なっこさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

夕凪の街 桜の国(2007年製作の映画)

2.8

良い映画というのは、見ている間心を揺さぶるものだけじゃない、
見終わった後も、何か違和感が残って、そのことについてしばらく考えさせられるものも私は良い映画だと思う。

美しい景色や俳優の演技に完成され
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この世界の片隅に(2016年製作の映画)

3.1

戦争から遠く離れているようでいて、
豊かな海にも、田舎の田畑にまでも、
確かにそこいら中に戦争という暴力の陰はあったのだ。
人々のどこか遠くにあったはずの戦争、それに身体も心も蝕まれていく、ゆっくりと
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奇蹟がくれた数式(2015年製作の映画)

2.8

閃きはどこからやってくる?

天才と秀才の違いってなんだろう。
私はどちらでもないから分からないけれど。
ラマヌジャンは閃き型の天才でハーディは冷静沈着な秀才よりの数学者に見えた。
どちらにしても真理
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マリアンヌ(2016年製作の映画)

2.7

ゆっくりと物語は進んでいく、その速度が、愛の物語をより美しいものにする。

ブラピのフランス語が耳に心地良い。

愛はどこにあるのか、
ふとそんなことを思わされる。

騙し騙され合うのは、男女の仲だけ
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花戦さ(2017年製作の映画)

3.3

人の心のとらえ難さ

茶の道を極めた千利休と花僧として花を生けることで仏の道を説く池坊

そんなふたりは違う道を歩めども、通底では響き合う

信長公の前で、見事だと褒められる仕事をしたその場に居合わせ
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サバイバルファミリー(2017年製作の映画)

2.9

現代の御伽噺、
もしも電気が止まってしまったなら…

そんな世界をシミュレートしてみる。

世の中の多くのものが、電気を頼りにしていることを考えさせられるけれど、それだけじゃない、情報も入って来なくて
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聖の青春(2016年製作の映画)

3.0

余白の多い映画だ。

行間を読ませるような、それほど聖を演じる松山ケンイチの演技を信頼している。役を生きている彼から、演技を超えた何かが胸に迫ってきて、
“ああ、ちゃんとしなきゃだ”と、素直にそう感じ
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海賊とよばれた男(2016年製作の映画)

2.1

これ程までに女性性の視点を欠いた物語はとても珍しく、かといって押し付けがましい程の男性性ばかりという訳ではなく、どこかサラッとしたヒーロー像。

労働の美しさ、
漢らしさ、
商魂、
日本人らしさ、
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ゴジラ(1954年製作の映画)

3.1

あらすじ◆太平洋の沖合いで船舶が次々に沈没する事件が発生。数少ない生存者が、巨大な怪獣の目撃談をもたらす。古生物学者の山根博士(志村喬)や助手で娘の恵美子(河内桃子)、その恋人でサルベージ機関の所長・>>続きを読む

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)

2.7

見ながら色んなことを考えた、
けれど私の心に最後に残ったのは、意外にも“希望”だった。

3.11以後の災害列島を生きる私たちには、未来を生きる上で避けては通れない課題がある。
時としてその課題に押し
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図書館戦争 THE LAST MISSION(2015年製作の映画)

3.1

何のために戦うのか
何を守りたいのか

分かっている方が強い。

組織のためや上からの命令で戦うことほど虚しいことはない。

共に戦うヒーローとヒロインは、一番近くで守ることも助けることもできる。けれ
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図書館戦争(2013年製作の映画)

3.2

こんなところにいたのね、私の王子さま

観終わってそんなことを思ってしまう。でも、どちらかと言えば恋愛よりアクションメインの作品。

話の始まりは昭和の終わり次の年号に移り変わるその時にメディア良化法
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SCOOP!(2016年製作の映画)

2.2

この軽さは、どこからやってくるのだろう。

浮遊感とも言えるかもしれない。

お洒落で綺麗な映像に申し分ない役者の演技、時代性を切り取ったそれなりのストーリー展開…しかし、後に残るのは、

“つわもの
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お父さんと伊藤さん(2015年製作の映画)

3.1

もしも、『東京物語』の続きを現代版で描くとするならば、こんな設定になるのじゃないかな。

そんな思いがふとよぎった。

年の離れた同棲相手と暮らす34歳のヒロインの元に、長男である兄夫婦と上手く暮らせ
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世界から猫が消えたなら(2015年製作の映画)

2.5

猫と佐藤健くんが好きなら、迷わず見るべき映画。

自分の生きる世界からひとつずつ、自分が大切にしたい物が消えていってしまうなら、私はその世界を生き続ける価値のある世界だと思うことが出来るだろうか、
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怒り(2016年製作の映画)

3.4

画面が暗くなって、エンドロールまでの一瞬立ち上がって拍手をしたくなる衝動にかられた久しぶりの作品。

これは、人が人を“信じたい”と思うその瞬間の心の働きに重きをおいた作品なのだと思う。

人と人の間
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湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)

3.4

見終わってから思い出した、「死ぬまでにしたい10のこと」に似てるって。
癌を宣告されてボロボロの銭湯でひとり泣くシーンの後で「決めた!」という彼女の力強い一言。
残された時間の中でやり切りたいことを決
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淵に立つ(2016年製作の映画)

2.5

この不可解さはどこからやってくるのだろう
その分からなさがさらなる恐さを生む

軸となるのは二つの事件
どちらも詳細は描かれず、推測の域を出ない
ひとつ目は夫婦が出会う前に起きた殺人事件、ふたつ目は夫
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永い言い訳(2016年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

