ストーリーは極めてシンプル。
なので、演技と演出・撮影や編集でいかに行間のフィーリングを芳醇に膨らませられるか、という繊細な作り。
こういう作品はその時々の自分の嗜好やコンディションによってこの上な>>続きを読む
未知の領域に関して技術的には実現可能性があり、可能性があるならそれを成したいという技術者の欲望と、倫理的、あるいは政治的な抑制というテーマには非常に同時代性がある。オッペンハイマーがおらずとも遅かれ早>>続きを読む
映画の品質ではなくごく個人的な嗜好性の話として、ヴィルヌーヴの端正なヴィジュアルデザイン+ツルっとしたスムースな演出/ストーリーテリングという作品性があまりピンとこない。めちゃくちゃよくできているのは>>続きを読む
基本的には会話劇が主体で、意表を突く展開を排したある意味オーソドックスな進行ながら常に興味が持続するように構成された脚本。加えて、座った状態の2人の人物のクローズアップの切り替えし+ここぞというタイミ>>続きを読む
藤沢さんと山添くんが出会って変わったこと。
山添くんが自転車に乗るようになったこと。藤沢さんが洗車で気晴らしができるようになったこと。行ってきますとただいま帰りましたが言えるようになったこと。
笑っ>>続きを読む
「何を描くか」より「何を描かないか」。
脚本も撮影も編集も美術も、この基本精神がどこまでも徹底されている。
それゆえ、「いくらなんでも何も起こらなすぎるし肝心なところは何ひとつ見せてくれない」という>>続きを読む
トーキングよりレディオなヘッド世代なので、教養として観てはいたのだが、教養として観た以上の感慨を抱かなった過去の自分を恥じる。あまりにもカッコよすぎて泣けた。超絶祝祭空間と化すクライマックス、それでも>>続きを読む
監督・山下敦弘と脚本・野木亜紀子というアツい座組によるブロマンスコメディ。
なのだが、山下の品の良いオフビートな持ち味が災いしてコメディとしてはイマイチ弾けておらず、手堅くまとめられた脚本が乃木であ>>続きを読む
ロシアの隣国というフィンランドの地政学的/政治的な緊張感がかつてないほど作品の前面に表出してはいるものの、基本的には実に悲惨なシチュエーションを、淡々かつ朴訥としたユーモアと素っ気なさすぎる簡潔な会話>>続きを読む
広く認知されるべき社会的イシューを主題そのものとして扱う映画がある一方、本作はありのままに生きることを許されなかった1人の女性の半生が主題で、イシューはその物語を駆動する強力な歯車という位置付け。
そ>>続きを読む
伊藤万理華案件。
没落したスターが故郷に帰る話は類作が多々あるが、本作は実質ダブル主演で主人公が帰郷するスター以外にもう1人いるところがポイント。環境は違うが境遇は似ているこの2人が互いに作用しあっ>>続きを読む
素晴らしかった。
性的フェティシズムを抱えた人々の社会からの阻害が作品の軸だが、この世界に生きづらさを感じているすべてのひと、生きづらさを感じたことがあるすべてのひとに開かれようという志の高さを感じ>>続きを読む
これはいい映画。
エモーショナルになり過ぎないギリギリで寸止めする上品さが、逆に沸々としたエモさを掻き立てる。
主人公の純粋に応援しづらい絶妙に嫌らしい人物造形といい、ハッピーになりすぎない中庸さを>>続きを読む
「まなみ100%」と「日常の絶景」で伊藤万理華に完全にやられてしまい、彼女のフィルモグラフィで評判が高い本作を鑑賞。
結論としては、個人的にはそれほど心惹かれるものはなかった…かな。時代劇やSFとい>>続きを読む
いつもながらひたすら硬質でクールな画面が痺れるほどかっこいい。
ひとつのカットが5秒と持続せず、目まぐるしく次のカットに接続されていく手数の多さにも関わらず、何故か一つのシークエンスが淡々とシャープに>>続きを読む
社会性とスラップスティックのバランス、よくぞ揃えたとしか言いようがない素晴らしい俳優陣のアンサンブル。クドカンがのびのび書いていることも、演者が脚本を心から楽しんでいるのも画面から伝わってくる。オリジ>>続きを読む
まず伊豆スタジオの建築としての魅力的すぎる面構えとロケーションがあまりに素晴らしく、「映画だ~」となった。
もっくんの参加ふくめて、カメラが入ることが前提の座組だったようなので、穿ってみれば伊豆スタジ>>続きを読む
主人公とヒロインの馴れ初めから別離までの10年間が物語の縦軸。
なのだが、この2人の10年間は、びっくりするくらい何もない。
ただ、他人から見ると箸にも棒にもかからないような些細な出来事や関係性が、>>続きを読む
