螢さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

螢

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バグダッド・カフェ 完全版(1987年製作の映画)

3.8

観終わると不思議とじんわりと温かい気持ちになれる作品。けれど、それだけでなく、孤独の多様性と奥深さを改めて知った気にもなった作品。

アメリカ旅行の道中、夫婦喧嘩の末に夫の運転する車から一人降りて、モ
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浮草(1959年製作の映画)

3.8

昭和の日常と非日常のあわいにある、清濁入り混じる風情と人情を噛みしめる映画。 
小津安二郎監督作品は初めてだったのですが、「小津調」と評されたという、その端正な様式美に幾多の映画人が心奪われたのもわか
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ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)

3.7

淡々と静かで、とても詩的で、少し不思議て、でも吸引力のある作品でした。対照的な二人の現役天使と、物憂い人間の世界を巧みに生き抜いた感のある一人の男という三人の人物の対比、姿は見えないけれど天使に見守ら>>続きを読む

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス(2016年製作の映画)

3.8

世間の片隅でひっそりと暮らした夫婦の、当初は利害から始まり、いつしか労わりと愛情に変化して寄り添い終えた人生を丁寧に描いた、実話に基づく物語。
「大人の恋愛を描いた作品は本当に少ない。これは過去にない
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シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション(2018年製作の映画)

3.7

すごい。主演まで務めた監督の大いなる原作愛をみた。オリジナルの世界を完璧なまでに再現している。才能ある一ファンによる、原作者への熱烈なファンレターであり、その他大勢のファンのための作品。

女好きでダ
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危険なプロット(2012年製作の映画)

3.8

最初から最後まで食い入るように観てしまいました。映像構成によって虚実を巧みに融合させることで、スリリングに、そして妖しく美しく、容赦なく人間の隠れた欲望や不満を暴き立てて堕としていく様が見事。徹頭徹尾>>続きを読む

第三夫人と髪飾り(2018年製作の映画)

3.7

19世紀の北ベトナムを舞台にした、薄靄かかる山間部の静かで雄大な風景と絵画的な構図が生み出す映像美、度々挟み込まれる抽象的かつ象徴的な映像、そして、観る者の感性に解釈を委ねる「隠された」ラストが特に印>>続きを読む

さらば、わが愛 覇王別姫(1993年製作の映画)

3.9

いやもう、すごかった。圧巻の出来。壮大で、激しくて醜くて、なにより、哀しくて美しい。約3時間、全く退屈せず。

京劇役者の二人の男とそこに関わった一人の女の、愛憎という言葉では到底足らない複雑な関係と
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隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)

3.9

亡国の姫と忠義の将軍による敵領突破という、超絶ベタ展開なのに、何度も泣いたし、なんなら笑ったし、終盤は結構ハラハラしながらも、安定の結末に心満たされて胸がすいた、黒澤明&三船敏郎コンビの戦国歴史活劇。>>続きを読む

ゴッホとヘレーネの森 クレラー・ミュラー美術館の至宝(2018年製作の映画)

3.2

画家ゴッホの後半生と作風の変遷を、ゴッホコレクターとなり美術館まで造った資産家女性ヘレーネの後半生に絡めながら、ゴッホに造詣の深い美術関係者や作家の複数が解説していく良質ドキュメンタリー。 

残念な
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永遠の門 ゴッホの見た未来(2018年製作の映画)

3.5

最も精力的だったけれど最も苦しんでいた最晩年のゴッホの悲愴な姿を、ゴッホ視点でまさに「追体験」する作品。

絵具を厚く塗り重ねた筆の跡がくっきりと残り、うねりと渦巻が特徴的なゴッホの作品群。それは、彼
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マシュー・ボーン IN CINEMA 白鳥の湖(2019年製作の映画)

3.6

悪魔によって白鳥に変えられた可憐な少女と王子様の悲恋を優雅に描いた古典バレエの代名詞「白鳥の湖」。それがまさか、百数年後の英国で、逞しい雄の白鳥とマザコンひ弱王子の悲恋を力強く描いたコンテンポラリー・>>続きを読む

