シズヲさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

恋する透明人間(2020年製作の映画)

4.0

同僚への恋心で真っ赤になってしまう科学者、透明人間と化する。“赤面する主人公が緑の薬品を飲み干すと「赤は緑に中和される」の論理で身体が透明になる”という発想がファンタジックで面白い。それはそうと主人公>>続きを読む

still dark(2019年製作の映画)

4.1

シェフを志してイタリア料理店の見習いになった盲目の青年を描く中編映画。只管にストイックな作品で、40分という尺の中で端的に無駄なく物語を描き切っている。抑制された演出とミニマムな舞台設定、固定視点のカ>>続きを読む

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)

3.2

“映画製作”という題材をサブカル的感性に乗せて、極めてポップに描いたような作品。ポンポさんの造形がまさしく本作のイメージを象徴している。ある意味で和製アニメによるハリウッド的カルチャーの換骨奪胎……な>>続きを読む

クレイジー・ヘア(2018年製作の映画)

3.3

生き別れた母親と対峙した息子のままならない気まずさ、緊張感。打ち明けられた母親の動揺、ただ一言の告白。そして言葉なき最後の餞別。この親子が抱え続けていた蟠りは、きっとあの瞬間に解けたのだと思う。二人の>>続きを読む

バニシング・ポイント 4Kデジタルリマスター版(1971年製作の映画)

4.0

『イージー・ライダー』のワイアットとビリーはアメリカの自由を見つけられなかったが、本作はある意味で“その後の世界”。自由なき世界に現れた最後のヒーローの疾走である。ほんの数年前にアメリカン・ドリームさ>>続きを読む

ジョーイ(2020年製作の映画)

3.6

ピエロのささやかな恋を描くショートフィルム。ジョーイのメイクや自宅の照明の色彩、更には“孤独な中年男性”や“煙草”といった要素など、明らかに『ジョーカー』のイメージを引用している。映画のディティール自>>続きを読む

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.3

最近テレビ放映している『機動戦士ガンダム サンダーボルト』でもジャズが取り上げられていたのは妙に運命的。ジャズというインパクトのある題材を取り上げつつも、物語自体は極めて率直で分かりやすい。スポーツ漫>>続きを読む

バッドガイズ(2022年製作の映画)

4.4

『オーシャンズ』と『スパイダーバース』の奇跡のセッションのような映画。冒頭からあからさまな『パルプ・フィクション』のパロディがぶっ込まれるのでワクワクさせられるが、実際前述した『オーシャンズ』から『ル>>続きを読む

「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ(2023年製作の映画)

3.6

マーティン・スコセッシはMCU作品をテーマパークと評していたが、ufotableに違法増築されまくってなんか凄いことになってる無限城も大概びっくりテーマパークなんだよな。大画面に映る姿を見て久しぶりに>>続きを読む

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)

3.8

1942年のドイツ・ベルリンにて“ユダヤ人問題の最終的解決”のために開かれたヴァンゼー会議。本作は親衛隊のアドルフ・アイヒマンによる議事録に基づき、虐殺計画の会議について克明に描かれている。

内容の
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そばかす(2022年製作の映画)

3.5

他者に恋愛感情を抱けないアセクシャルの女性の話。しかし作中ではその辺りの固有名詞を出すこともなく、“生きづらさを抱えたマイノリティの話”としての普遍性を与えようとしている印象。三浦透子のナチュラルな演>>続きを読む

レオン 完全版(1994年製作の映画)

4.6

※再レビュー

改めて振り返って思うけど、本作は強烈なまでにポップカルチャーの映画。未だにSNSでファンアートを見かけたり、マチルダのビジュアルやファッションが注目されていたりなど、明らかに若い世代の
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天使にラブ・ソングを2(1993年製作の映画)

4.0

シスター・クラレンス、カムバック!そういや見ていなかった続編。ギャングの存在が絡んでてコミカルながらサスペンス的な趣もあった前作に対し、本作はデロリスが落ちこぼれの学生達を導く学園モノと化している。た>>続きを読む

ベルファスト(2021年製作の映画)

4.0

北アイルランドのベルファストで生まれ育ったバディ少年。両親や祖父母からの愛を受け、近所の人々とも家族同然に過ごし続けた。しかしバディが9歳になった1969年、宗教対立を発端とする地域紛争“北アイルラン>>続きを読む

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)

3.9

アキ・カウリスマキ監督の初期長編映画である“労働者三部作”の1作。ゴミ収集業の男性とレジ打ちの女性が織り成す不器用な恋愛。マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンの決して華やかとは言えない雰囲気が本>>続きを読む

イナゴの日(1975年製作の映画)

3.5

映画業界が隆盛した1930年代を舞台に描かれる“日陰者たちのハリウッド”。見る前はハリウッド・バビロンを想像していたけれど、実際はそこまで“ハリウッドの醜聞”的な世界には突っ込んでいなかった。映画界の>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.1

生まれつき両耳が聞こえない聴覚障害を持つ女性ボクサー、ケイコの物語。ゴングの音も、レフェリーの声も、ましてやトレーナーの指示も届かない。彼女は常にリングの上で孤独を背負って戦う。

口を殆ど利けないこ
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テリー・ギリアムのドン・キホーテ(2018年製作の映画)

3.7

かつてスペインの片田舎でドン・キホーテの自主制作映画を撮影したCM監督のトビー。十年の時を経て再び村を訪れた彼が目にしたものは、映画の役柄に侵食されて今も尚ドン・キホーテに成り切っている当時の“主演俳>>続きを読む