イ・チャンドンレトロスペクティヴにて。
後年の作品を知っている視点から言うと、とにかく初々しくまさにデビュー作という趣。
物語そのものも映画としての話法も非常に素朴で、その素朴さが今となっては逆にフ>>続きを読む
陽光と宵闇に彩られた不良少年達の抗争劇とファムファタールを巡るサスペンスが物語の基調だが、全編にわたって生々しい政治の気配が充満する。社会全体を覆う欺瞞と不信という現実と、理想を生きたいと願う少年の内>>続きを読む
映像も感情も、行間だけを徹底的に研ぎ澄ましたようなストイックさ。
若く裕福な夫婦の、文字通り感情が「ほつれる」瞬間に向けて、ひたすら静かにひたすらシャープにショットが積み上げられていく。
あらすじの>>続きを読む
登場人物ひとりのこらず愚かしく、ひとりのこらず愛おしい。
緊張と弛緩、刺々しさと笑い、苦みと甘みが絶妙なバランスで拮抗する超絶脚本。俳優たちの蠱惑的な面構えとファッション、そして声(チチかわいい)。>>続きを読む
イ・チャンドンレトロスペクティヴにて。
この世界を本当の意味で「見たい」と願う老婦人の真摯でささやかな渇望が、世界の美しさではなく直視しがたいまでの醜悪さをこそ浮かび上がらせるという、そのあまりにも>>続きを読む
とってもよかった。
もしこのように生きられたら、もしこのように人と人が関われたら、という願いを、どこまでもささやかに抑制が利いたタッチで描く。
リアリズムとリリシズムのバランスもよく考えられていて、>>続きを読む
イ・チャンドンレトロスペクティヴにて。
聖なるものの中にあるこの上なく俗っぽい何か、あるいはこの上なく俗っぽいものの中にある崇高なまでの何かを、一撃必殺の精度で撃ち抜くイ・チャンドン。
そら寡作にも>>続きを読む
イ・チャンドンレトロスペクティヴにて。
実存が曖昧な若者たちの、息が詰まるような閉塞感と苦痛、不定形がゆえの捉えどころのない不穏さが、この上なく美しい撮影でパーフェクトに記録されている。
後半ジャ>>続きを読む
作り手の意図がトイの世界観でハッピーな映画を作ろうというところにない以上、映画を構成する諸要素は必然的にすべてがメッセージの象徴で、その全編にわたるメタ感がある種の説教臭さと紙一重であることは否定しな>>続きを読む
この世がどんなにクソに塗れていようと、それでも君が生きるに値する世界なのだ。
という、子供たちに向けたシンプルかつ崇高なメッセージを、説教としてではなくイマジネーションの奔流そのものとしてフィクショ>>続きを読む
顔、顔、顔。
冒頭の、酔っ払いの美醜を煮詰めたような空虚なハイテンションっぷりから、クライマックスの生き地獄のようなローテンションまで、執拗かつ凄まじい顔面のクローズアップの数珠繋ぎ。
表層はミニ>>続きを読む
監督・山下敦弘と脚本・宮藤官九郎というゼロ年代に青春を送った世代にとっては感慨深いスペシャルな座組なのだが、題材がガチンコのオリジナル作品ではなく台湾映画のリメイクというあたり、2人のキャラクター的に>>続きを読む
LOVEという概念は存在するという確信にしか実存を見出せなかった姉と、LOVEは虚空であるという信念にしか生の実感を見出せなかった弟。
2人の人生というマルチバースが一瞬だけ重なり合って、文字通り嵐>>続きを読む
映画そのものについての自己言及、昨今流行りの映画についての映画、ということにはなるのだろうけど、文化全体としての映画としてではなく、あくまで表象としての映画もしくは物語を語る装置としての映画についての>>続きを読む
意外なほどストレートに苦味のある後味。
原作は未読なのだが、ハートウォーミングなだけに着地させない矜持はさすが。
個人的に有村架純はいま現在日本で最も優れた俳優の一人だと思っており、女性を魅力的に撮>>続きを読む
決め決めのショットが目まぐるしくも縦横無尽に繋ぎ合わされる快楽、意味深長に強調される謎のディテールとフェティシズム、手際の良さと冗長さが不思議なバランスで拮抗する脚本、メロドラマとサスペンスとコメディ>>続きを読む
人は特に意味や目的もなく生まれ、天災は人知など到底及ばない偶然性によって起こり、なんの因果も必然性もなく人の命を奪っていくという、身も蓋もないこの世界の単なる事実を、できうる限り「それでも意味のあるな>>続きを読む
題材から考えれば、この「ことば」を持たない主人公の内面をいかに描くか、という物語になるのが普通なのだと思うが、この作品は(いくつかの感情的なシーンを除いて)徹底して主人公の内面について観客に説明するこ>>続きを読む