中庭さんの映画レビュー・感想・評価 - 10ページ目

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憂鬱な楽園(1996年製作の映画)

4.5

35mmフィルム上映にて鑑賞。『ミレニアム・マンボ』よりも不安定で派手な音響で、閉塞感と解放感のあわいのような酔いの感覚があの手この手で前景化される。滅びの美学と、倒錯する任侠の演出に心打たれた。

モンタナの目撃者(2021年製作の映画)

2.6

このレビューはネタバレを含みます

迫り来る山火事に処刑を任せる、とても良いオチのつけ方。
アンジェリーナ・ジョリーが傷口を消毒して魅惑的なため息をつくシーン、角度しっかり変えつつ何回やんのと笑ってしまった。

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

3.8

画面左上へ伸びる、公園かどこかへ繋がる階段から颯爽と駆け降りてきた岡田将生の、何をごまかしている様子もないが呼吸の荒さを潜ませているようなあの身ぶり。後部座席で隣に座るこちらをじっと見つめて語り続ける>>続きを読む

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

4.7

常にドラッグキメてる旧友ボニー・プリンス・ビリーと行く山奥秘境の温泉旅行。結婚前の言語化し得ない苦しみを大したことないと受け止めてくれる、思わせてくれるのが彼しかいないと言うのならそれはとんでもない思>>続きを読む

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

3.5

ハイウェイで折り返すか否かで二人で口喧嘩をしてるようではどうにもならない。ドラマを剥ぎ取られた旅を通して、水色の同じ服を着続ける男と女のやり場のないエネルギーに溢れた体つきをただただ眺めた。

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

4.3

映画館でしか体験し得ない、荒野の夜の深き闇の奥行き、濃淡の境い目。これを撮るためにどの条件が選ばれ何が棄却されたのか。あまりにも美しいと同時に過酷きわまる画面構成。シビれる。

ザ・ガーデン(1990年製作の映画)

3.0

ドラァグ・クイーンが執拗に暴行を受けるシークェンスと、度々差し込まれる無機質で巨大な施設付近でジョギングをする男のショットがとりわけ印象的。ゲイの二人があまりに下品に笑う男たちに虐められる場面は目を背>>続きを読む

真夏の方程式(2013年製作の映画)

2.9

つつましくも抑制をきかせ、TVシリーズを置き去りにするのでなく明暗を浮かび上がらせることで全体の魅力をより強化した、西谷弘渾身の一本。ペットボトルロケットとスマホを使った海底の冒険は、カッティング一つ>>続きを読む

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)

3.4

遺影の前で家族全員が大泣きしているところを真上からとらえたショット、底意地が悪いというかやはり笑えて上手い。怪獣のほどほどの大きさ、そして一体しかいない、という設定がどこまでも効いてくる。巣で骨を吐き>>続きを読む

フリー・ガイ(2021年製作の映画)

1.9

このレビューはネタバレを含みます

複製されて筋肉隆々になったライアン・レイノルズ相当気持ち悪かった。
ガイは、よくあの結末を受け入れられるな、と寒々しさを覚えて恐ろしい。『ノートルダムの鐘』の白々しさと非常によく似ている。

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結(2021年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

冒頭の外しも盛り上がってしまったし、レジスタンスを無駄に殺しまくったことが判明する瞬間と、まー仕方ないかで終わらせる潔さがまんまと愉快。劇場で大笑いした。水玉がトラウマ乗り越えた直後ぺちゃんこになる瞬>>続きを読む

タブウ(1931年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

波間に消え去る瞬間を見つめる当時の観客たちの光景を思う。

コズモポリス(2012年製作の映画)

2.8

凶暴なデモ隊に囲まれた後、リムジンが汚れたまま物語が進むのが良い。車内での後背位は十八番中の十八番。ラストカットが清々しいほどはっきりとした構図でしめられている。

ぼくの小さな恋人たち(1974年製作の映画)

4.5

この痛切さはここまで距離をとって少年を放置しないとスクリーンに焼き付かないということなのか。同じ道を行って返す未熟な性のレースに唖然とする。

ベンヤメンタ学院(1995年製作の映画)

3.4

汚れた壁にまとわりつく湿気が、蒸された皮膚から立ち上がる湯気のようにエロティックに撮られていた。

いとみち(2020年製作の映画)

3.1

これまで見た横浜聡子の映画の中でも圧倒的に好み。カメラを向けられる複雑な身体性へのアプローチは決してなりを潜めていない。三味線を構えるいとの座り姿だけで喜んでしまう。黒川芽以が抜群に良かった。

逃げた女(2019年製作の映画)

2.5

不安を与えるズームの処理にやはり驚かされる。まるで地震が起きたかのような大きな驚き。堀禎一の遺作で不意に衝撃を受けたあの瞬間を思い出すが、『逃げた女』はかなり歪な構造を用いる。初ホン・サンス。

1秒先の彼女(2020年製作の映画)

3.3

過剰な可愛らしさ、あざとさをスクリーンいっぱいに敷き詰めているにも関わらず、あらゆる人種を抱き込んでかけがえのない映画体験を贈ろうとする、ある意味豪腕な配慮に心打たれる一本。バスが走り抜ける、どこにも>>続きを読む