キング(2019年製作の映画)

3.6

「王に友はいない。いるのは従者と敵だけだ」
王となった男の、逃れられない孤独、不安、動揺、猜疑心、決断の恐怖、感情コントロールの難しさ、空虚感、それらに伴う性質の変容、どんなに不確かで頼りないものでも
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ONCE ダブリンの街角で(2007年製作の映画)

3.6

音楽って、少なからず現実に疲弊する心を慰める作用があって、だからこそ、記憶と密接に繋がっていくものだということを改めて感じさせてくれた作品。
ジョン・カーニー監督が「Once」という、たった四文字の単
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ナショナル・ギャラリー 英国の至宝(2014年製作の映画)

2.9

英国のナショナル・ギャラリー(国立美術館)を扱ったドキュメンタリー。
とはいいながら、収蔵作品の概要や系統、ギャラリー成立の歴史といったものは語られない。市民や関係者を前にその作品解説をする職員の姿や
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秒速5センチメートル(2007年製作の映画)

3.5

初恋は得てして実らないものだけど、それでもこの物語は、愛おしさよりも、物悲しさと切なさ、そして、孤独が際立っていて、寂寥感に胸が締め付けられました。 
幼い日の初恋の10数年の軌跡を計63分の連作短編
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天使の入江(1963年製作の映画)

3.7

「賭けの魅力は贅沢と貧困の両方を味わえること。それに数字や偶然の神秘があるから…(略)…私にとって賭けは宗教も同義よ」

やっぱり、ジャンヌ・モローは男を破滅に引き摺り込む「運命の女(ファムファタール
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ディリリとパリの時間旅行(2018年製作の映画)

3.8

あいかわらず、ミッシェル・オスロ監督作品は、ため息が出るほど緻密な美しさを誇る立体的な背景描写と、極端に平面かつ簡素な人物描写という、対照的な描写の見事な融合で鑑賞者を惹き付けます。
そして、差別や貧
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ホワイトナイツ/白夜(1985年製作の映画)

3.7

政治性、サスペンス性、芸術性、人生の機微。映画が持ちえる様々な面が無理なくうまく融合した、しかも、ものすごく私好みの作品でした。

ソ連から米国へ亡命したバレエダンサーのニコライ。彼が乗った飛行機は、
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落下の王国(2006年製作の映画)

3.8

豪華絢爛。映像美の極致。
なんて言葉はこの映画のためにあるといってもいいぐらいに、最初から最後まで、とてつもなく豪華かつ鮮やかな映像に彩られている。13の世界遺産を含む、24カ国以上に及んだ実在の沢山
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ロマンティックじゃない?(2019年製作の映画)

2.5

大事なのは自分を愛すること。
その主題自体はわかるのだけど….。
独身女子のホームパーティの画像付きBGM的に流すのには一番反感もないけど、意見もでないし、印象にも残らない、まさに「罪のない背景映画」
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ガタカ(1997年製作の映画)

3.7

生まれ落ちたその瞬間に定められた運命に苦しみ、抗おうとした人々の物語。
ラストの静けさと切なさには胸が締め付けられます。
鑑賞中はむしろ落ち着いていたのに、鑑賞後に色々なシーンを思い出していたら一人
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外科室(1992年製作の映画)

3.7

泉鏡花の手になる同名小説の映画化。
鏡花の「余白の美」に、監督・脚本をつとめた坂東玉三郎が緻密に設計した「足し算の美」が見事に融合しており、日本美の世界を堪能できる作品。

僅か10分ほどで読めてしま
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ザ・ロイヤル・テネンバウムズ(2001年製作の映画)

3.6

ヘンテコ家族の不器用で奇抜すぎる再生物語。
出てくる登場人物全員が全員、それぞれに俗で、ぶっ飛んでて、ある種おかしなベクトルに病んでるのに、描かれるその多彩な孤独に共鳴し、最後の最後にはイビツだけど偉
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彼が愛したケーキ職人(2017年製作の映画)