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

3.7

“荒野の旅”という西部開拓史の根源、あるいは“旅に出ること”という物語の古典。その基礎を踏襲し、徹底的に削ぎ落とし、そして再構築したようなオルタナティブ西部劇。

“意思決定の話し合いをする男達”を女
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ウインド・リバー(2017年製作の映画)

4.1

極寒の居留地“ウインド・リバー”で発見された先住民少女の遺体を巡る事件。インディアン居留地で発生した殺人事件を描く映画としては『サンダーハート』を連想させられるが(どちらもグラハム・グリーンが現地の警>>続きを読む

DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン(1983年製作の映画)

3.7

庵野監督を始めとする若かりし日のGAINAXメンバーが撮った自主制作映画。彼らが学生時代に製作したウルトラマンの短編映画が再び復活した作品だから「帰ってきたウルトラマン」らしい。“ウルトラマン柄のジャ>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

「死ぬのが怖くないのか!?」に対して「怖くない!」と即答していた主人公、“被災によって得た死生観”であることが物語を通して端的に伝わってくる。『君の名は』『天気の子』と同じく民俗学や日本神話的な設定を>>続きを読む

窓辺にて(2022年製作の映画)

4.2

すぐ傍に居るからこそ分からない。ましてや自分のことなんて尚更分からない。だからこそ少しだけ離れた人と繋がって、あるいは問答や葛藤による一時を過ごして、自分や身近な誰かを静かに見つめ直す。この映画に出て>>続きを読む

勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

3.6

ジャズの即興演奏じみた奔放ぶり。大胆な映画的流儀に則ったジャム・セッション。掴みどころなきテンポと不思議な編集。大胆なジャンプカットや隠し撮り、手持ちカメラでの撮影など、当時の映画では見られなかった演>>続きを読む

周遊する蒸気船(1935年製作の映画)

3.5

前半も楽しいものの「そんなにかなぁ」という思いがあったけど(ウィル・ロジャースもアン・シャーリーも良いけどね)、レース始まってからの流れに脱帽。アクションによる活劇性がそのまま“甥っ子の死刑阻止”とい>>続きを読む

青春群像(1953年製作の映画)

4.3

イタリアの田舎町で過ごす若者5人(全員無職)の怠惰な日常。ネオレアリズモの気質を背負ったフェデリコ・フェリーニの初期作。フェリーニの故郷である北イタリアの港町をモチーフにするなど自伝的要素を含んでいる>>続きを読む

都会のアリス(1973年製作の映画)

3.7

ドイツ人記者と幼い少女の旅路。ヴィム・ヴェンダース監督によるロードムービー三部作の一作目、ニュー・ジャーマン・シネマの代表作。子連れの放浪劇という筋書きは後年の『パリ、テキサス』っぽさもある。ヴェンダ>>続きを読む

マックQ(1973年製作の映画)

3.4

〈裸の町〉シスコはハリーとブリットにまかせたぜ!〈無法の町〉シアトルは俺が一人で引きうけた!(※日本公開時のポスターのキャッチコピー)

荒野の益荒男ジョン・ウェイン、都会派刑事(すぐ辞職して探偵にな
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誉の名手(1917年製作の映画)

3.7

ジョン・フォード監督のサイレント映画であり、彼の監督作で現存している最古のフィルム。この頃から撮影のダイナミズムが遺憾なく発揮されており、高低差や奥行きを駆使した画面構成に度肝を抜かれる。丘の上からカ>>続きを読む

ディーバ デジタルリマスター版(1981年製作の映画)

3.7

“歌姫”のファンである郵便配達員が巻き込まれる事件。ヌーヴェル・ヴァーグ以降は目立った潮流が途絶えていたフランス映画界に新たな息吹をもたらした金字塔的作品。原作はミステリー小説らしいけど、どうやらジャ>>続きを読む

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV(2021年製作の映画)

4.0

「リングで2人の男が殺し合った」
「だが2000万人が殺し合うよりはマシだ」

1985年公開のロッキー4、数十年の時を経てまさかの復活!!42分もの未公開カットを使用!!スタローン自ら再編集した真・
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モホークの太鼓(1939年製作の映画)

3.8

アメリカ独立戦争の最中、開拓者として逞しく生きる道を選んだ夫婦の物語。ジョン・フォードの初カラー作品らしく、要所要所の風景描写できっちり決まっている。行進していく兵士達をヒロインが丘の上から見送る場面>>続きを読む

タバコ・ロード(1941年製作の映画)

3.4

アメリカ南部の貧困農民を描いた戯曲の映画化作品。甲高く喋るチャールズ・グレープウィンの演技が妙な愛嬌に満ちてて印象に残る。タバコ・ロードの栄枯盛衰ぶりが白々しく語られる冒頭のナレーションから顕著だが、>>続きを読む

俺は善人だ(1935年製作の映画)

4.0

しがないサラリーマンが偶然ギャングと瓜二つだったせいで騒動に巻き込まれる!巨匠ジョン・フォード監督が唯一メガホンを撮ったギャング映画(?)。“ギャングそっくりの民間人”という役どころをエドワード・G・>>続きを読む

ONE PIECE FILM RED(2022年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

シャンクスの娘にしてルフィの幼馴染ウタ!!なんだこいつ!?エースといいサボといい、ルフィの身内は急に出現しがちなので毎度ビビらされてばかりである。そしてそんな風に突然出てきたウタの存在感が終始に渡って>>続きを読む

ジャズ大名(1986年製作の映画)

3.3

「いぇーい!!」

南北戦争によって自由の身になった四人の黒人解放奴隷たち。道中でジャズを編み出しながら先祖の故郷アフリカへと帰ろうとした彼らだったが、訳あって幕末の日本へと漂着してしまう……。筒井康
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