あくとるさんの映画レビュー・感想・評価

あくとる

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メメント(2000年製作の映画)

4.0

「自分が残した文字」以外は全て信用できないという、この極限の設定がサスペンスとしてよく機能している。
時系列の倒錯がストーリーをより難解にし、暴力的とも言えるストーリーテリングに楽しく翻弄される。
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.5

"信/導"

前作はただの前日譚、エピソード0に過ぎなかった、と言ってしまいたくなるくらい格段に面白くなっていて驚いた。
静のPART1に対して、圧倒的に動のPART2。
自分のように前作がイマイチだ
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アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

4.5

世間は、高品質だが難しくて高いものより、中身が無くとも安くて手軽に楽しめるものを求めている、とはまさに真理。
黒人作家が出版社の白人たちが気に入るような"黒人らしい"作品を書いて納めるという皮肉な構図
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ドミノ(2023年製作の映画)

3.0

どんでん返し系、騙される系として宣伝されていたが、結局のところ催眠術超能力バトルのような内容で、イマイチ論理的に納得しづらいのが残念。
明らかに尺が足りておらず、全体的に展開が唐突で、説明もあっさりと
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.5

落下死した男。
自殺か事故か、それとも妻による殺害か。

目撃者や証拠に欠ける中で、男やその妻の話した言葉や書いた言葉の断片を繋げて真実に辿り着こうとする。
ひたすら霧の中を進むような作品。

非常に
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スウィート17モンスター(2016年製作の映画)

4.0

嫌味で口が悪く、クセの強い性格のために周囲から浮いている17歳のネイディーン。
その痛々しい青春の暴走に笑いながら、彼女を見守る親友や教師、家族との関係にじんわり胸を打たれるヒューマンドラマ。

ネイ
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オペレーション・フォーチュン(2023年製作の映画)

3.5

軽いノリのスパイもの。
気軽に見れるのは良いことだが、尖った個性が欲しかった。
チームものとしては弱いが、ステイサムのアイドル映画として観ると楽しい。

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.7

"世界"

本作のレビューは難しい。
そして先に言ってしまうと過去最低のレビューになりました。
本作の感想を書こうとするとどうしても自分語りの駄文になってしまうからです。
それだけ私にとって極めてパー
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スラムドッグス(2023年製作の映画)

3.5

犬たちのVFXの技術力に驚く。
ストーリーは予告編で伝わってきた以上のことは起こらなかったが、しょうもない下ネタ満載で息抜きで見るには丁度いい。
ウィル・フェレルとジェイミー・フォックスの個性的な声と
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SISU/シス 不死身の男(2022年製作の映画)

4.0

"不死身"

死なないのではなく、死ねない。
もはや言葉など不要だと言わんばかりに肉体言語に振り切ったまさしく純アクション映画。
「舐めてた男が殺人マシーンでしたモノ」にマッドマックスを加えたらそりゃ
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ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)

3.5

ロッテンの批評家支持率が低い(対照的に一般レビュアーの評価は非常に高い)ので期待せずに見たが、全然悪くはなかった。
しかし、非常に丁寧に作られた再現ドラマ的な味わいで、どこか物足りなさを感じるのもたし
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Saltburn(2023年製作の映画)

3.5

人間というものは多かれ少なかれ、誰もが他人から求められている役柄を演じている。
その献身こそが愛なのかもしれない。

いったい何についての映画なのかすらよく掴めないまま進み、最後になってようやく事実が
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.0

"自立/檻"

ヨルゴス・ランティモスなので見る前から分かってはいたが、やはり非常にクセの強い奇っ怪なファンタジー。
とても一回見ただけでは理解しきれないが、とりあえず面白いし、考えさせられるので高評
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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017年製作の映画)

4.5

"完璧/選択"

美しいガラス細工のように、完璧に見えるものほど脆い。
自分の罪から逃げた男とその家族に起こる悲劇もとい惨劇。
121分間に渡って心にメスを突き立ててえぐり続けてくる徹底した精神的ホラ
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ロブスター(2015年製作の映画)

3.5

"お似合い"

パートナーを見つけられなければ動物になるという奇抜な設定を深く掘り下げ、監督の持ち味で露悪的でシニカルに調理。
追い詰められた人間の汚さ、残酷さを堪能。

籠の中の乙女(2009年製作の映画)

3.5

"躾"

親によって外界からの遮断された子どもたち。
でたらめな語彙や常識といい、見るもの触れるもの全てを支配し、洗脳する。
シュールな味わいだが、描いていることは極めて恐ろしい。

奇を衒い過ぎてい
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西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

4.0

撮影がとても美しく、戦場の地獄のような描写は素晴らしかった。
ひたすら命の価値について考えさせる旅路。
見終わってひたすらに虚しい気持ちになった。
戦争映画としての完成度は間違いなく高い。

ただ、戦
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裏窓(1954年製作の映画)

4.0

窓から見る景色は刺激に満ちている。

人間はいつの時代もスキャンダルやゴシップが好き。
SNSで他人の人生の一部を見て一喜一憂する。
全てを知れないから妄想が捗る。

このシチュエーションならではの空
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REBEL MOON ー パート1: 炎の子(2023年製作の映画)

