えびちゃんさんの映画レビュー・感想・評価

えびちゃん

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ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.5

とびきり素晴らしい作品だった。いつか歳をもっと重ねていって、日々の生活に疲弊した中でこんな小さな冒険に身を委ねる夜があったらいいと思う。

疲れて乗った電車でがたがた揺られて、シートに吸われる。音はす
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.0

エリセの映画へのまなざし。なによりエリセの作品をずっとずっと待ち続けたファンへのとっておきの贈り物のような作品。そしてエリセ自身がいちばんのエリセファンなんじゃ?と思わずにいられなかった。
2023年
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枯れ葉(2023年製作の映画)

5.0

毎日、毎朝、ウクライナだのガザだのとそこで起こっている正視しがたい凄惨さに胸が痛む、荒む。そのくせ遠い国で起こっていることだのと心まで距離をとる。
人と人との距離は物理的な距離をこえると常々思っていた
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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.0

寄るべない男たちの哀しきアメリカン・ドリーム。肩寄せて夢を語り合う姿、添い遂げる姿はまるで長年連れ添った夫婦のようだった。
ケリー・ライカート作品で初めて「ぅぉお面白い!」と思えた。3本目だけどね。ベ
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お葬式(1984年製作の映画)

4.5

伊丹十三式お葬式上手にできるかな?
じいちゃんの葬式を思い出しながらひーひー笑いながら楽しみました。火葬をエンタメ化することってあるんだ。山崎努「火加減とかあるんですか?」お葬式というにはあまりにも祭
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デカローグ デジタル・リマスター版(1989年製作の映画)

4.5

587分完走。ものすごい充足感と同時にものすごく暇人だと我にかえった。

#1 ある運命に関する物語
幸福の象徴である鳩に、血付いてるんですけど……。
神を信じないお父さん。計算できるものだけを信じて
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コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

5.0

ハァ?めっちゃいいんだが……コッコラのパン屋オリ・マキも大好きな作品だが、こちらもとても良い…本当に良い…。
主人公の孤独と恋人の心が離れてしまっていることのひんやりした感覚と、雪が溶けていくような友
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SELF AND OTHERS(2000年製作の映画)

5.0

牛腸茂雄さんのことを思うと胸がざわざわする。叶うことはないが、彼と正面から向き合ったときに、やはりぎょっとしてしまうだろうし、それをきっと悟られてしまうだろうという後ろめたさ。見つめられることへの不安>>続きを読む

毒薬/我慢ならない女(1951年製作の映画)

4.5

ミシェル・シモンだいすき!!!!!!
殺すか殺されるかの熟年夫婦の結婚生活の終着点と田舎のエンタメがごっちゃになったおちゃめなブラックさにお腹捩れるほど笑った。死の扱いが軽いから気分悪い人もいるだろう
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.0

正直最初はあんまりハマらないかなぁと思ってしまった。絵画的な切り抜き方も美しいけどくど過ぎで食傷気味だったので新幹線の車内だったり、寝っころんでiPadで観たり、なんか食べながら観たりとシネフィルに殺>>続きを読む

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

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"いっ"
"いっ"
から始まるリョータと桜木のアリウープ、初っ端からびりびり震えた。今回のオリジナルストーリー以外は展開を知っているのに、彼らの死闘を目の端に涙をいっぱいためて見守った。
コートの奥ま
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パリ、18区、夜。(1994年製作の映画)

4.5

いきなり余談だが、横浜黄金町の映画館で観た。黒澤の『天国と地獄』のスラム街がこの町だったと記憶しているのだけど、作品に映るパリ18区の雑多な雰囲気と猥雑でちょっとアングラっぽい黄金町の雰囲気がとてもよ>>続きを読む

ブリング・ミンヨー・バック!(2022年製作の映画)

5.0

サイコーーーー!!!!気持ち良すぎて失禁するかと思った。
おそらく今世界で最も知られているであろう日本のミュージシャン、民謡クルセイダーズ。日本より世界に知られている民クルとともに民謡のなりたち、そも
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春原さんのうた(2021年製作の映画)

4.5

凄まじい行間の多さと聞いていたので理解できないかもと不安に思っていたけれど、そんなことは杞憂だった。
思っていた以上に行間は空間だらけでびっくりしたし、なんなら観終わってから読んだたった5行のあらすじ
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偶然と想像(2021年製作の映画)

4.0

今さら感がありますが、すっごくおもしろかった!濱口監督作品は寝ても覚めてもとドライブマイカーを観ていてどちらも受け入れがたい作品だったのでどうかな〜と構えていたけど、文句なしに面白い。っていうか思いっ>>続きを読む

人情紙風船(1937年製作の映画)

5.0

映画のなかの雨のシーンは断絶が描かれていて、いつも胸に切ない気持ちが押し寄せる。本作はひときわ切なくてやるせなくてぎゅっと力が入ってしまった。
長屋で繰り広げられる掛け合いがおかしくてくすくすとさせら
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さくらももこワールド ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌(1992年製作の映画)

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本作に糸井重里がつけたコピーは「しみじみしましょう」なんだと。
冒頭の1969年のドラッグレースのMVはサイケでイケてて高まった。さくらももこ色に着彩されたはらいそも最高にときめいた。ちょうど小坂忠さ
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アンナの出会い(1978年製作の映画)

4.5

アケルマン初観賞。ファーストカットからかなり好きだと思った。ピリッと背筋の伸びるような、落ち着かない、心許ない雰囲気は最初から最後まで続き、一瞬も弛緩することがなかった。ストーリーになんの起伏もないの>>続きを読む

カモン カモン(2021年製作の映画)

