雨の樹さんの映画レビュー・感想・評価

雨の樹

雨の樹

映画から着想したショートショート + 感想を。
うまく響きあうと良いのですが。

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しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス(2016年製作の映画)

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*ナイフ*

交際して5年になる男が眠るのを見つめながら、30歳を迎えた数日後に女はこれ以上は無理だと思った。少し遅すぎたかもしれない。けれどまだ手遅れではない。

深夜2時のキッチンにはあまり行きた
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キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002年製作の映画)

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*ペーパークリップ*

いつしか深く考えることをやめ、目の前にあることから逃げることだけを選ぶようになった女は、気がつけば38歳になっていた。30代に入ってからはつきあいのある男もいない。キャリア形成
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雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(2015年製作の映画)

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*橋桁*

誕生日に欲しいものを尋ねられカメラと答えてから1年後に、少年は浮浪者と親しい関係になった。その日も冷蔵庫の缶ビールを1本持ち出して、浮浪者のいる場所へと向かった。

今では珍しくなった銀塩
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バタフライ・エフェクト(2004年製作の映画)

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*Close to you*

はじめて会った男に抱かれながら、この男を私は前から知っていると女は思った。女の扱い方を心得ていない不器用なセックス。快感をもてあましながら、こちらの様子を不安そうに見つ
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華麗なるギャツビー(2013年製作の映画)

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*山道*

妻が不倫していることを知っていた夫は、それでも妻のことを愛していた。夫は身長が低く、太っていて肌も荒れていた。髪の毛は30歳を過ぎるとあっという間に抜け落ち、歪な頭頂部をさらけ出していた。
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7つの贈り物(2008年製作の映画)

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*サンタクロース*

1度目の結婚に失敗し、2度目の結婚にも失敗しかけている男は、あと半年でクリスマスなんだとカレンダーを見ながら思った。つまり去年のクリスマスから、ちょうど半年経ったともいえる。
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ボーン・コレクター(1999年製作の映画)

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*キス*

20年後に経済アナリストとして国際社会で活躍することになる少年は、今は12歳で自宅に引きこもっていた。15年後に少年と再会し、再び恋をすることになる12歳の少女は、その日も少年のことが好
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ワンダフルライフ(1999年製作の映画)

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*青空*

80歳の夫は80歳の妻の目を見て綺麗だと思った。2人は同じ保育園に通い、同じ小学校にあがり、同じ中学に通い、同じ高校を卒業した。そして当然のように結婚した。

仲が良すぎたのかもしれない。
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アジャストメント(2011年製作の映画)

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*ブーケ*

この男でもないと、1時間後に結婚式を控えた花嫁は思った。そんな確信を得てしまったあとでは、可愛いと感じていた新郎の顔がひどく滑稽に見えた。彼はなぜ微笑んでいるのだろう?

鏡を見つめなが
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恋愛小説家(1997年製作の映画)

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*月の朝*

早朝5時にふと目が覚めてしまい、女は手持ち無沙汰になった。寝つきも寝起きも悪くないほうだったものの、再び眠ることができなかったため、仕事の身支度を整えて出かけた。

通勤路にあるコーヒー
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マイレージ、マイライフ(2009年製作の映画)

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*シワ*

シャワーを浴びずにジムから帰った男は、バスタブに湯を入れ終わるまでをずっと見た後で、ゆっくりと風呂に入った。還暦を過ぎて64歳になろうとしていたものの、男は端正な顔立ちをしていた。

日頃
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黙秘(1995年製作の映画)

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*ソナタ*

少女はコンクールに向けたピアノソナタを譜読みしているときに初潮を迎えた。体の変化について母親からは何の話も聞いていなかったため、そのときは軽くパニック状態になった。

トイレで10分ほど
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ミスティック・リバー(2003年製作の映画)

