中庭さんの映画レビュー・感想・評価

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新説カチカチ山(1936年製作の映画)

2.0

大砲を喰らった地蔵様の首がもげ、落ちた後にファンシー化して目を開く。特に親玉狸に多かったが、声と口の動きがほぼ同期している瞬間が何度もあって驚いた。
膝を直角に上げて歩いたり、砲口がくねくね曲がるのは
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夏至物語(1992年製作の映画)

1.4

山本直樹の短編漫画みたいな。
水に濡れた畳と、それを踏む足先を無理なく追ったカメラの軌道が良い。
透ける陰毛も、足で転がしたきゅうりをそのまま口にするワンショットも。
腹をくだした後、千切った新聞紙の
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サンゴレンジャー(2012年製作の映画)

1.0

風に凪ぐ草の緑色が作りものに見えるほど美しかったり、曇天の下で行われる切り替しのショット一つひとつの暗さの深みが素晴らしかったり、沖縄のロケーションが作る映像の力が物語と関係ないところで爆発している。>>続きを読む

ヒア&ゼア・こことよそ(1976年製作の映画)

3.8

「目と言語=舌のあいだには、激しい闘いがあります。目とは人民であり、言語=舌とは政府です。政府がみずからの見ることについて語り、それに応じて行動するなら、結構なことです。それは医者の言葉なのですから。>>続きを読む

ありきたりの映画(1968年製作の映画)

3.3

ジガ・ヴェルトフ集団名義の作品の中でも上映時間長め。政治運動のフッテージに由来する音声はほとんど流れることなく消失し、顔面を失ったメインの男女たちの代替として見ればいいのか、闘争者たちの表情はいきいき>>続きを読む

ライフ・アクアティック(2005年製作の映画)

3.4

擬似家族の境界が何度も更新され、感情の落とし所などどこにも作らないというウェス・アンダーソンの物語演出への姿勢が貫徹されている。近作では小さな空間と別の小さな空間を短くかつ直角に切り刻んで繋ぎ固有の空>>続きを読む

ディメンシャ13(1963年製作の映画)

2.7

オープニングで演出されるおどろおどろしい音楽とイメージ映像の合成の組み合わせは、後にコッポラがあらゆる自作で繰り返し作るコラージュたちに通ずるものがあった。
モノクロを採用した画面においては、屍体と人
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生きるべきか死ぬべきか(1942年製作の映画)

4.0

総統を演ずる役者が雑踏に立つ。ガラス越しに店内を物色した後振り返った途端、店員たちは慌てふためき、内側のカーテンが閉められ、人格が分裂しかけるほど演技に熱中していた男は再び自覚的な演技の時間へ舞い戻っ>>続きを読む

ファウスト(2011年製作の映画)

3.7

ホムンクルスの崩れた顔面を覆う血糊一つとっても隙のない、ある意味無駄のなさすぎる映像の連なりに圧倒された。ファウストとマルゲリーテが飛び込んだ湖面の波紋と、間欠泉の噴き出す穴に収縮する波紋が重なる。

第3逃亡者(1937年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

演奏中のドラマーにカメラがこれほど寄った映画が、これ以前の古典にあったかどうか。ドラムという楽器の演奏スタイルにとりつく物理的な身動きのとれなさを逆手にとったサスペンス演出の歴史においては、間違いなく>>続きを読む

ヤクザと憲法(2015年製作の映画)

3.0

二代目清勇会の面々の顔一つひとつを丹念にフレームにとらえ、これ以上ないほどに歴史を雄弁に語る背中の刺青までも盗撮していく(対象が服を脱ぎ視界を奪われた瞬間を狙う)執念に感銘を受ける。とりわけ事務所リビ>>続きを読む

夏の娘たち~ひめごと~(2017年製作の映画)

3.5

境内で繰り広げられる無慈悲なメロドラマや、決して男の立ち入らない食堂における女たちの会話。自分の過去を生き直す娘の前で何度も卒倒する母親。廃墟での情事を済ませた直美が浴衣姿で帰り道を歩く一瞬のショット>>続きを読む