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点数をつけて、いいとか悪いとか評価するような作品ではないなと思った。
マイク・ミルズ監督の作品は題材を変えながらもずっとこの"相手の声を聞こう、自分の気持ちを素直に言葉にしよう、寄り添いあおう"という
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簪(かんざし)(1941年製作の映画)

4.0

ピュアネス弾けていてこっちが恥ずかしい。温泉宿でのひと夏の淡い思い出。
露天風呂でかんざしを踏んづけて怪我をした青年 笠智衆とかんざしの持ち主 田中絹代とのまろやかでくすぐったい恋愛未満の心の対話。ピ
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ミステリー・トレイン(1989年製作の映画)

4.5

ジャームッシュ暫定No. 1で好きかも。心地よくて幸せな時間だった。オムニバスと見せかけてある一夜のある一点にフォーカスされて、ある人にとっては何でもなく、ある人にとっては人生の一大事となってしまった>>続きを読む

丹下左膳餘話 百萬兩の壺(1935年製作の映画)

5.0

おもしろすぎる。2022年劇場事始にふさわしいド傑作エンタメであった。全ての語彙を失って超イイ…しか言えなかった。
百万両の価値がある壷をめぐる活劇。お金をめぐって下世話な感じになっていくかと思ったが
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とらんぷ譚(1936年製作の映画)

4.5

イイ!トランプをめくるタイトルバックから監督がひとりひとり呼んでいくスタッフクレジット、導入からセンスがいい。無声映画風のつくりも洒落てるんだ。叙述がアイロニックでこれまたイイ。こんなイケてる作品が1>>続きを読む

七人の侍(1954年製作の映画)

4.5

アッッッツイ!!アッツアツ!動悸がすごい。借りたDVDのケースを開けたら2枚ディスクが入っており思わず白目剥いて慄いてしまったけど、200分激しい鼓動を感じながら楽しんだ。黒澤は…わたしにはちょっとダ>>続きを読む

東京画(1985年製作の映画)

4.0

なんとも幸せな時間を過ごした。というか冒頭から痺れた。『東京物語』からはじまり、『東京物語』で幕が下りる。この作品の構成も鳥肌ぶりぶりたったが、『東京物語』の円環をなす編集に改めて打ちのめされる。小津>>続きを読む

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

4.0

間違いなくジェーン・カンピオン作品だった。それも2021年の。最後ぶるっっっとなった。
予告編やあらすじは読まずに映画に臨む人間なのだが、カンバーバッチのカンバーバッチが映るとの前情報だけを信じて…。
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私は決して泣かない(2020年製作の映画)

4.0

絶っっっ対に1ミリも感情移入させてくれない。ギリっとした冷たい眼光がこちらを見つめる。ポーランドからアイルランドへ出稼ぎ中の父を探す旅は慕情や悲壮感は全くない。あるのは強さしたたかさ。何が何でも連れて>>続きを読む

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

3.8

わたしの好きな、数少ない存命中の映画監督ウェス・アンダーソンの新作。待ってました!
フランスにある雑誌社フレンチ・ディスパッチの編集長が亡くなり、遺言により廃刊となる追悼号をオムニバス風に映像化。あい
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スウィート・シング(2020年製作の映画)

4.5

純然たるヒューマンドラマを観た。
体感180分くらい。なんせ途中から息苦しくなるほど目を背けたくなるほどつらい現実がある。
姉のビリーと弟のニコ、親の不在の中でお互いが文字通り心と身体を寄せ合って生き
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さよなら、私のロンリー(2020年製作の映画)

4.5

ミランダ・ジュライの新作が公開されたぞ!!!!詐欺師の両親とその搾取子のお話だぞ!!!!!
過去2作がそうだったように、やはりセラピーのように自分と向き合ってじわじわ癒されていくような作品だった。彼女
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ミカ・カウリスマキ/ママ・アフリカ ミリアム・マケバ(2011年製作の映画)

4.5

どんな時に音楽を聴くだろうか。気分を上げたい時、緊張を和らげたい時、一日の終わりに心と体を解放させたい時。わたしは悲しいことがあったり、ストレスが溜まると早々に布団にくるまってただひたすら音楽を聴く。>>続きを読む

アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン(2018年製作の映画)

5.0

どう頑張って抑えても気持ち悪いイキリオタクが早口で捲し立てているだけの文章になっちまう……
至福すぎて死ぬかと思った90分だった。セットリストはすでに知っているのに、たのむ、あと1曲うたってくれ、、と
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太陽はひとりぼっち(1962年製作の映画)

4.0

アントニオーニ監督、愛の不毛三部作のうちの一作ということだが、三作とも勝手で都合の良い愛にすがる人間模様をみた。『情事』は、友人を失った悲しみと愛の萌芽にとまどい、罪悪感に苛まれるふたりの不器用な姿を>>続きを読む

有りがたうさん(1936年製作の映画)

4.5

峠を越えるバスの運転手、有りがたうさん。道を譲ってくれた人たちにありがとう〜と声を掛けるからみんなにそう呼ばれている。バスに乗らない(乗ることができない)人たちの伝言を言付かったり、買い物を頼まれたり>>続きを読む

逃げた女(2019年製作の映画)

3.8

わかってはいる。泣きたくなるほどしんどくて何にもうまくいかねーと苦悩しているのはわたしだけじゃない。みんな大なり小なりそうなんだと。でもわたしが世界で一番かわいそう、誰もわかってくれない、って自分を慰>>続きを読む

カラスの飼育(1975年製作の映画)

4.0

"信頼できない語り手"ものってなんでこんな面白いんだろうね、小説にしろ映画にしろ。その語り手は例えば精神疾患であったり、都合の悪いことを隠す狡い人間であったりさまざまだけど、本作の語り手は"子ども"で>>続きを読む

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