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*排水口*

平凡な人生を歩んできたつもりだった主婦にとって、おそらく最後になるだろう色鮮やかな出来事が、夫殺しだった。自分の体のどこにこんな力があったのかと、65歳の主婦は洗面所の鏡を見つめた。
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マリアンヌ(2016年製作の映画)

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*ピスタチオ*

はじめて女は、性欲がどんなものであるのかを知った。結婚して7年になる夫に対しては、そんな感情を持ったことはない。

これまで、そうした話を好む友達はいたものの関心を持てないまま30代
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インソムニア(2002年製作の映画)

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*隣人*

72歳の女は、虚ろな目をした男だとはじめ思った。早朝の散歩から帰ってくると、マンションのエレベーターでよくすれ違う。朝早くはじまる仕事についているのだろう。6時前には帰宅している男だった。
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フリーダム・ライターズ(2007年製作の映画)

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*ランナー*

15歳の少年は逃げていた。吸い込む息が肺を膨らませ、胸骨を無理に押し上げる感触が痛みとともに伝わってくる。吐く息よりも吸い込む息があきらかに多い。

震える足を抑えつけ全力で走る。恐怖
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パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー(1998年製作の映画)

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*カラス*

早朝5時の路地裏を歩きながら、俺の生き方は支離滅裂だなと男は思った。

やがて50歳にもなろうとしているのに、男はこれまで定職についたことがなかった。取引先とのつきあいで飲んだ朝帰り。2
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マイ・フレンド・フォーエバー(1995年製作の映画)

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*運転手*

女が路線バスの運転手になったのは、彼女の息子が死んでから1年後のことだった。今から8年前。9歳だった。

河川敷に友達数人と出かけた女の息子は、彼らが帰ろうとしたときには姿が見えなくなっ
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マルコヴィッチの穴(1999年製作の映画)

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*交差点*

穏やかな陽射しのなか、年老いた男がスクランブル交差点の真ん中で立ち止まった。横断歩道の信号が点滅して赤へ。動き出す車と鳴らされるクラクション。

数台が脇を通り過ぎ、中には窓を開けて罵声
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トッツィー(1982年製作の映画)

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*試着室*

デパートの衣料品売り場に務める女は、昨日、髪を短く切ったばかりだった。商品整理をしながら、試着室に映る自分の姿をときどき目の端に入れる。

そして、確かわたしは39歳だったはずと思う。意
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ファーゴ(1996年製作の映画)

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*バス*

朝目覚め、通学のためバスに乗った17歳の少年は、この街を出ようと思った。物心ついた頃から、何ひとつ変わらない商店街を右折するバスの向こうに見ながら、いや違うなと少年は思う。

商店街は、確
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言の葉の庭(2013年製作の映画)

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*雨*

クレヨンを手にした3歳の男の子が、水色を選んで首を傾げた。画用紙にゆっくりとその色を広げ、指をとめる。水色の1本をそのまま紙の上に置き、次に灰色を選ぶ。

淡く広げた水色の下に灰色を少し入れ
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ニュー・シネマ・パラダイス(1989年製作の映画)

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*前日*

翌日には、誕生日を迎えて20歳になる19歳の少女が、鏡を見つめながら、3種類のリップのうちどれにしようかと手をとめた。

あの日以来、心はずっと大人のつもりだったけれど、実際に明日、わたし
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フィールド・オブ・ドリームス(1989年製作の映画)

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*吊り下げ広告*

朝、男が会社に着くと内線がかかってきた。男の妻からの電話だった。外線につなぐ前から要件は分かっていた。ひと言ふた言、手短に話すと、頷いて男は受話器をおろし、上司のもとへ歩いていった
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ベニスに死す(1971年製作の映画)

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*数学者*

夏のヴェニスのカフェ。
1人の数学者がエスプレッソには手をつけず、テーブルにのせた紙に何かを書きとめている。

美は
生よりも、死にこそ力の源泉をもつ。

醜は
美よりもずっと前から、生
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