ドラキュラ(1992年製作の映画)

4.1

縦横無尽に発生する影の一つひとつが、各構図において単純に焦点化されることなく次々と別の演出が重なり、目線が追いつかない。上からベタッと着色されたような赤と橙、青の映像効果と限りなく演劇的な装飾具の数々>>続きを読む

無限の住人(2017年製作の映画)

1.1

木村拓哉がぼろ切れのような「死にかけ」を何度も反復して演ずる。国民的男性アイドルの肢体が切断されては何度も元に戻るさまは愉快であらゆる欲望が錯綜していく興味深いもので、木と鎖分銅を用いて切られた腕の模>>続きを読む

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ファーストカットがスラム街の全景であることはあの音楽と字幕のリズムで容易に想像できるが、それでもあの始まりと長回しの連鎖には興奮させられた。
VRを外した場面での異様なほどの映像のざらつきは、『ミュン
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いぬやしき(2018年製作の映画)

1.5

佐藤信介の傑作『アイアムアヒーロー』に散逸していた、一つのショット内における映画的な勝利を達成している瞬間があまり見受けられなかったように思える。興奮すべきは空から降り立った犬屋敷が地面を転がり、勢い>>続きを読む

バリー・シール/アメリカをはめた男(2016年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

中米の密林を滑空する飛空機が木々の上部すれすれを飛びあわや墜落寸前、その運転席に終始ハラハラした顔のトム・クルーズが乗ってるんだから、それだけで楽しいに決まってる映画。底部の穴から落とされる麻薬の包み>>続きを読む

ドライヴ(2011年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

【再鑑賞】
車内という極端にスペースを制限された空間において、ニコラス・ウィンディング=レフンはカメラをほとんど車外に配置することなく運転シーンの数々を撮り上げている。それは主に運転手の表情をとらえる
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ゴッドファーザーPART III(1990年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

孤独な回想を経てゆっくりと死に至ったマイケルを包む日光は、これまでに登場した幾つものロケーションで取り入れられた柔らかな陽光や閑散とした線の細い斜光と比べ、何に最も近かったか。誰にも支えられず一人で地>>続きを読む

空海 ーKU-KAIー 美しき王妃の謎(2017年製作の映画)

2.7

【インターナショナル版を鑑賞】
怪猫から春琴を救った空海と白楽天への感謝の宴の場で我を忘れる陳雲樵をどうにか止めようと試みるシークエンス。四方を囲む襖戸の背後という盲点を巧みに用いた古典的発想のアクシ
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ゴッドファーザーPART II(1974年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

釣り船の上でアル・ネリに銃殺されるフレドを見やるマイケルが湖畔の家の窓越しに立ち尽くしているショットのあらゆる部分に配された、黒みの層の充実度にため息がこぼれた。窓枠の中、水面に浮かぶ影、家の外枠から>>続きを読む

ヴァレリアン 千の惑星の救世主(2017年製作の映画)

3.3

気取らぬ明るさを装いつつも、同様に巨額の製作費を投じられた御大の『レディ・プレイヤー1』と比べ、切実な内容と出来栄えとなっているSF大作。
腕の先のみをロックされたヴァレリアンの、二つの空間を股にかけ
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ゴッドファーザー(1972年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

孫と遊ぶヴィトー・コルレオーネが、孫が走り去った一瞬の隙に心筋梗塞を引き起こすときの柔らかな陽光を、我々はシチリアの寒村に降り注いでいた日照の強度と無意識に比較している。序盤から画面内の光量は極端に抑>>続きを読む

白い肌の異常な夜(1971年製作の映画)

3.4

叩きつけられた亀がショットを経由して生命のない物体へと変貌するという一見何気ないはずの瞬間に、女たちとのいざこざや秘密の暴露合戦、また身体の切断というエピソード以上に「致命的なことが起こった」と直感さ>>続きを読む

