクレオ(1961年製作の映画)

-

リバースのカードをめくるように、いくつもの景色を、人を、巡っていく
そこかしこにある鏡やショウウインドウに映る、変な顔した女がアンセムを歌える時は、一体いつ
めくるめくランデ・ヴーが生んだ孤独と幸せに
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そばかす(2022年製作の映画)

2.5

切ないけど寂しくはないトキメキに身を焦がしながら、行く
前書きがなくても歩けるようになるまで、行く
大切なものを大切にする、どうでもいいものにはさわらない
誠実さってそれだけなんだ

人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版(2022年製作の映画)

-

これ以上ないほどの孤独が、垂直の壁や均されていない道にある
大切なものを大切にするために、理解できない、のその先にある孤独からはじめる

ファイブ・デビルズ(2021年製作の映画)

3.0

簡単に反転する感情が友達を悪魔に変え、遠い日の匂いが子どもを魔女にする
捨てられないifの数だけ傷つけたその痕を、今は撫でられるかな

冬の旅(1985年製作の映画)

4.2

はじめは怒りだったのかもしれないけれど、死を呼び水に、やがてそこからいちばん遠い感情を抱くようになる、なれる?
ずっと幻の中に身体を置いているから、バガボンドがエトランゼにならない世界を望めないんだ
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ラ・ポワント・クールト(1955年製作の映画)

4.4

洗濯物をゆらす潮風は、匂いのない愛の話や、あどけなさを奪う黒色までをも運んでくる
姿形がよく似た別々の生き物は、同じ場所で違う景色を見ている
枯れた花に水をやるような日々や凪の水面をうつした心が、祭り
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百年の夢 デジタル・リマスター版(1972年製作の映画)

3.3

いちばん大切なものは、卵の殻の中にある
人に話せるくらいなら、その程度のことだよ

アンデス、ふたりぼっち(2017年製作の映画)

1.5

本当は、冷たく渇いた切ないにおいがする映画のはずなのに

マッドゴッド(2021年製作の映画)

4.5

入れたものと出たものが、巡り巡ってべつの銀河をつくって、また壊していく
争いも、後悔も、血も涙も、今ここに在る奇跡の前ではちっぽけだったことを知れたから、俺たちは永遠のアンモナイトになれる、花の色の濃
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イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.5

それはきまっていつも唐突で、たぶんたくさんの人に、頭がおかしくなったと言われるだろう
でもこれ以外方法がなかったとしか言えない、何よりも誠実であるためには、痛みをもって別れる覚悟を持つしかないのだ
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あのこと(2021年製作の映画)

3.6

傷と秘密、分かち合えない同じものを抱えて、初めて始めることができる
火で炙った鉄の棒を取るための手ではなく、筆を執るための手で在れるように

ペルシャン・レッスン 戦場の教室(2020年製作の映画)

3.6

2840の名前は、2840のでたらめな言葉になった
でたらめな言葉だけど、間違いではなかった

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)

3.8

4択に自分を当てはめようとするたびに、思い出して、惨めになって、涙が出てくる
虫の声に耳すますようなやさしさを携えて、一緒にバスに乗れたら


シャロン・ヴァン・エッテン

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ(2021年製作の映画)

3.0

プリズムの輪や光の玉が、びしょ濡れのみすぼらしい子猫に似ているふたりを照らす度に、温かいバチバチが生まれた

やまぶき(2022年製作の映画)

1.8

ショベルカーで切り崩した石も、斜めった岩山を転がる石も、목소리を吸い込む
崖の上に咲いたヤマブキと、サイレントスタンディングする山吹はイコールではない