ShotaOkuboさんの映画レビュー・感想・評価

ShotaOkubo

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悪なき殺人(2019年製作の映画)

3.6

緻密な脚本が光るミステリー。

点が線となり、線が円環を成す周到な物語構造。

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

5.0

映画における「象徴性」をソリッドに純化し、シンボリックな男性像と女性像を巧みに交錯させる。

表面上の性によってではなく、その奥底に秘めた本質的な性が表出すると、次第にサスペンスが動き出していく。
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小さな兵隊(1960年製作の映画)

3.4

ノワール的な物語も形式主義的な演出も垂れ流しの台詞も、この映画の全てはアンナ・カリーナの美しさの一点に向けて結実していく。

軽蔑(1963年製作の映画)

4.2

「隔たる男女」、倦怠夫婦の愛憎劇。

商業映画を以って商業主義を制す、ゴダール本人が生み出した新たな映画の作り方を翻して肯定してみせる。

妻は夫を「軽蔑」し、ゴダールは商業映画を「軽蔑」する二重構造
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勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

5.0

ヌーヴェル・ヴァーグの胎動。

映画の作り方を不可逆的に変化させ、今日に至る全ての映画に本質的な影響を与えた伝説的な1本。

「逃走と追跡」、「隔たる男女」を一直線上に並べてみせた作劇。

後のフィル
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木靴の樹(1978年製作の映画)

3.4

北イタリアの貧しい農民たちを自然主義的に切り取る。

実世界を生きる演技経験のない農民たちが自然光に照らされながら映し出されていく。

ドキュメンタリー的な語り口によってこそ、名もなき人々の生傷が浮か
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tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!(2021年製作の映画)

4.0

夢の成就か挫折か、30歳の誕生日を目前に控えたジョナサン・ラーソンの伝記映画。

夢を追える期限も恋人との時間も親友の命も全てが等しく有限であることを知り、物語の主役は時間に置き換わる。

時間の経過
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パパは、出張中!(1985年製作の映画)

3.8

政治的な混乱を背にして、純粋無垢な少年が酸いも甘いも噛み分けていく通過儀礼の物語。

大木との位置関係によって、少年の成長を象徴的に語る結びが味わい深い。

アタラント号(1934年製作の映画)

4.2

瑞々しい映像表現の釣瓶打ち。

指を這わせたレコードから音が広がる映画的なカット。

水の中に愛する妻を見る幻想的なシーケンス。

離れ離れになった若夫婦の身体を重ね合わせたモンタージュ。

ゲームの規則(1939年製作の映画)

4.8

ブルジョワジーの狂騒と色恋沙汰、その裏に仄めく背徳的な秩序。

恋愛的群像劇と社会風刺が同居した両義性のある語り口。

戦争のアナロジーとして、その残虐性を狩猟に投影してみせる演出が見事。

大いなる幻影(1937年製作の映画)

4.0

「国境が必要なのは人間だけさ」

第一次世界大戦下の捕虜収容所にブルジョワジーの鏡像を映し出す。

記号的な身分や出自を剥ぎ取られ、剥き出しにされた個々人の間に宿る友愛が美しい。

MONOS 猿と呼ばれし者たち(2019年製作の映画)

4.4

映像と音で語る出色の1本。

観る者を暗中模索に陥れ、徐々に視界を開かせていく語り口が堪らない。

「激流」と掛け合わせた「逃走と追跡」の作劇も見事。

父の祈りを(1993年製作の映画)

3.6

冤罪なる運命に翻弄された父子の物語。

息子に手を焼く父、父から目を背けてきた息子、2人が1つの牢屋に閉じ込められてからドラマが動き出す。

家族を想うとき(2019年製作の映画)

5.0

「何かが間違っている」

歪んだ資本主義の皺寄せを一身に受ける労働者階級の一家。

人間の尊厳が資本主義に踏み躙られていく様子を生々しく活写する。

見えざる敵を前にした家族の衝突と連帯に胸が締め付け
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愛より強く(2004年製作の映画)

3.6

アウトサイダーたちの間に生まれた異形なる愛。

「トレインスポッティング」を彷彿とさせる刹那的な生命力が描出される。

伝統や宗教に縛り付けられた女性が刹那的な快楽へ耽溺していく姿が痛々しい。

パリ、テキサス(1984年製作の映画)

3.8

覗き部屋のシーケンスが白眉。

視線の反射や部屋の明暗によって、「見る・見られるの関係」を結べない夫婦の行く末を映像的に語ってみせる。

父と息子の間を望遠鏡とトランシーバーが隔たる周到な演出も見逃せ
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エリート・スクワッド(2007年製作の映画)

3.6

ブラジル映画史上、最も商業的な成功を収めた1本。

感情台詞が垂れ流しにされる映画としては不細工な語り口ながらも、正義のためなら粗暴な手段さえ厭わないBOPEの姿から目が離せない。

アンダーグラウンド(1995年製作の映画)

4.2

エキセントリックな悲喜劇。

悲劇と喜劇を行ったり来たりするようなダイナミックレンジの広い物語世界。

旧ユーゴスラビアの形に切り出された半島が「許し」を乗せて漂流していく結びが味わい深い。

エターナルズ(2021年製作の映画)

