ケンヤムさんの映画レビュー・感想・評価 - 10ページ目

ケンヤム

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ボーダーライン(2015年製作の映画)

4.7

善と悪という概念は、秩序が保たれているからこそ成立する概念なのであって、秩序の乱れた場所には死ぬか生きるかしかない。
引き金を先に引くことのできたものが正義なのだ。
「暗闇が怖いか?」
境目が曖昧にな
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イット・フォローズ(2014年製作の映画)

4.8

昔子供の頃「どうやったら子どもは生まれるの?」と、大人を困らせるような質問をすることがよくあった。
母は「ペリカンが届けに来てくれるのよ」といつもはぐらかしたし、私はそのデタラメを信じたふりをした。
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愛しのアイリーン(2018年製作の映画)

4.8

あまり映画を観て泣くことはないし、泣くことを求めて映画を見ることはないのだけれど、泣いてしまった。
それは、どうしようもなくバカな人たちが動いて動いて動きまくる運動そのものに、むき出しの人間性、愚かさ
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SUNNY 強い気持ち・強い愛(2018年製作の映画)

4.8

超大味なストーリーそのものが、90年代ポップカルチャーへのオマージュになっていて、それだけでなんだか泣けた。
同時に、私たちは女子高生の笑わない時代に生まれてしまったんだなと悲しくなった。
それでも、
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ランブルフィッシュ(1983年製作の映画)

4.6

兄という絶対的な存在に駆り立てられ続ける弟。
弟は、ランブルフィッシュとともに川をたどって海に逃げた。

コッポラの胡蝶の夢(2007年製作の映画)

4.6

私は行ったことのないところへ行ったことがあるし、過ごしたことのない時間を過ごしたことがある。
時間とは非現実だ。空間さえそこでは無意味。

時間と意識に人間は囚われて生きるわけだけれど、そこから抜け出
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カンバセーション…盗聴…(1973年製作の映画)

4.7

コミュニケーション、プライバシー、私的な領域、公的な領域、通じ合うこと。
盗聴という行為を通して、人は本質的に通じ合うことはできないということを見せられたような気分になる映画だった。

人の生活の中に
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宇宙戦争(2005年製作の映画)

4.8

スピルバーグは、すっかり世界を発狂させてしまった現代の恐怖の只中に鑑賞者を引きずりこむ。
トライポッドの造形が象徴的で、その造形はまるでカメラのようだ。
スピルバーグは、映画そのものを恐怖を具現化する
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野良犬(1949年製作の映画)

4.6

戦後の秩序の乱れた日本において、善悪の境目をはっきりさせるということは待った無しの課題だったのだとこの映画を見て痛感した。
黒澤明が善悪の二元論から生涯抜け出せなかったのも、戦後の秩序の乱れた日本を見
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トゥルー・ロマンス(1993年製作の映画)

4.6

バカが成長することもなくバカのままハッピーエンドを迎える映画ってなんでないんだろ。タランティーノも自分がバカなのに結局バカにバッドエンドしか用意してくれないんだな。
と思ってたら、トニースコットがしっ
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きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)

4.8

今日見た映画二本とも、役者の身体性を全面に押し出した映画だった。
時に身体は言葉よりも雄弁だ。

三人が画面の中でちょこまか無軌道に動き回る様。
キッズリターンの無軌道に動き回る自転車を思い出す。
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寝ても覚めても(2018年製作の映画)

4.8

やっぱり私たちは、演技しないと生きていけない。
女は女であることを演じるし、男は男であることを演じる。
「私亮平のこと好きやで」
と何かを確認するかのように、定期的につぶやく朝子の気持ち悪さ。
彼女は
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ゴッドファーザーPART II(1974年製作の映画)

5.0

パート1の序盤のビトコルレオーネのセリフ
「家族を大切にできない奴は男じゃない」
が、パート2のラストで返ってくる。

フレドは仕事をできないボンクラかもしれないけど、大きな魚を釣ることができた。
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ヒーローショー(2010年製作の映画)

4.8

やばい。井筒監督ツボかも知れん。
あんなに後藤がかっこいいのに福徳に感情移入してしまう俺は、やっぱボンクラヘタレダメ人間なんだなと思った。
けれど、結局この映画の中でボンクラヘタレダメ人間は負の連鎖か
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検察側の罪人(2018年製作の映画)

4.4

インパール作戦の話がが唐突に入ってきたり、居心地の悪さを感じさせるカット割りだったり、なかなか気味の悪い映画でとても面白かった。
むき出しの悪よりも、むき出しの正義が一番残酷だ。

ウインド・リバー(2017年製作の映画)

4.5

諦めるか生き残るかしかない人たち。
運の話なんてトラックに轢かれるか轢かれないかしかない。
それでも選ぶことができるなら、私たちは選ばなければいけない。
「それでも」生きることを選ぶ人の尊さ。
生きる
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独立愚連隊(1959年製作の映画)