3.7

言葉にならないこの味わいと奥行きはなんなのか。
愛する人を失った悲しみと喪失感。その共鳴。
それ以外のものは徹底して…主要人物たちの感情も行動の真意も…全く明かされないまま終わる。
なのに、決して消化
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スパルタカス(1960年製作の映画)

3.6

観る前に想像した以上に、人間の尊厳と、それを無視して世界を動かしていく権力の非情さや脆さを同時並行で描いた構成がよくできていました。
紀元前1世紀のローマ共和国で実際に起きた第三次奴隷戦争を指揮した剣
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現金に手を出すな(1954年製作の映画)

3.8

恋人でも家族でも友人でも…誰かと長い時を共有して、そして、共に老いていくこと。それは人によっては、豊かであると同時に意外と厄介なものなのかもしれない。その蓄積が、「腐れ」的なものでも「縁」になり、情に>>続きを読む

ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた(2018年製作の映画)

3.9

淡々としてこじんまりとしたつくりだけれど、とても穏やかで幸せな気持ちになれた音楽映画。取捨選択されて盛り込まれた「リアル」と「理想」の絶妙なバランス、その帰結として描かれる「個」の尊重の描き方が見事。>>続きを読む

パドマーワト 女神の誕生(2018年製作の映画)

2.8

見た目だけはとても綺麗に整えて飾り立てられているのに、肝心の中身は大味どころかほとんど味のない期待外れなフルコース料理を最後まで食べた挙句胃もたれしたような残念な気分になってしまった作品。断っておきま>>続きを読む

髪結いの亭主(1990年製作の映画)

3.4

やっと掴んだ恋と理想の生活。
それは心に安定をもたらすものとは限らない。むしろ、かけがえのないものになればなるほど、喪失の恐怖が胸に巣食って…。

ルコント監督は、「仕立て屋の恋」しかり、異常な愛の成
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氷上の王、ジョン・カリー(2018年製作の映画)

3.8

「僕の魂には才能と同じだけ悪魔が宿っている」

決められた図形をどれだけ正確に描き技を決められるかを競う「競技」偏重型だった1970年代のアイススケートに、音楽と舞踊による優雅なバレエ要素をふんだんに
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ダージリン急行(2007年製作の映画)

3.9

約10年ぶり人生二度目の鑑賞。
初見時はアクの強いアメリカ人三兄弟のインド旅珍道中を描いた魅惑的なドタバタ劇くらいの捉え方だったのですが。
二度目にして初めて、登場人物それぞれが抱える精神的孤独と、
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夜のとばりの物語(2011年製作の映画)

3.2

眼を見張らずにはいられない鮮やかな色彩美と折々に挟まれる重厚な旋律の響きがとても印象的だった影絵アニメーション。
世界お伽話集といった感じで、アフリカ、南米、チベットなど様々な国を舞台にした異国情緒溢
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ホワイト・クロウ 伝説のダンサー(2018年製作の映画)

3.2

他者を顧みない傲慢で美しい不世出の天才とは実に罪づくりなもので。
ある者は不安や敵意から排除を試みる。
別のある者は魅せられて救済を試みる。報われないどころが深く傷つけられて終わるのが大半だとしても。
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マイ・インターン(2015年製作の映画)

3.7

はたからはどんなに恵まれているように見える人でも皆、実は何がしかの孤独を感じているし、その孤独は埋めたい。そして、心のどこかで誰かに手を差し伸べてほしいと思っている。
でも、結局答えを出すのは、意思を
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犬ヶ島(2018年製作の映画)

3.4

アニメであってもウェス・アンダーソンはウェス・アンダーソン。とっておきのシュールさも、ポップさも、テンポの速さも、ゲスさも、残酷さも、風刺具合も。ブラック感満載なようで、ちゃんと盛り込まれる偉大なる愛>>続きを読む