荒澤龍さんの映画レビュー・感想・評価

荒澤龍

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ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000年製作の映画)

4.3

「あまりに弱くて正直で、あまりに残酷。それでも持ち続ける美学」


死の描写の仕方が衝撃的であった。
手持ちカメラによる撮影がリアリティや緊迫感により拍車をかけている。

セルマは過去に目が悪いという
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ドント・ウォーリー・ダーリン(2022年製作の映画)

4.0

「完璧≠幸せ。人の幸せを他人が規定してはいけない」


SNSで本作を知り鑑賞。
砂漠のど真ん中に築かれたリゾートでエリートの男性と結婚し夢のような生活を送るアリスだが、生活の中で小さな違和感に気がつ
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ノマドランド(2020年製作の映画)

4.0

「手に入れたものは必ずいつか失う」


失業を機に自宅を手放し車でノマド生活を始めた女性。夫は他界しその喪失感も抱えながら美しく広大な景色とそこで出逢う人々に癒やさせていく物語。
資本主義の中で物質的
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カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

「真面目な中学生とヤクザの美しい対比」


コロナ禍以降カラオケに行く機会がめっきり減ってしまった中でこのタイトルに目を惹かれた。
設定の妙が全てであり、ヤクザが中学生の合唱部部長にカラオケを教わると
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東京自転車節(2021年製作の映画)

3.1

「これは映画か?現実か?」


コロナ禍で失業した男性が上京しUber eatsで奮闘する物語。
ほとんどが定点かインカメで撮られたような映像でその荒々しさが妙に生々しい映像に感じられた。固有名詞がバ
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チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)

5.0

「Any Day Now」


映画のパッケージに惹かれていて作品がAmazon primeに登場したため鑑賞。
余分な言葉や描写が一切なく、わかりやすくかつ驚きもあり物語構成の理想系を見た気がした。
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(500)日のサマー(2009年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

「灼熱の夏、巡る秋」


わかりやすいパッケージの中に普遍的な示唆が盛り込まれており、映画の締めも綺麗で良い映画だった。

物語そのものは、恋をした女性に振り回される男性というとてもシンプルでオーソド
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誕生日シンドローム(2021年製作の映画)

3.9

「うまくやっているように見せても、みんな自分の中に子供の部分を潜ませている」


大人になってからわかる、大人って社会的に生きているだけで実は子供と大きく変わりないというのを、ポップに描いた作品。
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ブルー・アンブレラ(2013年製作の映画)

3.5

「擬人化で輝く雨の街」

雨の都会が綺麗。
雨が音楽になるところや、至るところに自分を見守るものがいて、日常では単なる偶然に思ってしまうことも、優しさに変えてしまうマジックが散りばめられている。

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リトル・ミス・サンシャイン(2006年製作の映画)

3.8

「子供の純粋な好きに太刀打ちできるものはない」


黄色のウォルクスワーゲンが目を惹く。
有村昆氏が人生ベストムービーに選んでいたため鑑賞。

ワゴンの中に老若男女集まっている様は世界の縮図であり、様
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パーフェクトブルー(1998年製作の映画)

4.8

「現実と幻想、ドラマの境界線が溶け合う映画」


パッケージに惹かれて観たかった映画がNetflixに登場したため鑑賞。ちょうど今敏監督の「東京ゴッドファーザー」も鑑賞していたが、こちらの映画の方が物
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東京ゴッドファーザーズ(2003年製作の映画)

3.5

「東京の夜が美しい映画」

ホームレスがクリスマスに子どもを拾って親を探す物語。
東京の大都会の街並みとホームレスのアングラな世界の明暗が美しく、ホームレス3人衆のキャラクターが際立っている点が良かっ
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枝葉のこと(2017年製作の映画)

3.9

「あんたいつから同じこと言ってんだよ。今すぐ会社辞めて行動しろよ」


人生の目標を叶えるために、不要なしがらみという「枝葉」を剪定しようとする物語。

彼女持ちの幼馴染、高給取りの親は普通の幸せを手
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プライベート・ライフ(2018年製作の映画)

3.8

「PRIVATE LIVES」

初老夫婦の不妊治療にまつわる物語。
印象的だったのは、不妊治療をしているだけで悪いことをしているわけではないのに夫婦がずっとバツの悪そうな表情をしていること。

不妊
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ナミビアの砂漠(2024年製作の映画)

4.0

「本当に渇きを癒すのは水だけど、時々刺激を強いものが飲みたくなる」


「あんのこと」から河合優実氏を知り、気になっていた作品。サブスクに登場したため鑑賞。

河合優実氏の境界知能らしい衝動性や諦観、
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逃げきれた夢(2023年製作の映画)

5.0

「逃げきれた夢から自分を叩き起こす」


パッケージとタイトルに惹かれて鑑賞。
久しぶりに震わされた映画でした。
スロームービーで、1人の人間の機微を描いているため、物語の波は小さいですが映画の最後の
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関心領域(2023年製作の映画)

4.0

「関心領域に上がってきたものに対して、意識的に無関心になることはできない」


背景が主役の映画という印象で、ホロコーストの異常さを体制側から切り取り、直接的な描写を極限まで減らした本作は自分にとって
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天国にちがいない(2019年製作の映画)

4.3

「天国にちがいない、という浅慮」

タイトルに惹かれて鑑賞。
パレスチナ人の映画監督エリア・スレイマンがパリとニューヨークに映画の売り込みに行く過程で故郷について考える物語。
スレイマンの台詞はほとん
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アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ(2021年製作の映画)

