螢さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

螢

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白夜(1957年製作の映画)

3.5

多くのルキノ・ヴィスコンティ監督の作品に共通することですが、原作を読んだ上で彼のつくった映画を観ると、本当に、彼の教養と翻案力、独自の美学と定めた主題、それを極限まで表現した点に感嘆せずにいられなくな>>続きを読む

すべての道はローマへ(1948年製作の映画)

3.5

変人だけどお人好しの幾何学者の青年と、わがまま系ハリウッド女優の、ドタバタ珍道中系ライトラブコメ。「世界一の美男」の代名詞だったジェラール・フィリップの、美男さゼロのコミカルさが秀逸です。

ローマで
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ミルピエ パリ・オペラ座に挑んだ男(2015年製作の映画)

3.2

パリ・オペラ座バレエ団の芸術監督に大抜擢されたバンジャマン・ミルピエ氏が、初演まで約40日という短期間で新作を作り上げるまでの姿を追った、ドキュメンタリー映画。

ミルピエはフランス人ではあるけど、そ
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空海 ーKU-KAIー 美しき王妃の謎(2017年製作の映画)

2.5

お金がかかっていることがわかる、歴史ファンタジースペクタクル映画。

安禄山の乱から30年後の中国・唐の時代。
倭国から来た僧・空海と、官吏で詩人の白居易が、宮中で起こり、皇帝を襲った妖術事件をきっか
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タクシードライバー(1976年製作の映画)

3.2

鑑賞している間中、わだかまりと不安、そして、少なからず湧いてくる共感を否定できないまま、薄ら寒く見終えた映画。

タクシードライバーとなった一人の男の、平凡な日常の中で鬱屈と孤独を募らせながらもがき、
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眠れる美女(2006年製作の映画)

3.0

川端康成の同名小説を翻案として、ドイツを舞台に置き換えて描いた、退廃的でエロティックな作品。

原作の設定そのままに、謎に満ちた娼館で、決して起きない裸の若い娘と添い寝をしながら、過去のあれこれを思い
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グランド・ブダペスト・ホテル(2014年製作の映画)

3.8

なんてポップで、コミカルで、ゲスで、グロテスクで、と思ったら意外とヒューマンで、なにより、とことんシュールな、摩訶不思議なおとぎ話的映画。

1968年。スランプと孤独に陥いった作家は、共産主義国家・
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ライオンは今夜死ぬ(2017年製作の映画)

3.6

死に対峙しようとする老人の姿が、様々な対比と色調の美しさの中で丁寧に描かれた作品です。

70歳を超えた俳優のジャン。彼は、仕事で訪れた南仏のロケ地で、死にゆく老人の演じ方に悩んでいた。図らずも、共演
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超高速!参勤交代(2014年製作の映画)

3.4

このテの作品は、正直、展開もラストも、鑑賞前の予想とは大きく外れない。なので、ストーリーよりは、むしろ、笑いあり涙ありの過程を、演技派役者さんたちの巧みな掛け合いで存分に魅せてもらうことを期待するもの>>続きを読む

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011年製作の映画)

3.7

9.11によって突然父親を失ったアスペルガー症候群の少年が、父の遺品にあった「鍵」の意味を求めて、ニューヨーク中を探し回るお話。

アスペルガー症候群の気があり、人と関わったり、自分の思いを伝えること
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死刑台のエレベーター(1958年製作の映画)

3.9

なんて無駄のない見事な映画!
音楽も、演出も、情緒も、演技も完璧です。なにより、極めてシンプルなストーリーながら、それぞれの登場人物たちの行動が意図せず影響を及ぼして絡まり合っていく「三軸構成」が絶妙
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毛皮のヴィーナス(2013年製作の映画)

3.2

まるで谷崎潤一郎の小説世界を映像化したような、戯曲的SM映画。ドイツの小説をモチーフにしたフランス映画なのに。「変態」(というか、「サディズム」と「マゾヒズム」の構造)って、実は世界共通の概念があるの>>続きを読む