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書(2017年製作の映画)

3.5

『BFG』を除き、『カラー・パープル』(1985)以来の女性主人公が配されたスピルバーグ新作。
ワシントン・ポストの社主として毅然とした歩き姿で会議場へ向かうメリル・ストリープが画面を縦にはしる階段を
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友よ、風に抱かれて(1987年製作の映画)

3.6

狂い行く兵士の内面性をひっ迫した映像コラージュで描き出そうと試みられた『地獄の黙示録』と対をなす、コッポラ作のもう一つのベトナム戦争映画。前線に若者を送り出し続ける「死神」としての中年軍人の、中間管理>>続きを読む

予兆 散歩する侵略者 劇場版(2017年製作の映画)

3.5

異なる時間帯の大気や雨に打たれる鳥のおもちゃの陰鬱な姿など、黒沢映画にほとんど登場したことのないはずのスタティックなイメージ描写によるインサートが度々現れ(ドラマ版の各話の切り替えのタイミング?)、か>>続きを読む

怪物はささやく(2016年製作の映画)

1.9

地獄の底から響いてくるようなリーアム・ニーソン演ずる怪物の声に何度も驚かされた。うめき声や雄叫びにはおそらく別の音が加えられていたはず。最後に母親の部屋にあったぼやけた家族写真に注目。
物語を話せるよ
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君の膵臓をたべたい(2017年製作の映画)

1.7

北村匠海の、他人に興味がないこととは関係なく、対象を真っ直ぐに見やってしまうあの若々しい眼差しをあえて継承せず、終盤に至るまで焦点の合わない目線を作り続けた小栗旬のふるまいが良い。映画的な幽霊として何>>続きを読む

アウトレイジ ビヨンド(2012年製作の映画)

4.4

【再鑑賞】
前作と異なり、長回しと手持ちカメラのゆったりとした動きによって撮られたショットがかなり増えている。スクリーンへ大写しになるヤクザたちの表情の高速スライドショー的な演出は少なく、同じ空間で同
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アウトレイジ(2010年製作の映画)

4.1

【再鑑賞】
ファーストカットの、立ち並ぶ顔をカメラのドリーイングで次々とおさめていく直線的な長回し。
シーンの切り替わりで黒みのフェードアウトが用いられることが多く、他の三作に比べ、瞬間的に沸騰した暴
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コッポラの胡蝶の夢(2007年製作の映画)

4.6

斜陽に染まる、時間概念の著しく乱された虚ろな空間が続く前半と、暗いブルーと僅かな自然光を見事に組み合わせた後半の若々しい照明へ変貌してゆく映像の詩的な設計が凄まじい。薔薇の出現の処理のあっけなさに狐に>>続きを読む

チャップリンの殺人狂時代(1947年製作の映画)

3.4

チャップリンが唯一殺人を思いとどまるシークエンスの、テーブルの上や入口付近の棚上を巧みに移ろうぶどう酒の入ったグラスの空間的な操作が、サスペンスと笑いを同時に視覚的に演出し、映画の普遍的なヒューマニズ>>続きを読む

シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)

2.8

『パンズ・ラビリンス』、『クリムゾン・ピーク』に引き続き、また頬に致命的な穴を穿たれる人物が登場する。
研究所の床に飛び散った血を洗い流すためにバケツの水を撒いた途端、壁際の機材の背後から指が二本転が
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15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)

4.5

役者の顔の匿名性と、歴史的に更新され続けるアメリカの「英雄」像という特殊かつ複雑なイメージの関係について自覚的な問いを立てる企みは、『父親たちの星条旗』の時代から半世紀を経た時空間を設定し、ここで新た>>続きを読む

レインメーカー(1997年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

法廷劇が終わったものの、全く別の軸で進んだ恋人とのメロドラマの悲劇的な着地(殺人の罪を自ら被り青年の前途をたたえる)がそれほど困難もなく乗り越えられていることなど含め、勝利の余韻を満喫する解放感が薄切>>続きを読む

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