3.4

壮大な叙事詩と愛の物語が「出現と阻止」の作劇に集約されていく。

家族愛や人類愛といった要素を多層的に構築し、個々の要素が代わる代わるアクションを推進する。

自我を保つ何かが失われた後の生き方を問う
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イン・ディス・ワールド(2002年製作の映画)

3.4

世界の周縁に追いやられた難民の少年がロンドンを目指して険しい道を行く。

ルポルタージュのような語り口が没入感を演出する。

人生タクシー(2015年製作の映画)

3.6

イラン政府から映画製作を禁じられたフィルムメーカー、ジャファル・パナヒの機知に富んだ反撃。

世界三大映画祭を制した名匠の映画哲学と問題提起が見所。

ミステリー・トレイン(1989年製作の映画)

3.8

「列車」に揺られて、メンフィスのホテルに吸い寄せられた縁もゆかりも無い他人たち。

決して交わることなく、再び「列車」に揺られて、それぞれの帰路に着く。

ジム・ジャームッシュの手に掛かれば、無味乾燥
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サラエボの花(2006年製作の映画)

3.8

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都、サラエボ。

女性に対する搾取/抑圧/支配が横行した地。

一度は閉じ掛けた母の傷口が娘の純粋な疑問によって再び開かれる。

母子の葛藤と再生を静謐に描出する。

トゥヤーの結婚(2006年製作の映画)

3.6

家族という最小単位の社会からも強くあることを求められた女性、トゥヤー。

劇中、たった一度だけ弱さを見せるトゥヤーの姿に胸を打たれる。

悲しみのミルク(2008年製作の映画)

4.6

性暴力から身を守るため、呪いを身に纏った少女。

刻一刻と呪いに蝕まれていく彼女を救い出したのは、母親と口ずさんだ歌と父親ほど年の離れた庭師が咲かせる花。

ペルーを象徴する「ジャガイモ」に花が咲き、
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最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

3.8

羅生門的な語り口によって、父権主義の脆さを炙り出す。

主人公に視線を送る女性たちの「声なき声」にも耳を傾けさせる演出も見所。

スウィート・シング(2020年製作の映画)

3.8

寄る辺ない姉弟の逃避行をノスタルジックに映し出す。

大人の世界と対峙する少年少女の瑞々しい感性が眩しい。

粒状感のある映像やアイリス・アウトも味わい深い。

タッチ・ミー・ノット~ローラと秘密のカウンセリング~(2018年製作の映画)

3.4

人間の心について探究する実験映画。

人間同士が心を触れ合わせるための手段として、身体の触れ合いを提言してみせる。

身体を剥き出しにする覚悟を決めた者たちだけに心の解放が訪れる。

観客にも考えるこ
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リラの門 4K デジタル・リマスター版(1957年製作の映画)

3.6

「自由を我等に」に次ぐ資本主義への皮肉。

真に利他的な行動を取り続けるのは、資本主義の匂いが脱臭された男性。

損得に捉われない利他性を行動原理とする男性の人情味に溢れる悲喜劇。

興味を持続させる
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SKIN 短編(2018年製作の映画)

3.6

人種間で交わされる暴力の応酬。

火蓋を切る者と終止符を打つ者の関係性に毒を効かせてみせる。

別離(2011年製作の映画)

3.8

夫婦関係に纏わり付く呪縛を多角的に映し出す。

二組の夫婦が衝突した時、複雑に絡み合う人間模様が浮かび上がり、火の粉は子供たちにまで及ぶ。

切実に積み重ねられた台詞が臨界点に達した瞬間、物語の輪郭が
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ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000年製作の映画)

5.0

救いようのない悲劇によって、「空想」を肯定する異色の傑作。

視力を失う運命にある息子の「見る」という行為をマクガフィンとした映画的な作劇。

雑音を歌唱・演舞へと昇華させる演出。

物語を進行するた
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ミッシング(1982年製作の映画)

3.4

南米に生まれた社会主義政権の崩壊を図ったニクソンの所業、チリ・クーデター。

米国政府の陰謀に巻き込まれた息子を救おうとする父親の奮闘記。

真相に迫るにつれ、父親の心に生じる変化が見所。

巴里祭 4K デジタル・リマスター版(1933年製作の映画)

5.0

ルネ・クレールの最高傑作とも目される1本。

「見る・見られる」の作劇における鋳型。

執拗なまでにサイレントの映画作法に忠実だったルネ・クレールが満を辞して映像と音声を等価な素材として掛け合わせてみ
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未来世紀ブラジル(1985年製作の映画)

3.4

現実と幻想が綯交ぜになった唯一無二の物語世界。

巨大な権力を前にして、幻想に耽溺することで自我を保つ主人公、彼を待ち受けるのはペシミスティックな結び。

主人公と幻想の関係性が観客と映画の関係性にメ
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オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(2013年製作の映画)

3.4

古典的なジャンル映画の枠組みをジム・ジャームッシュ色に染め上げる。

数世紀に渡って生き続けるヴァンパイアの厭世的な人生・回転し続けるレコードを重ね合わせた抽象的な幕開けが白眉。

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