2.0

雰囲気づくりだけは上手いと思っていたのに、それすらできていない。
ザック・スナイダーの良さが減退して、ダメなところが目立つ。
幼稚とすら思えてしまうこのわかりやすさ、もとい奥行きの無さは意図的なのか、
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マエストロ:その音楽と愛と(2023年製作の映画)

4.0

"偽り"

自分が率先して見るタイプの映画ではないのだが、ブラッドリー・クーパー監督作ということで鑑賞。

音楽家の夫と役者の妻。
やはり序盤のロマンス的なパートには興味がなかったのだが、ある秘密が明
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28日後...(2002年製作の映画)

2.0

全てが勢い任せ。
やはりダニー・ボイルは苦手だと再確認。
何と言うかどの要素を取っても、センスが合わない。

まず、ショッキングシーンやアクションシーンでのカメラワークが酷すぎる。
接写でガチャガチャ
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フレンチ・コネクション(1971年製作の映画)

4.0

ドラッグのルートを巡る捜査。
時代性もあってか、物語は非常に渋いというか地味に進む。
正直単調ではあるが、それを補うのが不穏で切れ味のよい音楽と開放的でダイナミックな画。
そして、当時にしては斬新だっ
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TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

4.5

刺激に満ちた世界で正気を保てるか。
人は見たいものを見る。

極めて痛烈で、真に残酷な映画。
刺激が身近に溢れている現代を生きる人々の病をシニカルに描く。
本作における降霊はまさにドラッグやSNSのよ
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.0

古い記憶の断片のようなビデオカメラの映像が非常にノスタルジーに満ちていて切ない。
他人の美しい思い出を共有するような瑞々しい画のタッチが巧みで味わい深い。
自分とこの映画の距離が近いと感じられる人ほど
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コカイン・ベア(2023年製作の映画)

4.0

2023年は熊被害のニュースが本当に多かった。
奇しくもそんな年に公開された本作は、コカインを吸った熊というハイなモンスターに襲われる人間たちの惨劇をブラックユーモア満載でシニカルに描く群像劇である。
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ブルービートル(2023年製作の映画)

3.0

ヒーロー映画疲れ、DCEUの終了、有名キャストの不在といった要因が重なったせいか、日本では劇場公開すらされなかった本作。

ヒーロー誕生譚のお決まりに忠実。
主人公の境遇こそ違うものの、パワードスーツ
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インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)

4.0

ダーティでサイケなヒッピー探偵物語。
現実と妄想を彷徨うようなトリップ感、酩酊気味でクラっとくる。

愛した女性の失踪。
身近に存在している底の見えない深い闇。
『アンダー・ザ・シルバーレイク』との類
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ザ・マスター(2012年製作の映画)

4.5

"虚像"

5年前に観たときは良さがよく分からなかったが、今回の再鑑賞はとても楽しめた。

冒頭、砂で作られた女体に寄り添うフレディ。
就いた仕事は写真の撮影。
全てが虚像である。
本作の宗教家はプロ
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ザ・バニシング-消失-(1988年製作の映画)

3.0

キューブリックが本作を3回観て「これまで観たすべての映画の中で最も恐ろしい映画だ」と監督に伝えたとの逸話。

彼女の突然の失踪事件に囚われる男。
真相を知るべきか、知らざるべきか。

要所要所はたしか
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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007年製作の映画)

4.7

石油とは富であり、力であり、血である。
それに群がる人間たちの欲深さや、宗教の欺瞞をシニカルに描く。
これを傑作と言わずして何と言う。

ホラーのように不穏な弦楽器が響き続けるなかで、セリフもなしに掘
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パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)

4.0

高圧的な毒姉たちのせいで女性不審な男のトラブルまみれのイカれたラブロマンス・コメディ。
今までのPTA作品とは毛色の異なる作品だが、人物の掘り下げがやはり巧み。
コメディの基本に従いつつも、ロマンスと
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マグノリア(1999年製作の映画)

4.7

本作を観てPTAが天才と呼ばれる理由を真に理解できた気がする。

PTAは"事実は小説よりも奇なり"の映像化という難題を、説得力を持った物語として描ききってみせた。
3時間に渡って非常に濃厚な人生につ
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ブギーナイツ(1997年製作の映画)

4.0

ポルノ映画の男優としてスターダムに上り詰めるエディあらためダーク・ディグラーを主人公に、70年代から80年代のポルノ業界を描く。
若さが要になる仕事ゆえの盛衰。
ポルノ業界の人間だからこその苦難に直面
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ハードエイト(1996年製作の映画)

4.0

"性/さが"

いくら見た目を整えても、行動を改めても。
人は過去の自分から逃げることできない。

聖人のように親切なシド。
彼がいったい何者かわからないまま進むのが物語の大きな求心力になっており、派
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グランツーリスモ(2023年製作の映画)

4.0

"証明"

自分はゲーム原作の映画にあまり良いイメージがなく、本作もそういった安易な実写映画だと勘違いして、劇場での鑑賞はスルーしてしまった。
しかし、よくよく調べてみたら、本作はただのゲームの実写化
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レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで(2008年製作の映画)

4.5

夢という呪い。
どこにも存在しない"確実な幸せ"という幻を人間は追い求めてしまう。
結婚とは変化のない退屈な日常を、特別じゃない自分を受け入れることなのかもしれない。
ラストがまた味わい深い。

家族
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