3.5

「グローバル化による世界の均一化は差別化を図るために過激な発言を生み出す」


過激なタイトルに惹かれて鑑賞。
全体的にアバンギャルドで挑戦的な映画。映画業界をメタ視点で眺めた発言やあえてチープに見せ
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わたしは最悪。(2021年製作の映画)

4.2

「あなたは悪くない、私が最悪。という戦略」


ポップなパッケージに惹かれて鑑賞。
パッケージからは、映画「イエスマン」のようなポジティブシンキングで人生を楽しむ!的な印象を受け取ったが、この映画はも
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シック・オブ・マイセルフ(2022年製作の映画)

3.8

「ヒロインになれるなら悲劇のヒロインでも構わない」

承認欲求に溺れた女性の怒り、嫉妬、独占欲等が渦巻く物語。映画を観て久しぶりに吐き気を覚えた。そういう価値観に触れられることも人生を豊かにしてくれる
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聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

4.6

「根源的欲求と社会規範の恐ろしさ」

礼拝の聖地に巣食う娼婦を全て殺し、聖地浄化を試みようとした男性の物語。実際の事件に着想を得て造られた物語である。


イスラム圏において娼婦は売春という重罪を犯し
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台風クラブ(1985年製作の映画)

4.6

「死は生きるための前提」

誰かのサブカルチャー系のエッセイ本で著者が一番好きな映画として挙げていた作品。誰だったかは忘れてしまった。
前衛的でアート要素が多い作品だと感じた。表現方法に理解できない部
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この世界の片隅に(2016年製作の映画)

4.2

「強くなりたい。優しくしぶとくなりたい。」


有村昆さんのYouTubeで絶対泣ける映画にランクインしていて気になり鑑賞。

第二次世界大戦末期、忙しない時代に生きる、ある女性の人生を描いた映画。
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湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)

3.8

「欲しいのは優しさと強さ」

タイトルのインパクトでずっと観たかった映画。
家族の中に次々と湧き出る問題を乗り越えるうちに、少しずつ絆が深まっていくストーリーの中に、思わず目を背けたくなるような場面が
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.2

「何にも変わんないなんてそんな馬鹿な話ないですよ」

パッケージの和室に寝転がり小説を読み耽る役所広司に惹かれて鑑賞。
繰り返しに思える日々でも小さな変化が積み重なっている。それは老化のようなものであ
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怪物(2023年製作の映画)

4.7

このレビューはネタバレを含みます

「組織という怪物」

素晴らしい脚本。すべて繋がっているのに繋がっていなくても意味を持つ構成。
序盤の全体像は見えないけど不気味な雰囲気が漂う始まりから問題が明るみになり最後のシーンで少しの希望を与え
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MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022年製作の映画)

3.6

「出世にまつわるエトセトラ」

パッケージに惹かれて鑑賞。
パッケージからマキタスポーツの察しの悪い上司感がぷんぷん伝わってくる上に、周囲の人の必死さの描き方もうまい。
月曜日の憂鬱さとタイムループを
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ライフ・イズ・ビューティフル(1997年製作の映画)

4.5

「張りぼてのBeautifulを演じる格好良さ」

ナチスドイツのテーマでLife is Beautifulという逆説的なタイトルが目を引く。
ナチズムや収容所の現実に子どもが恐怖しないように嘘をつき
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サマータイムマシン・ブルース(2005年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

「信じたくない未来を知っても今を全力で生きられるか」

「リバー、流れないでよ」でヨーロッパ企画を知り、評判を聞いて鑑賞。
コメディこそのあえての低予算感全開で、それを笑いに昇華できているため、低予算
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ビッグ・フィッシュ(2003年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

「人々に潤いを与える幸せな作り話」

他の方のfilmarksのレビューで気になり鑑賞。
上質なお伽噺のような夢と教訓に富んだ物語で、内容が盛りだくさんで消化しきれていない部分があるので物語を知った上
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縞模様のパジャマの少年(2008年製作の映画)

4.9

「子供時代とは分別という暗い時代を知る前に、音とにおいと自分の目で物事を確かめる時代である」



ここ最近観た映画で最もバッドエンドかもしれない、衝撃のラスト。
大人が生きるために社会的役割を演じる
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ルックバック(2024年製作の映画)

4.3

「自分は最大限の努力をしているのか」

Amazon primeで配信開始ということで鑑賞。60分の観やすい長さながら想像していた展開を裏切られた。それでいて前振りが短くて感情移入できない、という事も
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

「事故か、自殺か、殺人か。」

パッケージに惹かれて鑑賞。
目を引くデザインは赤と白の高彩度色と無彩色のコントラストで、また日本の国旗の配色であるからどうしても目がいくのかもしれない。赤と白の分量もセ
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グランド・ブダペスト・ホテル(2014年製作の映画)

3.9

「絵本の世界に没入するような映画」


グランドブダペストホテルのパッケージに惹かれて鑑賞。
全編通して絵本を捲るような映画と語り口。どこを切り取ってもオシャレで少しくすんだ色遣いやわかりやすくコミカ
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リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)

4.0

「タイムリープ中の時給とかどうなるんだろうね」


自分が2分間のタイムリープに陥ったら何をするだろうと考えた時に特に何も浮かばなかったから、その2分間に何かやるべきことがある登場人物たちの人生って結
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