スラムを描く映画を頻繁に目にするようになり、貧困が暴力を生むこと、暴力と隣り合わせで生きる人たちが世界中に存在していることを知るようになった。世界最悪の治安。殺人発生率が日本の50倍~100倍とも言わ>>続きを読む
いい俳優が出演している映画は後から沁みてくる。その表情や仕草がいつまでも印象深く頭から離れないからだ。ケイト・ブランシェットの凄さは、どんな役柄であっても、どんな場面であっても、圧倒的な存在感でスクリ>>続きを読む
10人いれば10通りの、20人いれば20通りの、青春がある。そんな当たり前を映画にしたら、こんな風になるんだと思った。あのイタすぎる自意識も、どうしようもない不安も、やり場のない苛立ちも、意味なんてな>>続きを読む
子供たちは全部わかっている。大人たちが何かに怯え、嘘をついているということを。激しい弾圧によって3万余りの人たちが行方不明となった軍事政権下のアルゼンチン。権力に屈することで臭いものに蓋をしてはならな>>続きを読む
若松孝二監督の映画を言葉にすることは難しい。あの息苦しさも、ひりひりとした痛みも、なんともいえない後味の悪さも、彼の作品ならではのものだ。現実を直視するには痛みが伴うということから逃げず、むしろ、その>>続きを読む
人間の弱さや脆さを描くのが映画なら「人生も悪くないぜ」って思わせてくれるのも映画だ。成功とかけ離れた人生であったとしても、寛容な心を持って、慎ましく、人間らしく生きていれば、やがて奇跡はやってくる。そ>>続きを読む
愛するものを守るため、人間は嘘をつき、真実はどんどん歪んでいく。正しさは、すべて解釈の問題であり、その解釈は、倫理観や宗教観など、何人も立ち入ることのできないものによって定められる。人と人はなぜ理解し>>続きを読む
超一級のドラマでありながら、サスペンスあり、スリルあり、アクションあり、コメディありの、巧みな構成と演出。オスカーを獲るだけのクオリティーの高さに圧倒された。ただ、この作品の真の価値は歴史に埋れていた>>続きを読む
宗教であれ、政治であれ、それらは、苦しんでいる人を救済するために存在していることを忘れてはならない。宗教や政治が最もやってはならないのは人間の尊厳を侵すということだ。さすがはナンニ・モレッティ。コメデ>>続きを読む
今さらながら、こんなにも魂を揺さぶる作品だったのかと、ただただ驚愕。喜びも、悲しみも、切なさも、儚さも、厳しさも、温もりも、強さも、やさしさも、およそ、生きることの美しさのすべてがこの映画にはあった。>>続きを読む
詩人でもある彼は「「膨大な数」という大雑把な死とか涙、苦しみを数値に表せないとしたら、何のための「文学」だろう」と書いた。3.11以降の園子温監督の作品に触れると、表現をする人間の誠実さとは何かを、深>>続きを読む
やり場のない怒りがふつふつと込み上げ、その後、どうしようもない悲しみに襲われた。こんな映画を観ると、自らの無知と、無力に、只々やりきれない気持ちになる。唯一の救いは、この「ノンフィクション」を、ちゃん>>続きを読む
コンプレックスからくる怒りや妬み。どうしようもないエゴ。この作品の素晴らしさは、そんなロクデモナイ人間の性を、ユーモアと優しさで包み込んでいるところだ。山下敦弘監督の視点。森山未來の才能。前田敦子の存>>続きを読む
人間は感情の生き物。ちょっとしたきかっけで簡単に揺らいでしまうこの危うく厄介なものから誰も逃れならない。一切のモラルと関係のないところで人間の奥底にある感情をとことんあぶり出す西川美和監督はかなりなサ>>続きを読む
ジャック・ニコルソン、トミー・リー・ジョーンズ、クリストファー・プラマー、山崎努、夏八木勲…。圧倒的な凄みを伴ってフィルムに存在するオジイちゃんに目がありませんが、その最高峰に君臨しているのが御年82>>続きを読む
震災後の日本について「世の中、絆、愛、支えとか、表面的なものばっかりでイライラした」と北野武は公言した。その正当な怒りと苛立ち、そして、哀しみが一気に炸裂した超一級のエンターテイメント。ラスト10秒。>>続きを読む
作家の岩崎夏海さんが公式 HP にコメントを寄せているけれど、この映画を観ると「きれいごと」と「きれいなこと」は全然違うことが本当によくわかる。良かれと思ったやさしさが他人を傷つけることはあるし、善き>>続きを読む
気に入らないヤツらは容赦なくその場でブッ殺す。良識なんかクソくらえの超過激カルト・ムービー。単なる反アメリカはちゃめちゃコメディかと思いきや、世の中に馴染めない中年オヤジと女子高生が、どんどん追い込ま>>続きを読む
