19世紀末のウィーンを舞台に、幼なじみの奇術師の青年と公爵令嬢の身分違いの恋の結末を描いた王道少女漫画のようなお話。
若かりしころに引き離されて失った恋を取り戻すために得意の奇術を駆使しながら奔走す>>続きを読む
「ただ今はここにいる。それでいいんじゃない?」
観終わって、作品とは無関係なはずの「方丈記」の冒頭がなぜだか頭に浮かんだ。
『ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは>>続きを読む
一方的な価値の押し付け。その偽善的判断の結末。あるいは、当人ですらうまく掴めない感情の不可解さ。
ヴィスコンティは、アルベール・カミュの原作が持つ、人間の曖昧な本質とその暴走の恐ろしさを巧みに捉えて映>>続きを読む
私が大好きな小説家・塩野七生さんのエッセイによると、この作品のイタリア語原題の「Senso」はもっぱら「官能」と直訳されるけれど、その実、「感性」、「感覚」といった、より幅広い意味を含むのだとか。>>続きを読む
ツッコミどころがあまりにも多すぎてもはやどこからツッコんでいいのかわからない。そもそも、冒頭ナレーションからしてどうかしてる。
「これはイルマの物語。情熱と流血と野望とそして死の…おかしな物語。」>>続きを読む
は〜…最初から最後まで感嘆のため息のオンパレード。映像が色鮮やかで緻密で…とにもかくにも美しい。
乳兄弟であるアズールとアスマールという二人の少年が幼い頃に憧れた幻の妖精を探す冒険譚と友情という、ス>>続きを読む
天才に降りかかった孤独、不安、焦燥、重圧、虚無感、責任感、疲労、絶望、その結末。
栄光と名声の代償のようなその重さを、真実性を守るためか劇的な展開のない極めて淡々としたつくりながらも、観やすさに配慮し>>続きを読む
芸術の世間的認知や隆盛は、担い手の一途な情熱や美しさが存在するだけでは不十分で、権力や影響力を持つ者からの評価や後押しがあってこそ始まるという、価値の作為性と真理を残酷なまでに突きつけられた気がした作>>続きを読む
残酷で全く救いのない作品なのだけど、とても繊細で丁寧な演出の積み重ねが産んだ哀愁と美しさに心が奪われた作品。
第二次世界対戦時代のプラハを舞台に、ナチスドイツの要人ハイドリヒ暗殺を企てたチェコ人たち>>続きを読む
芥川龍之介作「藪の中」を土台に同人作「羅生門」の要素を加えた脚本によって、人間の本質をあぶり出しながらもオリジナリティを忘れない黒澤明らしい翻案力に、モノクロなのに木漏れ日などの自然の光と水の流れを完>>続きを読む
子育てには正解がない。親が子に与えられるものって(気持ち的にはともかく、環境としては)、実は結構限られてる。でも、その中で迷いながらも最良と考えたものを与えるしかない。
ただし、適宜見直しは必要。
で>>続きを読む
驚異的な「バランス」の上に成り立った作品。
ベルリンの壁崩壊と東西ドイツ統一というとてつもなく重い歴史事象を素材としているのに、とてもテンポよくコミカルな構成で、家族への愛とそれゆえの優しい嘘をしんみ>>続きを読む
移民大国フランスの世相をコミカルに描いたコメディ映画。
フランスのシノンに住むカトリック教徒で白人のヴェルヌイユ夫婦には四人の娘がいた。
なんと、既婚者上三人の娘婿は、それぞれユダヤ系、アラブ系、中>>続きを読む
とても叙情的で緻密で美しい、静謐な記憶的物語。
突発的に興行が決まったので無理に予定を組んで観に行ったのだけど、本当に観てよかった。じんわりと温かな余韻が心地いい。
メキシコのとある街に暮らす一家と>>続きを読む
鑑賞のコツは、まずは40分弱ひたすら耐えること。ここは勝負どころ。諦めたらいけない。その先には、多くの映画好きにとって、「現場」の混沌と熱さに酔いしれる恍惚の体験が待ってるから。
多分、開始早々40>>続きを読む
とてもコミカルで笑えてなんとも粋な素敵作品でした。言わずと知れたアメリカを代表するミュージカル映画。
俳優のドンと女優のリーナは、何度も共演歴のある、ハリウッドのドル箱スター。
ドンにはその気は全く>>続きを読む
観終わってすぐもう一度見返したい衝動に駆られる映画に出逢えることは、実は滅多になくて、本当に幸せなこと。これは私にとってそんな作品でした。
不条理で、哀しくて、重くて、色々なことが頭を巡る。でも、愛お>>続きを読む
若さ故の一途さとしなやかさに感じる爽快感と、人生のままならなさに感じる苦味が絶妙のバランスで配置されていて心打たれた音楽映画。
1985年のアイルランド。
父の失業を機に、学費の安い公立高校へ強制的>>続きを読む
