NSさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

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グリーン・ナイト(2021年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ちょっと長くないか。

謎めいたものがほとんど謎めいたまま終わっていく、全篇が啓示的な夢みたいなイキフンに包まれていて、それは嫌じゃない。

俺もやっぱり土壇場で逃げるな。
逃げてこそ、だとも思う。
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.0

荒川と、ケイコのストイックだがスタティックではない佇まいと、会長の「ヨシっ」。

荒川沿いの、現在の日本の、街の風景。

2023.01.01 映画館 フォーラム山形

宮松と山下(2022年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

言わば動態の最中にある劇中人物としての女優がたまさか艶やかに見えて来るとしたらそれは見るべき映画だし、あるいは見知っている筈の俳優の面影がふとした狭間に素知らぬ風に見知らぬ相貌に見えて来るとしたらそれ>>続きを読む

桜色の風が咲く(2022年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

目が、耳が、見えなく、聞こえなくなっていき、やがて触れる(触れ合う)だけの世界に閉じられていく(そして開かれていく)人物の物語を、目で見て、耳で聞くことだけで表現する映画として描く。その在り方自体の倒>>続きを読む

天使のたまご(1985年製作の映画)

5.0

世界の来し方行く末、その時の連関から断絶した、廃墟としての今。

現実の影絵ならぬ影絵の現実。時代的なモードの元にありつつ、しかしこれはこれでなければならなかっただろう(置換不可な)表現の域にある美術
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王立宇宙軍 オネアミスの翼 4Kリマスター版(1987年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

「神の物語」から「星の世界」へと続く道程を繋ぐのは人類の歴史で、それは言わば、子供から若者、大人、そして老人へと至る一個の人間の生の過程と、縮尺こそ全く違えど確かに照応する。あるいは照応するのでなけれ>>続きを読む

花様年華 4Kレストア版(2000年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

リビングスタチューの恋、ならぬ恋。あからさまな行為に及ぶことは、言わばあらかじめ禁じられていて、それ故に文字通りに具体的な交渉をもたぬ男女の交情は、何やら生ける立像同士の交情の様にも見えて来る。
そん
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ある機関助士(1963年製作の映画)

5.0

「ある機関助士」としつつ、しかし特定のある人物に取材した作品などというものでは全然ない。

フィクションもドキュメンタリーもない、映画は映画なんだという絶対感。まるで凝縮されたスチームパンクSFの世界
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さかなのこ(2022年製作の映画)

3.5

よい意味で、昼日中の休み時間の様な、浪漫的で牧歌的な空気をまとう、のんさん推しではないけど、やっぱりのんさんならではの映画。「男か女かはどうでもいい」。本当は、誰もがそうだったのかも知れない、本質的な>>続きを読む

ルパン三世 カリオストロの城(1979年製作の映画)

5.0

じつは宮崎駿の映画のファーストカットは大抵凡庸だ。
しかし走り出したら止まらない。
(『カリオストロ』のルパンはとくに。)

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島(2022年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

『渡り鳥』か『宮本武蔵』か、などと想起させられる往年の邦画プログラムピクチャー的な定型的な筋書と様式的なケレンに掛けた演出は、細かな挙動や表情から存在感を見せる人物やMSの「演技」に結実して、作品をき>>続きを読む

犬鳴村(2020年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

幽霊というのはじつは映像そのものなんじゃないか。映像なのにそこに「いる」から怖いんじゃないか、と思える訳で。(飛び降りの反復再生は気持ち悪い。自動映像化した人の像。)

被写体を客体的に撮るということ
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こちらあみ子(2022年製作の映画)

5.0

世界が幽霊か、あるいはならばむしろ反転して自分自身こそ幽霊か、みたいな孤絶を我知らず生きざるを得ないあみ子さん。
我知らぬ故にこそそんな際どい場所にも辛うじて留まっていられるのやも、とは確かに思える。
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はい、泳げません(2022年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

言わば水面下、つまり意識下の世界の話になっていて、主演、助演に長谷川博己や綾瀬はるかというスター俳優を据えていながらにして、それでも影あるトーンの画面の中に、ともすれば見えない心の淵を垣間見させる様な>>続きを読む

アネット(2021年製作の映画)

3.3

後追い、言語的で説明的で、ミュージカル映画ってこんなんだっけ?

犬王(2021年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

音に体がついてくる、のではなく、体に音がついてくる。

映画としてのミュージカルって、音がつく前から映画の中にあったんだと。
否も応もない、端的な動きとして。

「物語」の成り行き行く末には、『火の鳥
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ふたつの部屋、ふたりの暮らし(2019年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

二羽の鴉?に二人の存在を擬えるようなアヴァンタイトルから転じて、現実の二人を初めて描き出すに、歳老いた二人の性的なむつみ合いをこそ、まず鏡越しに描き出す。そしてさりげないタイミングで明かりは消されて、>>続きを読む

MONOS 猿と呼ばれし者たち(2019年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

野生動物の黒目が大きく白目がほとんど見えないのは、視線の動きによって「敵」に自分の次の動きを悟られないようにする為ではないか、という説はあるらしいが、人間がいかに野生に近づくように見えても、やはりその>>続きを読む

LION ライオン 25年目のただいま(2015年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

たとえば、作品序盤の、インドの地で少年が一人彷徨するパートだけを、一種の短編作品として切り抜くとしても、それはそれで十分に成立する様にさえ見える。
発する言葉もほとんどないまま、見知らぬ地を彷徨させら
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サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

2.8

このレビューはネタバレを含みます

劇中で否定的な未来像として示唆される、いまや一般化した動画消費のような、即ちコンテンツ的な映像消費を否定的なものとして捉えるなら、当の此の映画自体が映画としての場面や画面の中で空間や時間を尊重する意思>>続きを読む

ワーロック(1959年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

正義のない力と、力のない正義。
「私が法だ」という認識と「俺が法の番人だ」という認識の、似て非なる在り方。

単線的ならぬ複線的な物語の構図の中で、過渡期的な「私」と「公」の葛藤が個の実存の葛藤として
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