はじまりのうた(2013年製作の映画)

3.8

たとえ人生の一時でも、こんな「同士」と出逢えて何かを創れたら、素敵だなあ…と、愛おしくも染み染みと見終えた作品。

駆け出しの女性ミュージシャンと落ち目の中年男性プロデューサーの偶然の出会いから始まる
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君の名は。(2016年製作の映画)

3.3

互いに入れ替わってしまった高校生男女の運命的な恋を、光彩を巧みに捉えた透明感のある美しい映像と、交錯する時間軸を停滞なく流麗に切り替わっていく場面展開の中で描いたSF恋愛アニメーション映画。

東京都
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駆込み女と駆出し男(2015年製作の映画)

2.8

女性からの離婚が認められていなかった江戸時代中期、唯一それを認めていた「縁切寺」と知られる鎌倉の東慶寺に駆け込んだ女性たちを描いた作品。

駆け込んだ理由は人それぞれ。
愛する人に病に苦しむ姿を見せた
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トム・アット・ザ・ファーム(2013年製作の映画)

3.2

暴力による支配と服従という典型的な共依存関係を、片手に足りる登場人物と閉じた世界の枠の中で、これほど複雑かつ、奥行きをもって描いた作品もなかなかないと思います。

同性愛者のトムは、事故で亡くなった恋
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男と女(1966年製作の映画)

3.0

究極的にシンプルに展開する中年男女の恋を、ここまで美しく技巧的に、そして「魅せる」ものとして撮りきった、若き日のクロード・ルルーシュ監督と、その世界を完璧に彩る音楽を提供したフランシス・レイのコンビに>>続きを読む

レオン 完全版(1994年製作の映画)

3.0

属性を超えて孤独が共鳴することってあるけど、それをこんな壮絶な終わりに繋げたかあ…と感心した映画。

天涯孤独の殺し屋レオンと、家庭に居場所のない12歳の少女マチルダ。
同じアパートに暮らす孤独な二人
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大人は判ってくれない(1959年製作の映画)

3.5

思春期に差し掛かった少年の抵抗と孤独、そして、転落と僅かな希望を、一見シンプルなようで、その実、とても緻密に組み立てられた構成で描いた、静かなのに、とても強い余韻を残す作品です。

13歳のアントワー
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用心棒(1961年製作の映画)

3.5

細かな演出と全くブレのない鮮明かつ的確なカメラワークによる、場面毎の的確な空気感や臨場感、そして立体感を存分に楽しめる、見事な映像作品としての印象が強く残った作品。

ストーリーはシンプルで、一見悪ぶ
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ポリーナ、私を踊る(2016年製作の映画)

3.0

少女の情熱と挫折と踠き、そして成長を、バレエを題材に瑞々しくもしなやかに描いた作品。

バレエダンサーの卵として日々を重ねるロシアの少女ポリーナ。
たまたま公演を観たコンテンポラリーダンスに魅入られ
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ゴッホ~最期の手紙~(2017年製作の映画)

3.2

画家ゴッホの人生を辿るのに、125人の現代の画家たちが60,000枚超の「ゴッホタッチ」の油絵と、それらに差し込むための水彩画を描き、繋ぎ合わせて作ったという、極めて贅沢なアニメーション映画です。
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裸足の季節(2015年製作の映画)

3.8

女性が抑圧される姿と、その中でも精一杯、束の間の若さを謳歌しながらなんとか抗おうとする少女たちの姿を、瑞々しくて魅力的な映像構成の下、愛着を持って描いたことがわかる、トルコ出身の女性監督の作品。

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ロバと王女(1970年製作の映画)

3.2

一言でいうと肉食系王女様の婚活ストーリー

「シェルブールの雨傘」や、「ロシュフォールの恋人」の、ジャック・ドゥミ(監督)、ミシェル・ルグラン(音楽)、そして、カトリーヌ・ドヌーヴ(主演)という組み合
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クレオパトラ(1963年製作の映画)