欠けたピースを埋めようとしてはじめて、自分に欠けていたものを思い知らされる。
女はいつも逃げない。けれど常に自分がここから居なくなったら、この人は、家族は、どうなるのだろう…と考えている。予期せぬ事故
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だれかの木琴(2016年製作の映画)

3.1

新しい家、最新の防犯設備、可愛い娘、完ぺきな夫…

心は外から見えない

中で何を思っていても、
何を抱えていても、どんなにそばにいても、
覗き見ることは出来ない。

同じように、真新しい家の幸福そう
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団地(2015年製作の映画)

2.7

すごく身近なものが案外最も遠い未知の空間とつながっているのかもしれない、という面白さ。

団地には幼い頃住んでいたことがあって、
団地の人間関係の近さ、メンドくささが“ああ、こんな感じだよね”と、良く
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クリスマス・キャロル(1970年製作の映画)

3.9

この時期(クリスマス前)になると必ず観ていたほど大好きな作品で、
でもさすがにVHSではどうにもならない、ってことで、今年はとうとうDVDを購入しちゃいました、それくらいに大好きです。

なんといって
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高台家の人々(2016年製作の映画)

2.5

前半の恋の始まり、綾瀬はるかちゃんのコメディアンヌぶりに
にこにこキュンキュンしちゃうけれど、
後半の結婚への道のりがなかなか遠くてけっこう切ない…

でも、好きな人の特殊な能力に悩まされるからこそ
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64 ロクヨン 前編(2016年製作の映画)

2.7

このレビューはネタバレを含みます

事件の真相を明らかにしていく本ストーリーと同時に

前編・後編を通して描かれるのは、組織の中でいかに生きるか、ということだと感じた。

仕事をする上で大事なことは、「対立構造を作らないこと」という言葉
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64 ロクヨン 後編(2016年製作の映画)

2.5

前編のハラハラドキドキに比べたら、
なんだかそのままあっさりな展開に拍子抜けしてしまった。

これなら、もっと削るところ削ってタイトな一本に仕上げたほうが良かったのではないか、
もしくは、視点となる人
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偉大なるマルグリット(2015年製作の映画)

3.0

一言に“愛”と言っても色んな意味や形があるのだと思う
彼女が欲しかった“夫の愛”なるものは、現代を生きる私たちと同じものだと考えてよいものだろうか。

賞賛、承認、欲望、絆、あるいは対等な会話。
求め
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最高の花婿/ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲(2014年製作の映画)

2.9

フランスは移民の国。
現実的にはきっと、色んな問題があって、明るい話題ばかりではない。

この家族のように、
永くその土地に暮らす人々は愛する祖国の土地を、様々な土地からやってきた人々と分かち合う寛容
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さざなみ(2015年製作の映画)

3.2

人の心の内側に焦点を当てると
こんなにも静かに
こんなにも坦々と
関係の崩壊は訪れゆくのか

この演技が賞を取ったのは頷ける
それは冒頭の水を飲むシーンで浮かび上がる、
爽やかに始まった一週間がその日
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幸せをつかむ歌(2015年製作の映画)

2.8

もしも、これが子どもの視点から描かれたアメリカの現代家族の風景であったなら、ありふれたフツーの映画になっていたのかもしれない。

ゲイの兄貴に、もうひとりの出来の良い兄にはいけ好かない出来た彼女、末っ
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バレエボーイズ(2014年製作の映画)

2.5

少年から青年へ、12歳から16歳の記録

ギャングエイジの頃、子どもだけの世界や暗号があるものだけれど
彼らは踊りという“言葉”で会話をする、
それが心底かっこいい。

バレエスクールの卒業を控えて、
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ジプシー・フラメンコ(2012年製作の映画)

2.7

少年は一度そのフィルムが回りはじめると
伝説のフラメンコダンサーからひと時も視線を外すことがない

そんなフラメンコに対する溢れんばかりの好奇心、情熱

その熱に引き込まれて
こちらも目が離せなくなる
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殿、利息でござる!(2016年製作の映画)

3.1

真っ暗な画面印象的な音で始まる
何の音だろう…と引き込まれた

そしてエンディングの清々しさ

素敵な俳優さんたちが演じる失われつつあるかもしれぬ日本人の美徳、それは

慎まれよ

の一言に尽きる。
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あやしい彼女(2016年製作の映画)

3.5

ローマの休日がお好きなら、絶対に観るべき作品

至る所にローマの休日へのオマージュが散りばめられている

そしてファンタジックな展開なのに、現代を生きる女性の悩みもしっかり描かれている

母と娘の葛藤
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ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります(2014年製作の映画)

3.2

鑑賞後に原作小説を読み進めている途中ですが、

映像化の段階での設定変更が少し気になるところ。

そういった意味では程よくコンパクトまとまり分かりやすくスピード感もある映画。
老年期に差し掛かり住み慣
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マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章(2015年製作の映画)

2.7

いくつになっても恋はしていたい…違うね、

いくつになっても恋は落ちるもの、
するものじゃない。

異国の地で人生の最後を過ごすというのは、ちょっと想像つかない

けれど、ようやく辿り着いた終の住処と
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FOUJITA(2015年製作の映画)

3.0

オダギリジョーのフランス語がセクシー

前半のパリの乾いた明るさ
後半の日本の湿度のある暗さ

その描き分け
映像にはどちらも愛情をもって美しく示されているように感じた。

冒頭のまるで絵画のような始
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