ゴジラvsコング(2021年製作の映画)

1.7

少女とサイズを超えた心の交流をする、鎖でがちがちに縛られたキング・コング。表情も作ってくれる。何人が何時間かけてこのシークェンスを作ったんだ。最高。軍艦をお風呂に浮かぶおもちゃのように玩ぶ、海原の対決>>続きを読む

ザ・ブルード/怒りのメタファー(1979年製作の映画)

3.9

『シーバース』とこれが一番好きかも。映画で子供に酷えことするやつは非常に良心的で感動的な映画を平気で撮る監督が多いけど、最たる例と言いたい。奇形の造形美。目的に直線的に合わせた身体の仕組み。保育園のシ>>続きを読む

イグジステンズ(1999年製作の映画)

2.7

肉体を持つゲーム機のお話。オチ含め、クローネンバーグ作品の中でも整合性が判りやすく取れている設計。他と比べ生理的な気持ち悪さも生じず(意図的に過去作の反復を行っているようにも)、ある意味透明な一本と言>>続きを読む

ベケット(2021年製作の映画)

2.5

冒頭から事故が起きるまでが長すぎるように感じた。
数メートル以上も異なる高低差で様々な上下関係を意識させるようなショットが幾つも提示される。遥か下方にいる女は男女の会話内の想像ゲームの的にされ、そのう
>>続きを読む

THE GUILTY/ギルティ(2021年製作の映画)

2.4

やることが多い主人公(やらんくていい電話もあるが)の、電話と電話の間の逡巡や苛立ちをもれなく映す。ジェイク・ギレンホールの血走った視線が雄弁に物語を語る。山火事の設定はよく分からない部分もあるが。
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やくたたず(2010年製作の映画)

3.6

匿名的な顔たちによる、ロングショットで撮られた際限なきじゃれ合い。

Playback(2012年製作の映画)

4.3

一人も無益な役者はここに居ないし、風景が生きていない画も一つもないんじゃないか。息を殺して画面を端から端までくまなく見つめた。

マップ・トゥ・ザ・スターズ(2014年製作の映画)

3.7

現時点での最新長編。ハリウッド・スキャンダルに胡散臭い神話性を塗り込み、何から何まで茶化した残酷喜劇。クローネンバーグも年齢を重ねて先鋭化、いわゆるトガっていく監督の一人。『危険なメソッド』はよく分か>>続きを読む

絞殺魔(1968年製作の映画)

4.0

めまぐるしい分割画面の中でも印象的な、死体視点からの発見者のリアクションをとらえた低めの位置からのショット。取り調べが始まり時空間が入り乱れる演出で、なんでこんなに下品な見え方をしないのだろうか。

スキャナーズ(1981年製作の映画)

2.8

血管が割れて血液が皮膚の外に飛び出す医学的・物理的な理屈などどうでもよく、目に視えない攻撃的な超能力を明らかな形で表現するために的確な造形があれなのだという話。手を変え品を変え相手への攻撃が交互に繰り>>続きを読む

密使と番人(2017年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

渋川清彦がなんで倒れたのか、全然分からないのが面白い。呼吸が止まる瞬間を映像から丁寧に排すると、体の動きがいつ止まったのかも分からなくなるのかと新鮮に驚いた。

THE DEPTHS(2010年製作の映画)

3.7

ゲイ・コミュニティの撮り方に納得しづらい部分もあるものの、国籍を越えてファインダーを挟んで関係を深める二人の姿には心打たれる。撮らない、と告げられたときの石田法嗣の投げやりな態度。

PASSION(2008年製作の映画)

4.4

圧巻、かつあまりに卑猥な恋愛会話劇。誰一人ろくな発言をしていないのに、早く次の言葉を繋いでくれと言いたくなるほど対話の間が長くしんどく感じるようになっていく。

螺旋銀河(2014年製作の映画)

3.6

片割れとして接近しているように見せかけて、二人の個性は力強く別方向に発展しており、気付けば関係性は大いに変貌を遂げている。女性バディものの確信的なアップデート。何より二人の顔の違いが良くて、どんな会話>>続きを読む

love machine(2012年製作の映画)

3.3

小島可奈子たまらん。“machine”のタイトルが示す通り、物語の自働のシステムが観客へ戦慄を運ぶ。

親密さ(2012年製作の映画)

3.9

言語化されない、非常に微弱な装いをした感情エネルギーの行先をとらえるために、最も純粋な方法として選ばれたのがこの形式なのか。
前半と後半の結節点に当たる長回し、見ていて大いに取り乱す。

コンティニュー(2021年製作の映画)

3.0

人知れずロードショー、ジョー・カーナハンの新作。まさかの転生ものだが、流行りの形式からは一線を引く。やはり凄まじいのはエンディング、物語の切り方だろう。何が解決したのかよく分からない。ナオミ・ワッツが>>続きを読む

不気味なものの肌に触れる(2013年製作の映画)

3.4

石田法嗣の裸身にまとわりつく色香。得体が知れない、触れたら自分と自分を取り巻くものとの関係が何か別の状態に変わってしまいそうな吸引力があり、染谷将太がおそるおそるその肌に近付こうと息を殺して踊り続ける>>続きを読む