荒野の狼さんの映画レビュー・感想・評価

荒野の狼

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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

1.0

勢いを得て調子づき、目にもの見せてやろうとした結果、なんとも凡庸で陳腐な結果になってしまったランティモス。目を凝らして見たが、「性」一つとっても何一つ新しさを感じないお粗末な映画である。引用が古すぎる>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

5.0

自身の絶望の腹いせを、一番身近な者に向けてはいけない。兄カインに殺された弟アベルは、なぜ自分が殺されたのかを知る事はない。私たちカインの末裔は、どういうわけかアベルに思いを馳せる事がないのは何故だろう>>続きを読む

ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-(2020年製作の映画)

1.5

アメリカでは今ちょっと話題の作家の自伝的小説の映画化という事で、見てみた。
まあ言ってみれば母想いの優しい本人と、彼に甘える毒親との共依存の話で、ヒルビリーという底辺境遇から立派に出世を果たした著者の
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丘の上の本屋さん(2021年製作の映画)

5.0

絵本の題名のような邦画タイトルが良い。童話のような設(しつら)えと物語が良い。古本屋の爺さんが少年に勧める本の順番が良い。漫画ミッキーマウスから始める少年に、まずピノキオ(伊)。次にイソップ(ギリシャ>>続きを読む

ベネデッタ(2021年製作の映画)

5.0

始めに「実話から着想を得た物語」とあるけれど、本作の中身は「実話とは、こうして作られる物語り」、です。いわゆる歴史はそういうものだが、就中(なかんずく)宗教がそうであろう。聖書は作られた実話であって、>>続きを読む

マリグナント 狂暴な悪夢(2021年製作の映画)

-

部屋の電気を消しただけで、怖がれる人向けの法螺ホラー。刑事が石丸伸二みたいで、面白い。出来事の割に、精神的ダメージは薄く、動作と表情だけで誰もそれほど深刻じゃないのが、異常といえば異常な映画であった。>>続きを読む

Pearl パール(2022年製作の映画)

5.0

こりゃまたビックリの前日譚(プリクエル)です。クオリティにおいて前作『エックス/X』を完全に上まわっている。ガッカリのフュリオサの後で観たので、見応えのぶっ飛び度100倍。オカズが全部ご馳走みたいなガ>>続きを読む

美しき棘(2010年製作の映画)

5.0

ちょっと椎名林檎にその面持(おもも)ち、あるいはその変幻自在さが似ているレア•セドゥ。どちらがテーゼで、どちらがアンチかはあなたが判断してください。静と動の「美しき棘」。二人揃ってアビゲイル。聞く耳が>>続きを読む

セイント・フランシス(2019年製作の映画)

2.5

「ここは男の人の来るところではありません」 つげ義春の『ねじ式』の中にある一コマである。それが不意に頭に浮かんだ。
それはさておき、これは男にとってはしんどい産(saint)婦人科映画。同漫画家の『赤
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テイキング・サイド/テイキング・サイド ヒトラーに翻弄された指揮者(2001年製作の映画)

5.0

フルトベングラーがカラヤンなんかに嫉妬などするわけはない。

「組織(政治)」と「個(芸術)」の、火花の散るようなガチンコドラマである事は見ればわかるが、その両者には立場こそ違えど人間の「良心」がある
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パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間(2013年製作の映画)

-

邦題「真実の4日間」が笑わせる。
語られまくってきたこの隠蔽だらけの暗殺事件を、今更(とは言え、もう10年経ったが)こんな映画にする意図の方に目を向けるべきだろう。プロデューサーの中に、トム•ハンクス
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余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。(2024年製作の映画)

-

余命宣告じゃなくて、死亡届を出したくなった。118分も生きている(見続ける)価値が無い。

余命宣告などと言う医者の言葉を真に受けた時点でアウトだろう。そもそも医学的な見地からとはいえ、名医であろうと
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郵便屋(1995年製作の映画)

5.0

ティント•ブラスのこの手の作品は、これまで見た事がなかったが、正直ちょっと後悔した。自分的にはこの映画は小学2、3年生くらいで見たかった、と思った。何故ならあの頃の自分に一気に舞い戻った感覚に襲われた>>続きを読む

いつか読書する日(2004年製作の映画)

4.2

緒方明監督は、女優田中裕子をどういう女性として描こうとしたか? 見どころはそこである。

「なにがたのしみ?」
「牛乳配達かな」
「えっ?」
「できたら町中の人に配りたいな 夢だけど」

彼女が見上げ
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(2023年製作の映画)

-

大失敗『風雲たけし城』乙

コメディにもなっていない単なる寒いおちゃらけ。
しかし北野武がこんなものを敢えて撮ったのには、わけがあるはずである。世に、「意味不明」という映画は無数にあるが、「意図不明」
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マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年製作の映画)

2.2

いよいよ女しかクルマを運転しない時代になってしまったので、今だにハンドルを握っているのは少し頭の悪い男くらいになった。それを予期したのか主人公を女にしたのは正解だった。二輪に乗った婆さんが出てくるのに>>続きを読む

三姉妹(2020年製作の映画)

3.0

よほどキリスト教に恨みがあるんだろうなあ。
①毒された信者の次女を挟んで、②素直で純心(純信)な長女、③エセ宗教など信じていない三女で綴るコリアンカルトストーリー。編集が漫画のコマ割り(中抜き)のよう
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おもかげ(2019年製作の映画)