4.5

戦争をエンタメに!
こんなバカバカしいもんは笑い飛ばすしかないだろうという諦め。
諦めの中にチラリと覗く意地みたいなもの。

幕末太陽傳(1957年製作の映画)

5.0

一番周りを笑わせてる奴が、一番死を身近に感じているという悲しさ。
人間の業の肯定。
人生からの積極的逃避。

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)

4.6

めちゃくちゃなものを成立させようとする人間の姿そのものが好きで、そういう人間の必死な姿を存分に堪能できるのが映画の一番素晴らしいところだと思う。
そんな人間の必死な姿は無様だし、滑稽だし、惨めだ。
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野火(2014年製作の映画)

5.0

この映画をみて戦争は嫌だとか、残酷だ、むごたらしいと思うのが人間ならば、飛び散る血が美しい、花のような真っ赤な肉が綺麗だ、人肉美味しそうと思うのも人間だ。

塚本晋也は人間ではないものに変身してしまう
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軍旗はためく下に(1972年製作の映画)

4.6

塚本晋也版野火との二本立てだったが、どちらも戦争と現代を結びつけるような映画だった。
この映画を観て映画ファンなら誰でも原一男の「ゆきゆきて神軍」を想起するだろうが、こっちの方は劇映画としてしっかり芥
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Endless Waltz エンドレス・ワルツ(1995年製作の映画)

4.5

大衆対前衛
まとも対気狂い
正常対異常
世間対孤独
セーラー服を脱がさないで対フリージャズ
三流雑誌対地下のライブハウス
世間対精神病院
太く短く対細く長く
この世対あの世

この映画の最後セーラー服
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シコふんじゃった。(1991年製作の映画)

4.4

顔を背けるな 背けるくらいなら目瞑って当たってこい

もう楽してズルするのはやめだ

13人連続暴行魔(1978年製作の映画)

4.8

孤独な人間は自分を世界の中に規定できずに、自分対全世界という構図を決定してしまう。
主人公は、拳銃を手にしたばっかりに世界と戦う力を手にしてしまう。
彼も拳銃を手にする前までは、梶井基次郎の檸檬の主人
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蜘蛛巣城(1957年製作の映画)

4.8

影武者と乱の系譜をたどっていくとこの作品にたどり着くのだなと思った。
能や狂言のような徹底された様式美。
それでいて、エンターテイメントしてるところが蜘蛛の巣城の好きなところ。

また、黒澤明が囚われ
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冬の光(1962年製作の映画)

4.5

自分の中で観た後どうしようもなくなる気持ちになる映画があって、この映画はその部類に入る映画だった。
絶望とも失望とも形容できないなんとも言えないあの気分。
死ぬしかないというような諦めは希望だ。
この
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酔いどれ天使(1948年製作の映画)

4.5

やっぱこん時から、もう黒澤明と三船敏郎はすげぇんだ。

クレアのカメラ(2017年製作の映画)

4.8

ストップモーションで終わる映画が大好きで、だから阪本順治の団地とかすごく好きなのだけれど、ストップモーションで終わるのはすごく勇気のいることのような気がする。
だって、観客にはぁ?意味わかんねーって思
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椿三十郎(1962年製作の映画)

4.7

いつぶりかの再見。
劇場初鑑賞。

映画史上最も濃密な15秒。
息をのむとはまさにこのこと。
抜き身の刀同士が向き合う静寂の中での命のやりとり。

それでも、鞘に収まる刀の様な、自分の力をひけらかすこ
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用心棒(1961年製作の映画)

4.8

いつぶりかの再見。
やっぱ最高
善悪の境目すら乗り越えてしまうアンチヒーロー像の象徴桑畑三十郎。
颯爽とクソみたいなこの世の中を歩いていく背中に何度も勇気付けられる。

生きる(1952年製作の映画)

4.8

いつぶりかの再見。
「生きる」ということはなんなのかということに、こんなにもまっすぐ向き合った映画はない。
主人公があの女の子とデートする時、常に何かが二人の間に隔たりとして存在する。
駐車してあるバ
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カフェ・ソサエティ(2016年製作の映画)

4.6

ウディアレン映画のノスタルジックな余韻をこれでもかと感じさせてくれる映画。
ハリウッドとニューヨークは互いに想い合ってるのだけれど、結ばれない。
二人の関係をそんな比喩としてみてしまった。

人生は喜
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JAWS/ジョーズ(1975年製作の映画)

5.0

再見。最高。やっぱジョーズより純粋に面白いエンタメ映画ってないんじゃないかと思った。

見えないものへの不安とか、恐怖をジョーズというサメとして具現化したスピルバーグ!

激突!でもスピルバーグはダン
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