ホロコーストを題材にした映画は数多くあり、当然どれも残酷でつらく悲しい面を持つのだけど、その中でもこの作品は、群を抜いて「生々しさ」を感じさせます。
ユダヤ人でピアニストのウワディスワフ・シュピルマ>>続きを読む
とても素朴なつくりなのだけど、切なくも心が洗われる気がした作品。
貧しくも健気な家族の姿を子どもを軸に描いた点が「自転車泥棒」(伊、1948)を、子供の視点からみた小さな日常を描いたという点が「冬冬>>続きを読む
何度も笑って泣いて、でも色々深く考えさせられて、ラストには感動に泣いて、鑑賞後は元気で幸せな気分になれた作品。
生まれながらに口がきけない、パキスタン人でイスラム教徒の少女シャヒーダー。
喋れるよう>>続きを読む
何を描きたかったのか全くわからなかった作品。
前半と後半の繋がりがほぼないと言っていいほど構成が壊滅的になってなくて、途中で飽きてしまった。
ひたすら繰り返され、しかもどれも似たり寄ったりの虐殺シーン>>続きを読む
ナチスドイツが猛威をふるった時代、里親の元で過ごした少女リーゼルの姿を描いた作品。マークース・ズーサックの「本泥棒」が原作。
ヒトラー率いるナチス政権下のドイツ。
共産党員の母は生きづらさから里親夫>>続きを読む
江戸時代後期に上田秋成が書いた読本「雨月物語」を翻案に、人間の欲望の愚かさと虚しさを、骨太な構成でありながらも、卓越したカメラワークに支えられた墨絵のような美しく風情ある映像でとても繊細に描いた溝口健>>続きを読む
「恋は盲目」とはよく言ったものだけど。
ただしそれは、一途で美しい無償の愛や自己犠牲、献身とは限らない。
むしろ、執着や嫉妬、相手を自分のものにするためならどんな手段でも選んでしまう残酷性や狡猾さ、そ>>続きを読む
心の隙間の形が呼応するように、ふっ…とお互いが居場所を占めてしまうことってある。
そんな時間を、細密な映像で瑞々しくも静かに描いた作品。
靴職人を目指している高校一年生の孝雄。雨の日の午前中は学校を>>続きを読む
あまりの凄さに圧倒された。
役者たちの重厚な演技がもたらす緊張感と緊迫感。
段階を追って次々と真実が明らかになっていく見事な構成。
仲代達矢演じる津雲半四郎が悲しみと後悔と怒りの感情をないまぜにし>>続きを読む
若く美しく、なにより快活軽妙なジェラール・フィリップをたっぷり楽しむための、ユル〜いチャンバラ系コスチューム映画。
18世紀ルイ15世時代のフランス。
ファンファンはあちこち女をたらしこむくせに責任>>続きを読む
正直、この映画がハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、全く答えがでない。
とりあえず見終わってすぐは、怒涛の展開とラストに「うわー!!?」ってなりました。残酷。怖い。
でもすごく面白い。巧妙。美しい>>続きを読む
はたから見たら幸せそうに見える人でも実は…という人生の真理が明確な形となった作品。 観終わって、「ああ、人生を描いた作品だな」と本当にしみじみ思った。
豪華な映像美と設定の中で上流階級の享楽と堕落を>>続きを読む
つらくて、哀しくて、切なくて、虚しくて、そして、予想外の結末に「あっ…」とさせられた作品。
事故に遭いシーツ姿の幽霊となった男。
哀しみを抱えて家を去った妻がいつか戻ってくると信じ、成仏もせず二人で>>続きを読む
ここまで優れた映画には滅多にお目にかかれない。簡潔なのに見事な構成が活きたとてもよい映画でした。
イギリスのロックバンドQueenの伝記的映画。
実話を土台にしながらも、映像物語の文脈に即した脚色や強>>続きを読む
柔らかい光を織り交ぜた明るく豊かな色彩と、異国情緒溢れるインドの風景や歳時記をとらえて丁寧に撮られた、映像美に満ちた作品。
ストーリーは取り立てて大きな展開をするわけではないけど、インドに住む英国人>>続きを読む
「この世では神の意思ではなく自力で生きねば」
「人生は後ろには進まん。進んだら大変だ」
作中で「過去のない男」が人々から言われたこの二つの言葉が、人生の真理そのもののようで、私の胸に落ち着いてしまい>>続きを読む
「母を愛せないが、愛さないこともできない」
互いに決して愛してないわけではないのに、分かり合えずに罵り、傷つけ合い、そばにいられない、17歳という思春期真っ只中のユベール少年とその母親の姿を描いた作品>>続きを読む
人からよく「好きな役者は?」と質問されます。そんな時は、今は亡きフランスの女優ジャンヌ・モローが真っ先に頭に浮かびます。
そんな彼女の、人生の集大成とも言える魅力が存分に詰まった作品でした。
夫とは>>続きを読む