2.5

もっと予想を裏切る展開を期待したのは、掴(つか)みの長回しの冒頭が良かったからである。ところが、それに続くお話は何だかなあのストーリー。撮影同様キレイに纏(まと)まっちゃった感がある。
自分で食ったも
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関心領域(2023年製作の映画)

-

わかりやす過ぎて胸糞が最高に悪い最低映画。恐ろしくも悍(おぞ)ましくも何とも無い。監督への侮蔑以外これっぽっちも心が動かなかった。陳腐な設定からして、どう思わせようかがミエミエ。
映画だから、その画面
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セーヌ川の水面の下に(2024年製作の映画)

4.0

You は何しにセーヌの下に?
これ迄のあまたの「まんが的サメ映画」とは異なり(それほど何作も観ているわけじゃないが)、舞台も設定も明らかに新しい鮫サスペンス。襲われ方も新鮮。政治家、学者、活動家、軍
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籠の中の乙女(2009年製作の映画)

5.0

籠というより檻(おり)だろう。鳥じゃなくイヌと犬歯が重要なモチーフだからである。ランティモスって事だけどちっとも難解な映画ではありません。今流行りのワードで言えば「支配と従属」の話、極めて俗なテーマを>>続きを読む

キャメル(2023年製作の映画)

3.0

ありがちなカメラワークを見ていて「それがやりたかったんだな」と気づいてしまう、或いは思わせる映画は、たまにある。さりげなく使うならそれ程気にはならないが、全部がぜんぶ「それ」だと、いい加減辟易してしま>>続きを読む

ロニートとエスティ 彼女たちの選択(2017年製作の映画)

4.0

「彼女たちの選択」、とタイトルにあるが原題はDisobedience (不服従)なのであって、「選択」の話ではない。信仰はもちろん信じるか信じないかの選択ではないし、当たり前だが神に服従する事ではない>>続きを読む

聖なる犯罪者(2019年製作の映画)

5.0

実話ベースではありながらも、この映画は聖職者になりすました犯罪者の話ではない。人間の振りをした神(カトリシズムのイエス)の話です。
従ってこの演技は相当難しいが、不自然にならずに見事に「そこ」を外して
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たかが世界の終わり(2016年製作の映画)

5.0

文藝春秋の創刊者でもある菊池寛の戯曲に『父帰る』がある事はご存知であろう。グザヴィエ•ドランの場合には、帰ってくるのは父ではなく次男であった。帰ってはきたが、結局また出て行ってしまう事において、両者の>>続きを読む

碁盤斬り(2024年製作の映画)

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原作をアニメなんかじゃなく古典落語から持ってきたというので大いに期待させたが、アレンジされた脚本でメチャクチャになってしまった。元になった演目『柳田格之進』は、各々(おのおの)が各々のやり方で「自身が>>続きを読む

ひみつのなっちゃん。(2023年製作の映画)

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作る側も演る側も、ゲテモノの自覚が足りない。
この手の題材を扱うには、昇華された醜悪さとそこに、よりヒューマンな喜怒哀楽が不可欠にも関わらず、コントレベルの作りでは貧相の露呈にしかならない。ホンモノの
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イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)

2.0

デンゼル•ワシントンと行く「世界の車窓から」ヴァイオレンスの旅、イタリア観光編。
『マイボディーガード』の艶のあるデンゼルとダコタ•ファニングが時を経て組む、老いた二人の最後っ屁。第一作目の顔に泥を塗
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とべない風船(2022年製作の映画)

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内海だから穏やかなんだろうが、漁村にしては活気がなさすぎる。
鬱、リタイア、怪我、風船、寡黙、病(やまい)。 見続ける気力も失せる。冒頭でも中身でも暗くて見えない、というよりちゃんと「見せない」シーク
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シティーハンター(2024年製作の映画)

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このノリ、このニオイ どこかで見たことあるなあと思ったら「頂き女子りりちゃん」だった。ふまじめとか下品とか低俗とかをすでに日本は振り切ったところで事象が進んでいる。彼女にメガホンを取らせればきっとこう>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

-

オープニングのパロディ演出は良かったが本編はひたすら退屈で陳腐な映画でした。今ここで敢えてバービー、そして監督や脚本家•俳優の顔ぶれを見て、ちょっと期待値が高かったのかもしれない。出だしがアレだから、>>続きを読む

リベンジ・スワップ(2022年製作の映画)

1.0

ものすごい体臭があるのに、それを洗い落とさず厚塗り、更にその上からキツい香水をぶっかけたような女性が、あなたのいるエレベーターに乗ってきたとご想像ください、そういうテイストの映画です。バタ臭さを通り越>>続きを読む

ラブ・アクチュアリー(2003年製作の映画)

-

この映画のどこをどう、たのしめというのだろうか? キャストのみなさん単独でなら、あじのある演技のできるスターたちなのに、これではわざわざタカをくくられにでてきたようなもんだ。つまりそのことごとくが、>>続きを読む

生きる LIVING(2022年製作の映画)

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ただただ感傷的で、身だしなみはいいが汲みとるべきところが一つもない映画である。胡乱(うろん)で落ち着きのないニワトリみたいなビル•ナイの下手くそな演技と相まってこの老人役の狼狽(うろた)え方にリアリテ>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

1.1

これでもかっちゅうぐらい、作画と凝りに凝った動きのテクニックを見せつけるような、アニメとは思えぬアニメーション。繊細かつ綺麗だが、この日本的凝り用は鼻につき始めると、それが偏執狂的な腕自慢に見えてくる>>続きを読む