3.8

洪水のように絶えず視覚を刺激し続ける圧倒的に豪華な映像をたっぷり楽しむための映画。

古代エジプトやローマを再現する超絶豪華な巨大セット。
主要俳優に加えて22万人とも言われた莫大な数のエキストラが作
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LION ライオン 25年目のただいま(2015年製作の映画)

3.5

インドで5歳の時に迷子になり、オーストラリアに養子に出された男性が、記憶の断片を辿りながら、Google earth を駆使して、迷子から25年後にインドの自分の家を探し当てる…、という実話に基づくお>>続きを読む

PK(2014年製作の映画)

4.0

地球に降り立った宇宙人の目を通して「宗教問題」を考えるという、荒唐無稽な設定なのだけど、笑いながらも深ーく考えさせられて、最後にはホロリとさせられた、「社会派」と「ラブ」が混じり合った、不思議だけど、>>続きを読む

副王家の一族(2007年製作の映画)

2.5

イタリア独立戦争時代のシチリアを舞台に、国王に代わって領地を統治した「副王」と呼ばれる名門貴族一族の骨肉の争いを描いたお話。

副王であるウガタ一族の当主で利己的な父・ジャコモと彼に反発する息子のコン
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博士と彼女のセオリー(2014年製作の映画)

3.2

脳は正常なのに筋肉が動かなくなってゆくALSという難病にかかりながらも、世界的物理学者となったスティーブン・ホーキング氏の伝記映画。

ALSを患い、余命2年と宣告された大学院生のスティーブン。
彼の
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Mommy/マミー(2014年製作の映画)

3.5

障害を持つ息子と、その母親の姿を通じて、何よりも愛おしく大切なのに、のしかかる肉体的・精神的な疲弊や葛藤、経済的負担のために、共にはいられない関係を、映像や音楽などの総合的な演出を駆使して描いた、グザ>>続きを読む

永遠の0(2013年製作の映画)

3.2

特攻の話なので、観る前から展開は予想できているのに、不覚にも何度も泣きそうになってしまった作品。

26歳の司法浪人・健太郎は、祖母・松乃の葬儀の席で、これまで祖父と思っていた男性とは別に、血縁上の
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帰らざる夜明け(1971年製作の映画)

3.5

映像的にも、登場人物たちの心理的にも、それこそ何重もの意味で、「荒涼」という言葉がしっくりきた作品。

中年にさしかかった流れ者で謎めいた雰囲気を持つ男と、初老にさしかかった未亡人、軽い知的障害があり
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蜘蛛巣城(1957年製作の映画)

4.0

「修羅の道に進むなら思いきり極悪非道にやれ」

シェイクスピア劇「マクベス」を、日本の戦国時代に舞台を移し、黒澤明・三船敏郎コンビで、1957年(昭和32年)に映画化したもの。

物の怪の予言と妻の唆
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マクベス(2015年製作の映画)

3.2

シェイクスピア戯曲の映画版で、魔女の予言と妻の唆しから、権力に欲を出して殺人を重ね、疑心暗鬼から破滅していく男の物語です。

時間的な感覚など、言葉や舞台上では完全に表現しきれない点を、映像の利点を上
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ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)

3.5

一人の男が、現実逃避を繰り返しながらも、逃れられない孤独と狂気をジワジワと身に溜め込み、蝕まれ続けて、それが致死量に至った時に呆気なく破滅を迎えて死んでしまうまでの二十数年間を、ヴィスコンティらしい、>>続きを読む

グラン・ブルー完全版 -デジタル・レストア・バージョン-(1988年製作の映画)

3.5

最初から最後まで、静謐な狂気と孤独に満ちており、ある種の毒気なのか、観終わって少なからず疲労を感じた作品。

潜水に取り憑かれたフランス人のジャックと、イタリア人のエンゾ。
ギリシアの海で共に育った
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