死がどんどん曖昧になっていく時代の中で、生の尊厳に加え、死の尊厳をどう守っていくのか。私たちは、大切な人の死や、自分の死と、どのように向き合うべきなのか。伝えたいメッセージが明確に存在し、映画を通じて>>続きを読む
殺るか殺られるか。綺麗事では済まされない政治の闇をスリリングかつミステリアスに描いた映画。誰かにとっての絶対的な正義は立場や環境の違いによって途轍もない悪となる。これは「善のためには悪も必要だ」という>>続きを読む
これまでも陰惨な映画をたくさん観てきたけれど、こんなにも見るに耐えない作品は初めてだ。貧困と暴力。そして、憎悪。映画はときにノンフィクションであることを免罪符としてまったく救いのない物語をしごく淡々と>>続きを読む
「愛は寛容であり、愛は情け深い」とイエスは言った。願いがなんでも叶うことが幸福ではなく、むしろ、物事が思い通りに運ばなくなったその先に愛は存在する。恋愛ごっこの末路を描いたちょぴりビターなラブストーリ>>続きを読む
人間は驚くほど弱く、人生は苦難に満ちている。学校と呼ばれる場所に、何かしらの意義があるとすれば、生徒が正しく健全に絶望すること、そして、その絶望から這い上がる強さ、それでも生きていく強さを、わずかでも>>続きを読む
誰もが知っている映画の続編を撮ることは難しい。今までとまったく同じものを作っても、まったく異なるものを作っても、ファンはがっかりしてしまう。誕生50年を迎える人気シリーズの最新作はそのお手本となるよう>>続きを読む
そもそも滑稽な存在である人間が織りなす人生の愛おしさを、こんなにも小粋でオシャレに描くのは、愛と自由の国、フランス映画ならこそ! 全編にユーモアを漂わせながら、人生の機微に触れるラストシーンが本当に素>>続きを読む
めちゃくちゃ過ぎて笑けてくるー! エロも、グロも、すべてが過剰。血しぶきが飛び散る B 級スプラッターを装いつつ、政治を風刺する社会派、かつ、哀しきラブ・ファンタジーとして成立しているのもスゴイ。娼婦>>続きを読む
ココ・シャネルは「エレガンスっていうのは新しいドレスを着ることではない。エレガントな人が服をエレガントにする」という言葉を残している。1960年代。スウィンギング・ロンドン時代の、輝きに満ちた女性たち>>続きを読む
世界を股にかける Mr.賛否両論! 三池崇史監督がまたまた「おすすめ☆」とは簡単に口にできない映画を撮った。大した理由もなくクラス全員を皆殺しするサイコパス。爽やかイケメン殺人鬼・伊藤英明の怪演と、二>>続きを読む
ここらでちゃんと黒澤明をみておこうということで、柔の道を究めていく男を描いたデビュー作「姿三四郎」。自我を捨て切った「美しさ以上に強いものはない」という、美を最も尊ぶあの日本人特有の感覚は一体どこにい>>続きを読む
人生はいつどこで何が起こるかわからない。事態を好転させるか、悪化させるかは、すべて、ほんの一瞬の判断で決まる。わずかな心の隙がその判断を狂わせ、取り返しのつかない過ちを生んでしまう。その怖さがスリリン>>続きを読む
口にださなくてもわかる。わかりあえる。中国の映画には、細部にわたり、そんな繊細な心のひだを丁寧に描く作品が多い。こんな映画をみて思うのは、メディアが作りだす、都合のいい中国像を盲目的に信じ込み、中国人>>続きを読む
あるバイオリン弾きの一生。親のこと、子供のこと、妻のこと、仕事のこと、忘れられない人のこと。最終章でそのすべてがつながる上質な短編集を読んだような映画だった。人生のペーソスをギュッと凝縮させた一編一編>>続きを読む
黒澤自身が後に「自分の一番かわいい作品」と語った第2作。戦争の是非はともかく、滅私奉公、私を滅して公に奉ずることがごくごく当たり前だった日本人の姿がことのほか美しい。品性というのは、恥ずべきことを恥じ>>続きを読む
人間の心の奥底に渦巻く鬱屈とした感情。作品全体に充満している強烈な臭いが、いやらしくも、愛おしい、リアルな性をむきだしにする。ダメ人間のオンパレード。リミッターを外した、コードぎりぎり(っーか、アウト>>続きを読む
黒澤明の第3作。アクションあり、ドラマあり、サスペンスあり、笑いあり、ロマンスあり!? 会社と軍部に「無理やり撮らされた」と愚痴りつつも、黒澤監督、やりたい放題やっちゃってます。柔道と拳闘と唐手の異種>>続きを読む
モーリス・ラヴェルの「ボレロ」が、強烈なカタルシスを呼び起こす、史上最高の映画音楽になった作品。1930年代から1960年代にわたる激動の時代。フランス、ロシア、アメリカ、ドイツの、歴史に翻弄される4>>続きを読む